食費中心の節約生活

お世話になったシッターさんが近々帰国することになり、お別れに会いに行ってきました。彼女はダウンタウン在住。どこかでランチでもとロブソンストリートの一角で待ち合わせしたのですが、そう言えば私は1年もバンクーバーに暮らしていて、ショッピングのメッカなるロブソンストリートの景色を初めて見たのでした。さらに、ダウンタウンのお店で(フードコート以外で)一度も食事したことがないことにも思い至りました。もっと言えばダウンタウン以外でも、片手に収まるほどしかチップを支払うタイプの飲食店に入ったことはありません。だから未だにチップとなると頭の計算機がガタガタ、心臓がバクバクするのです。さて、そのシッターさんにはロブソンストリートのスーパーやイタリアンやアイスクリーム店をはじめ、バンクーバー各所の美味しいお店を伝授してもらい、私の中で出産後熟睡していたグルメの血が沸き立ったのでした。
親子留学するにあたって、私たち夫婦はシミュレーションを繰り返し予算を決めてスタートしました。子育て費用は今後も継続するので、航空券や保険料や新生活始動金を除いて普段の生活は、日本で暮らすよりだいぶ切り詰めたものに設定しました。一定金額の現金をポケットに入れてカナダへ飛んで来たわけですから、その範囲内でやりくりする他はありません。教育費と交際費はできるだけ節約対象から切り離し、最も効果の見える対象として食費の節約に努めています。その方法は何より外食しないことです。外食は消費税にチップと上乗せでかかる、セント単位の節約が不可能な贅沢品と認定。ま、娘たちといいレストランに行っても味わうこと自体が不可能という大きな理由もありますが。
外出時は、おにぎりやサンドイッチに飲み物、おやつとバッグをパンパンにして出発します。バンクーバーは公園に恵まれているし、景色のいい場所にはベンチありで、外でのランチには困りません。ランチのみならず、レストランディナーなどもっての外です。ましてお酒を飲みに行くなんていうのは夢の話。独身時代は友人と飲むカクテルやウィスキーに幸せを感じた私でしたが、こちらの生活ではお酒全般も贅沢品と相成り、必要に迫られない限りリカーショップに足が向くことはありません。

ファイナンシャルIQとは

なんと刺激のない、質素なバンクーバーライフよ……と思いますが、そこに不満や退屈さを覚えるよりむしろ穏やかな幸せを感じています。プレイデートでも子ども同伴で「レストランへ行こう」とはめったにならないし、といって、ランチタイムに子ども抜き、大人オンリーの状況になることは皆無で、ならば青空の下でサンドイッチを頬張っているのがちょうどいいのです。節約生活も躍起になり過ぎると、購入した牛乳より1ドル安い牛乳をみつけた際の悔しさを払拭できず子どもに当たりがきつくなったりすることもありますが、逆に今日は10ドル以内の出費で抑えることができたとか値段の割に絶妙な味のチーズをみつけたということに至上の喜びを感じることもでき、節約生活も悪くないという気持ちです。
現在、通っているESLの授業で「フィナンシャルIQ」についてディスカッションする時間がありました。「お金に対する賢さ」といった意味ですが、上記のような生活をしている私はフィナンシャルIQが高いとは言わないものの、がんばっているほうかな、なんて自負がありました。でもクラスメイトの話を聞くと、学生ビザで滞在している人は皆それぞれに予算の中で懸命にやりくりし、使い切ったら帰国するしかないという意見もあり、非常に共感し合える状況ということがわかったのです。ひと月の予算をパーセンテージで公開する場面もあり、中には丁寧に金額まで添えているクラスメイトもいて、お金についてここまでオープンに話し合えたのは興味深いことでした。皆がんばっているんだ、と大いなる励みとなりました。
でもバンクーバーを去るまでにはやはり、超オススメレストランの一つや二つは経験しておきたい……そんな野心も見え隠れするこの頃です。

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2013年8月15日 第33号 掲載

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