新しい教室、新しい友達

一日目一時間、二日目二時間……と階段を一段ずつ昇るようにスタートしたキンダーガーテン。先生の配慮が功を奏したようで、わが娘たちはすんなりとクラスに溶け込んでいきました。双子ということでお互いの友達が友達になり、またプリスクール友達が3クラスに散らばったことで友達の友達も友達となり、輪が広がっていきます。入学一週目は輪の広がりにひたすらわくわくする時期でしたが、三週目となった今はお友達の「ホントの性格」が見え始め、やや戸惑いも覚える時期に突入したようです。
 朝8時55分に登校。教室前の廊下に一列に並んで先生がドアを開けるのを待ちます。ベルの合図と共に先生の笑顔が現れると、子どもたちは一人ずつ「Good morning! Ms.……」と挨拶して教室へ入っていきます。初日こそ泣いている子もいましたが、今は親にすがりつく子もなく滞りなく教室へ吸い込まれていき、親の側が名残惜しそうな視線を送り帰っていきます。そして9時のベルで始業。それから午後3時の終業まで、昼休みの様子をフェンス越しに覗くくらいはあっても、どんな一日を過ごしているかは娘たちの報告が頼りです。
 とそんな二週目のある晩、キンダーの親たちへ向けたミーティングがありました。体育館で校長先生の挨拶と先生方全員の紹介の後、各クラスに移動し、担任の先生からカリキュラムの話を聞きます。このカリキュラムが私の学校イメージを打ち破る興味深いものでした。中国系生徒の多い学校のためか、朝は太極拳でスタート。各教室ではヨガも取り入れ、鈴の音に耳を澄ませたり花の香りを嗅いだりして瞑想します。アルファベットはAから順に習うものと決め込んでいましたが、TやSからスタートしtheやisなどの頻出語へつなげていくようです。英語ネイティブでない親の子どもも多いためかESLも週2回、通常授業に組み込まれています。また週3回のミュージック&ダンスの授業、週3回の体育の授業、週1回の図書室での読書と、日本のように時間割こそ配布されませんが、魅力的な授業が展開されるだろう期待感が募ります。

幼心にカルチャーショック!?

 娘たちによると、どうやらプリスクールとキンダーの大きな違いは、「ルールが厳しい」「先生が厳しい」「先生が怒る」ということらしい。特に、娘たちの通ったプリスクールは子どもの意思や気持ちをとことん尊重するスクールで、スナックタイムも「お好きな時間に」だったし、先生も叱る時は声を荒げることなくゆっくりと諭す、そんな陽だまりのような雰囲気でした。しかしキンダーは様子が違います。3クラスの先生は一様に厳しく、ひっきりなしに怒っているように映るようです(私から見るとユーモラスでやさしそうな先生ばかりですが)。子どもたちは一度注意されると黄信号、二度注意されると赤信号になり、time out(反省の時間)を課されます。娘たちは普段通りの兄弟喧嘩をクラスでやってのけ、二人揃って黄信号になったと自己申告がありました。
 プリスクール友達で別クラスになったJくんは、そんなキンダーの雰囲気に娘たち以上のカルチャーショックを受けているようです。それは登校しぶりに発展し、週末や夜も不安を訴え、朝は泣き叫び、キンダーでのスナックやランチも拒否するほどの重度で、両親は大変心を痛めています。Jくんの両親は家でJくんに対してyell(大声を上げる)したためしはないとのこと。わが家はどうかと訊かれ、私がyellの連続だと話すのは気が引けましたが、正直に告白しました。日常的なyellによって娘たちはキンダー先生のyellに耐性をつけたのは事実かもしれませんが、yellは子どもに望ましいことではないと思っています。子どもを思ってのyellではなく、自分の感情を押さえ切れずyellになっているだけと自覚しているから。Jくんの両親の接し方は、誰にもやさしくて快活なJくんを育てた適切な態度と確信しています。Jくんにとって今は、初めて世間の大波にさらされた試練の時期なのでしょう。きっと両親の溢れんばかりの愛情に支えられ、この時期を乗り越えていくはず。そう心から祈っています。

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2013年9月26日 第39号 掲載

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