口の中に異変が!?

キンダーガーテンの先生に「娘さんたちの食の傾向は?」と聞かれれば、迷いなく「双子の姉はスローイーター、妹はファストイーター」と答えます。生まれつき、姉より90グラム多く生まれた妹は、食べること大好きで好き嫌いもほとんどなく、身長体重は常に姉を上回り、食に関して大きな苦労なく現在に至ります。一方、「食事の苦労」と言ったら姉の代名詞で、それはそれは、食事に時間がかかり好き嫌いもあり、そもそも食にあまり興味がないといった様子です。ハイチェアから脱走する娘を追いかけ口に食べ物を放り込んでいた時期もあり、食事の時間はどれほど気が重かったか……。「食べなければ、食べたがるまであげなければいいわ。おなかが空けば食べるから」と育児の先輩方からアドバイスもありましたが、食事量が少ない=栄養量が少ないで風邪を引きやすくなったり、明らかに痩せて比べちゃいけないと思いつつ隣に並ぶ妹との体格差が気になったりして、一食抜く的な荒療治はついぞ行ないませんでした。そんな辛抱の時を経て5歳になり、食欲も増して好みの幅も広がり、スローイーターながらおいしそうに食べる姿に「食事の苦労」の記憶は遠ざかろうとしていました。
そんなある日、日本そばを食べていた時、その姉が「口の中がかゆい」と言い出しました。「かゆいなんて変ね。そばアレルギーってあるし、しばらくそばはやめておこっか」となりました。数日経ってそうめんを食べていた時、また「かゆい」と言い出します。掻きくずして口内炎となり、トマト関係や柑橘類も受けつけずにいます。さらに数日後、パスタで「かゆい」が始まり、同時に頭痛も訴えました。これらの食品に共通するのは、まぎれもなく小麦粉です。ということは小麦アレルギー? ということはパンもダメ、ケーキ、クッキー、ピザも……。ああ娘の好きなものばかり! から揚げや天ぷらの衣も小麦粉だし、厳密に言えば醤油にも小麦が使われています。やっと食事が楽しくなってきたところなのに……。

グルテンフリー生活

食物アレルギーを調べるには血液検査に始まり、食物の成分を肌につけていくスクラッチテスト、対象食材をしばらく摂取せずに様子を見る除去テスト、対象食材を食べてアレルギー症状の有無を見る負荷テストなどがあり、総合的に慎重に判断していくようです。私たちはファミリードクターを持っていないこと、帰国がそう遠くないことを理由にアレルギーテストは日本でと考えています。
だから今、親としてできることはこの疑わしい「小麦」を食卓から排除することです。夏休み、一日の献立には小麦が主役とばかりに登場していました。朝はパン、昼はうどんやそば、そうめん、おやつはクッキー、夜はパスタやピザなんて具合に。古来より米食文化で繋いできた日本人の体には、どう考えても負担の大きい献立です。とはいえ、今日から3食和食で!と切り替えられないほど娘も私もアメリカナイズ(カナダナイズ)されており、白米食を基本にグルテンフリーのパンやパスタで息抜きするといった食生活へシフトしていきました。さすがカナダと言うべきか、大型スーパーにはグルテンフリーのコーナーが設けられています。グルテンフリーの食パンは従来買っていたパンの4倍の価格で家計には大打撃ですが、背に腹は代えられません。
また小麦アレルギーを持つプリスクールママさんにもアドバイスを乞い、グルテンフリーのパスタに巡り会うことができました。白米やブラウンライスを使用したこのパスタはもちもちっとして美味しく、ペンネ、シェル、マカロニと種類も揃っています。さらにグルテンフリーの小麦粉で作るブリトーや春巻きのレシピも伝授してもらい、これまで縁のなかった食材やメニューにも関心が出てきました。ただやはり原点に還って和食のレパートリーを増やし、娘たちにごはんの美味しさを知ってもらいたいと願っているところです。
娘は果たして小麦アレルギーなのかわかりませんが、もしそうだったら、お友達のバースデーケーキもみんなと一緒に食べられないのかなぁ。だとしたら私は本当にかわいそうなことをしてしまった。

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2013年9月19日 第38号 掲載

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