夜7時に全員集合?

娘たちの通い始めたペアレント・パーティシペーション・プリスクールは「duty」と称して親がローテーションでクラスに参加すると前回書きましたが、親の手で運営されているスクールですから「duty」はこれだけに留まりません。クラス委員、会計、ミーティングの計画・進行、ペアレント・エデュケーションの手配、ファンドレイジング(募金)、菜園づくり、家具移動から、「duty」の分担を決定・連絡する係まで、親たち総出で取り組みます。中途入学の私は空きのあったハウスキーピング係となり、月一度の週末、娘たちを引き連れて教室の掃除へと向かいます。
特記すべきは、学校運営のお金もすべて親の手で管理されていること。前年度の決算をもとに今年度の予算を組み、学費(月謝)の決定から始めます。そして会計係が学費を集金し、そこから先生の給料を支払います。遠足や課外学習などさらに資金を必要とする場合に備え、年数回ファンドレイジングのイベントを開催。日本の幼稚園でいうバザーですね。
上記の担当業務の報告会とこれからの運営計画、さらにペアレント・エデュケーションを兼ねた場が、月一度開催されるミーティングです。これは仕事を持つ親も参加できるよう夜7時からのスタート。よって子どもたちは不参加、審議に集中したい大人の時間です。さあ困った、夫や母に日本から子守に来てもらうわけにいかないし……と、わが家はシッターさんに来てもらうことになりました。娘たち、シッターさんに大変懐いており、むしろ一緒に絵本を読んだりかくれんぼしたり(甘いものを食べたり)を楽しみにしているので、夕食から寝かしつけまでをお願いし、私は心置きなく出掛けていきます。

活気溢れるディスカッション

夜7時の教室にはミーティング開始を待つ親たちが集まり、コーヒーや紅茶を片手に、クラッカーやフルーツ、手作りのブラウニーなどをつまみながら談笑しています。ふたクラスの親たち、総勢30人以上。パパさん率は2割ほど。揃って参加する夫婦もいます。
ミーティングは、ビッグイベント前を除いて、ペアレント・エデュケーションからスタートします。毎回、特定の分野の専門家が呼ばれ、「キンダーガーテンの準備」「おやつの秘密」「影響と振る舞い方」といったテーマで講義があります。非常に興味深い内容で、一言も漏らすまいと全身耳にしているものの、私の理解度はよくて30%。疲れ気味の日には、ちんぷんかんぷんなんてこともあり、英語力の乏しさに歯ぎしりする他ありません。ただ講義を聞き続けているわけでなく、少人数でのグループワークもあるので、するといつもの顔ぶれにホッとします。
ペアレント・エデュケーションの質疑応答や、その後のイベント打ち合わせの時間になると、より活発な議論が始まります。次々と手が挙がる中、発言者は言いたいことを最後まで言い切った上で、次の人にバトンを渡します。二人同時に話し出すこともありますが、「粘り勝ち」の様相です。もう9時頃かなと時計を見ると9時半をすでに回っていたりして、時間など誰も気にしない雰囲気です。
隅々まで通る声でプロ並みの司会進行ぶりを見せるママさん、ほぼ意見がまとまったかと思われた頃「でも……」と話を蒸し返すパパさん、意見は言わぬも合いの手上手で度々笑いをとりに来るパパさん、とキャラクターの際立つ面々を見ているだけで飽きることがありません。願わくはその議論に加わりたいとマイペースながら勉強しているものの、スピードと難解さに圧倒されるばかり。いつ何時、指名が飛んでくるかわからないので、「あ」でも何でも発する準備だけはしていますが……。月一度の最も刺激的な時間です。

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2013年4月18日 第16号 掲載

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