両親参加型プリ?

夏休みから9月にかけて、およそ10のプリスクールへお見合いのごとく出掛けていった私たち親子。その中で一つ「ここなら絶対、子どもがハッピーに過ごせるはず」と確信したスクールがありました。当初希望していたモンテッソーリではありません。ABCや123を体系的に学ぶアカデミック校でもありません。むしろ逆…。自由な遊びを通して、子どもの意思や興味関心、創意工夫、分かち合いなどを尊重し、大らかに成長を見守ろうとするスクールです。カナダでのびのびと夏を謳歌する過程で、私の優先順位にどうやら変化が生じたようです。
そこは、ペアレント・パーティシペーション・プリスクールというスクールでした。訳して両親参加型プリスクール。日本ではおよそ聞かない名前ですが、実際は参加型どころか親たちによる運営のプリスクールでした。他のスクールと同様にメールでアプローチすると、窓口になっているママさんから返事が。こちらの質問に一通り答えてもらった後に先生を紹介してもらうという順序もユニークです。
先生から、「夜、オリエンテーションがあるので、その30分前に見学に来ませんか?」と連絡があり訪れてみると、鬼ごっこの楽しめそうな遊具のある公園内に佇む、大きすぎず小さすぎずのアットホームな木造校舎にまず心惹かれました。教室は、木や布やガラスなど素材感を感じさせる道具やおもちゃがコーナーごとに置かれ、原色づかいでない落ち着いた配色が印象的です。小さなツリーハウスや着せ替えのドレス類に娘たちは早々と釘づけになっています。さらに、オリエンテーションのために集まってくるママ・パパたちの和気あいあいと活気ある様子に、「ぜひ仲間に加わりたい」という気持ちがこみ上げました。

親も子も共に成長

娘たちの4歳児クラスは月、水、金の午前9時15分から11時半まで。登校すると、外遊びやアートワークからスタートします。次に朝のサークルタイム。「Hello! How are you?」の挨拶ソングを歌い、カレンダーで日付チェックをして、その日のテーマのお話があります。例えばイースターなら、その言い伝えや卵の殻を使った作品づくりの手順などを。そして作品づくり。「皆で一斉に」でなく、各々好きな場所に散らばって遊び、好きな時間に工作に取りかかるという自由度です。遊びに夢中になっている子には先生が声を掛け、作品づくりへ促します。スナックタイムも一斉に「いただきます」ではなく、後半戦に差しかかる頃、各々バッグからスナックを取り出して食べ始めます。帰りのサークルタイムでは歌や手話、絵本読み、時にハッピーバースデーをしてお別れ。天気のよい日は早めに外へ出て駆け回ります。
このスクールは先生たちの「声掛け」が出色と感じました。ペアレント・パーティシペーションの特徴として親がローテーションでクラスに参加するため、常に先生、補助の先生、子どもの親の大人3人(時に4人)体制です。思い思いに遊ぶ子どもたちのもとへ、大人たちはこまめに歩きまわって耳を傾け、一緒に遊んだり、ヒントを与えたり、ケンカの仲裁に入ったり……。私も入学当初は連続2週ほど、その後はひと月半に一度の割合でクラスに参加していますが、子どもたちの様子を間近に観察できるのは大変興味深い。「自分の子どもと同じようにクラスみんなに愛情を注ぎ、悩みも喜びもシェアするスクールです」という先生の言葉が特色をよく表していますが、関わりが多いことで子ども一人ひとりの顔と名前を把握でき、親しみが湧いてきます。娘たちもママ、パパたちと仲良くなり、かわいがってもらえるのはありがたいです。
日本では子育てに手いっぱい、「なるべく親の出番の少ない幼稚園こそ好ましく、子どもが幼稚園に行っている間に羽を伸ばそう」タイプの母親だった私ですが、我ながら驚くべき変身です。

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2013年4月11日 第15号 掲載

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