カナダの子育て支援センター?

「えっ、小学校の教室で、0歳から参加できて、おやつまで出る!? これなら子どもと家にこもりっきりにならないし、親子で友達もできちゃうし、子どもの社会性だって身についちゃう。すごいプログラムじゃない?さすがバンクーバー!」
ストロングスタートの存在を初めて知った時、私は感嘆のため息を漏らしました。なんと合理的なプログラムでしょう。う〜ん、教育大国を思わせます。0歳から5歳という参加資格に娘たちが含まれていることをうれしく思いました。ご存じの方も多いでしょう、ストロングスタートはブリティッシュコロンビア州が提供する未就学児のための教育プログラムです。早期教育の資格を持つ先生によって組まれたカリキュラムが柱にあり、それでいて親子で参加したい時に参加できる自由さも併せ持っています。日本で言うと、児童館や子育て支援センターがその役割に近いのでしょうが、日本では母親・父親支援の意味がより濃く、ストロングスタートは子どもの教育により重心を置いていると感じます。まあ思い返せば、子育て支援センターには生後5ヵ月から年がら年中お世話になり、慣れない双子育児に発狂しそうな時も何度救われたことか……。
さて昨年の夏、娘たちのプリスクールを9月アタマからスタートさせたい!と東奔西走していましたが、夏休みの明けた時点でプリスクールは決まっておらず、新学期のスタートは9月12日のストロングスタートからとなったのでした。

親子で楽しめるカリキュラム

ストロングスタートはバンクーバー市内91の小学校のうち19校と、全ての小学校で実施しているわけではありません。運よく近所の小学校で実施していたので、車なしの私たち親子もてくてく歩いて通うことができました。
毎週月曜日から金曜日、朝9時から12時まで。教室に入ると自由遊びからスタートします。粘土、ブロック、模型、ままごとセット、絵の具、絵本などがエリアごとに置かれ、子どもたちは興味の赴くままに移動しながら遊びます。10時半になると体育館へ。約20分間、ボールやフラフープで遊びます。教室に戻ると、スナックタイム。フルーツ3種にクラッカーといったヘルシーかつ程よい満腹感の得られるおやつが提供されます。「いただきます」に代わり、テーブルをトントン叩いて「Hungry, hungry」とみんなで歌えば、おやつの気分は盛り上がります。
そしてサークルタイム。この時間は先生の人柄がにじみ出て、私も大好きな時間です。「I am a Pizza」「What a wonderful would」など、カナダの子どもたちが親しんでいる童謡や数え歌や手話を楽しみます。0歳児から参加しているので騒ぎ出す子、じっとしていない子もいますが、小さい子どもはそんなものというあたたかな目が前提にあり、その上できちんと言葉で言い聞かせる先生の手腕が光ります。娘たちはいつも先生のそばに座り込み、「up and down」とか「open and shut down」などネイティブの子どもたちが最初に覚える英単語を全身で吸収しているようです。
この教室は特別なのか普通なのか実に国際色豊かで、カナダ人、日本人をはじめインドネシア人、中国人、イラン人のお友達もでき、プリスクールのない日には親子で嬉々として通っていました。しかしある時、市民権のない私たち親子には参加資格がないという衝撃の事実が判明。ストロングスタートも州政府が補助金を出して実施するプログラムであり、考えてみれば当然なのでしょう。
突如、ストロングスタート卒業となってしまった私たち。楽しい思い出が頭に浮かび一抹の寂しさを感じたりしましたが、よい先生や今も付き合いのある友達と巡り会えたことに心から感謝しています。

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2013年8月8日 第32号 掲載

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