街中をバスで走り抜ける

ひと口にバンクーバーと言っても、子連れの場合とそうでない場合とで全く別の顔を見せます。私たち親子にとって美しい公園、魅力的な住宅街、コミュニティセンター、ショッピングモールこそがバンクーバー。レストラン、バー、クラブ、美術館、コンサートホールは滞在1年でご縁のなかった場所です。ダウンタウンをとっても、グランビル&バラードストリート周辺を除いてほぼ未踏と言っていいでしょう。
夏休み、日本から3歳の娘ちゃんを連れて友人家族が遊びに来たので、バンクーバーを案内しましょうというより、いい機会なので私たちも一緒に観光しちゃいましょうという格好になりました。バンクーバー観光といえば、「hop-on hop-off」が合言葉の一日ツアーバスがあります。ダウンタウンを中心とした観光の要所で停車し、乗り降り自由。Trolley BusとBig Busの二大勢力がありますが、私たちは5歳まで運賃無料のBig Busを選択。ちなみに大人の一日券は40ドル、二日券は45ドルです。
夏の終わりの不安定な空模様の中、友人家族とウォーターフロント駅を出発しました。念願の青空バスです。寒い……けれど太陽は肌を直撃します。なじみのある通り、初めて見る通りを順繰りに走り抜け、スタンレーパークに差しかかる頃、左手に広がるイングリッシュベイが私のベストビューです。窓も天井も取っ払ったバスから眺めるパノラマ風景はカラフルでロマンチック、地中海のリゾートアイランドを彷彿とさせます。一方、コールハーバーやフォールスクリークは、日本で抱いていたイメージのザ・バンクーバーです。私たち一行はスタンレーパークのセカンドビーチで下車し、バンクーバーグースと戯れながら午前中の公園を楽しみました。

子連れ観光のベストスポット

Big Busはスタンレーパーク一周ルートも別にありますが、私たちはセカンドビーチからグランビルアイランドへ向かうバスに乗り込みました。移動中、雨がパラつき、天井を求めて席移動したりするうちに到着。ランチはグランビルアイランドでフィッシュ&チップスをと決めていました。以前、スティーブストンで食べた味が忘れられず、次なる機会を待っていたのです。フィッシュ&チップスはサーモン、タラ、ハリバット(カレイ科)の3種類。友人たちに一番好評だったのがやはりサーモン。きっとフライにせずとも美味しいのでしょう。フライとしてはハリバットが絶妙と感じます。
食後はウォーターパークに隣接する公園で夕方まで。結局、長時間立ち止まるスポットはいつも通り、公園でした。どこを観光しても駆け回れる広場やよじ登れる遊具を探しているのは友人も同じで、素敵なレストランで食事をしようなんて相談にはならず、子連れレストランは味わえないどころか食欲すら湧いてこないという意見で一致し、子育ての大小の悩みを打ち明け合って、私もくつろいだひと時を過ごしたのでした。その間、子どもたちの世話は友人の旦那さんが一括負担してくれました。ただ今回の大発見は、子連れレストランするならランチタイムよりお酒が入って店内がざわついたディナータイムを狙ったほうが俄然気楽ということです。
さて、ダウンタウンへ向かう最後のバスは、Big Busの中でも娘たちが切望していたピンク色の2階建てバスBig Pinkでした。路線バスの電線が間近だったり、街路樹の枝が天井をガガガとこすったり、商業ビルの屋上緑化の様子が垣間見られたりといつもと違う景色は興味津々。走行もスムーズで永遠に乗っていたいほどでしたが、終点のガスタウンで降り、友人家族との別れの時間になりました。娘たちが朝から怖れていた時間です。共に過ごした楽しい4日間の最終日でした。涙を見せる娘たちに「どうして大人は悲しくないの?」と聞かれ……。大人だって悲しいんだよ。でも大人は今日だけを生きてはいない。次にすることをもう考え始めている。昔はおばあちゃんの家から去る時、私もよく泣いていたっけとしみじみ思い返すのでした。

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2013年9月12日 第37号 掲載

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