2019年7月11日 第28号

5月31日から6月13日まで、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市内の諸会場で、バンクーバー・インターカルチュラル・オーケストラ (VICO) 主催『グローバル・サウンドスケープ・フェスティバル』が開催された。 今年のテーマは『日本とカナダの音楽』で、九州・沖縄作曲家協会(KOCA)より総勢7人の作曲家と演奏家が来加し、6月7日と9日には同協会会員作曲の作品が演奏された。 VICOとKOCAを結びつけた発起人で、当地在住、九州・沖縄作曲家協会国際交流ディレクターの米倉豪志(ごうし)さんに話を聞いた。

 

バイオリンやチェロ、フルートなどの西洋楽器にアジアの民族楽器が加わったバンクーバー・インターカルチュラル・オーケストラ (VICO)が、日本人作曲家の作品を演奏した。右から2番目がアムステルダムをベースに音楽活動をしているサックス・笙(しょう)奏者の佐藤尚美さん

 

 アジアの民族楽器

 6月7日、バンクーバー市内グランビル・アイランドのウォーターフロント・シアターで開かれた『KOCA:A JAPAN-CANADA EXCHANGE』。冒頭でバンクーバー・インターカルチュラル・オーケストラ (VICO)音楽監督のマーク・アルマニーニさんが「普段慣れていないものに挑戦することは容易ではありませんが、これは音楽を通したコミュニケーション。まさにアート界のグローバライゼーションです」と挨拶し、主賓の在バンクーバー日本国総領事館、多田雅代首席領事を紹介した。

 VICOは西洋の楽器とアジアの民族楽器による混成アンサンブル。バイオリンやチェロ、フルートにアジアの民族楽器が加わる。ペルシャのサントゥール、ベトナムのダンバウ、中国のピパに二胡など。細い竹が並んだ笙を吹くのは、アムステルダム在住の佐藤尚美さん。マルチカルチャーな町バンクーバーにふさわしいコンサートだった。

 

九州・沖縄作曲家協会 国際交流ディレクター米倉豪志さんに聞く ­­­­­

ーどのような経緯でこのコンサートが開催されたのでしょうか?

 バンクーバー在住で主にヨーロッパで活躍されている作曲家のリタ・ウエダさんからVICO音楽監督のマーク・アルマニーニさんを紹介されたのが始まりです。VICOと、僕が所属する九州・沖縄作曲家協会(KOCA)の交流イベントをしたいという提案がありました。KOCAは40年の歴史があり議論は難航しましたが、その頃新規に副会長に選任された原田大志さんがバンクーバーを視察に訪れ、2017年末にバンクーバーでクリスマス・コンサートを開きました。その際VICOのコンサートを聴く機会があり、僕が伝えようとしていることの意味が協会に伝わったようです。

ー民族楽器の知識がないと作曲は難しいのではないですか?

 VICOから、民族楽器を理解してもらうために福岡に行くという申し出がありました。2018年9月、マークさん、リタさん、ソプラノ1名、民族楽器演奏者など8名が訪日し、KOCAの作曲家たちに民族楽器のレクチャーをしました。その際、リタさんのオペラが福岡で上演されました。

 民族楽器の特徴を学んだKOCAの作曲家たちは約8カ月かけて作品を完成し、それをもって挑んだのが先日のバンクーバーでのコンサートで、国際交流基金の助成を受けて開催されました。作品はどれもバラエティに富んでいて、僕個人も(自分の作品の後は)楽しんで聴けました。

 そして来年2020年はVICOの演奏家と作曲家たちが大分と福岡を訪れ公演を行います。3年越しの日加交流プロジェクトです。

ー民族楽器演奏者が日本語で歌いましたね?

 日本語で歌を歌ったのは、中国のピパ(中国琵琶)とベトナムのダンバウ演奏者です。今回の作曲をするにあたり、作曲者と演奏者たちは何度もスカイプで練習を行ってきました。この方法で、作曲者の吉岡愛梨さんが歌の指導をしました。演奏者たちはとても優秀で、メキメキ歌えるようになりました。

ー河野早紀さんのピアノと、原田大志さんのバイオリンによるコンサートもありましたね。

 6月9日のコンサートも非常に好評でした。やはり演奏者が引き立ったコンサートでした。演奏者にとって、あの数の(ほぼ)新曲ばかりを演奏するというのは並大抵の大変さではありません。僕はずっとリハや練習をみてきましたが、もう、0.1秒を削るアスリートの孤独な闘いを見ているような気分でした。本番に一番よい演奏をするという、あの精神力には震えました。

ー米倉さんはどういう音楽歴をお持ちですか?

 僕は子供の頃にピアノを習っていて、その先生が変わった先生で、結構最新の現代音楽を聴いたり演奏したりしていました。同時に、和声や対位法の基礎を学びました。高校時代はファゴットをやっており、当時名古屋交響楽団の首席奏者の中西祥之先生に師事していました。短期間ですが、愛知県立芸術大学の作曲家の先生について和声を習ったこともありますが、作曲は子供の頃から大人になるまでずっと独学です。

ー作曲はコンピューターでされると伺いましたが?

 コンピューターで作曲をするというより、コンピューターも作曲に使うという感じです。数学を取り入れた専用のプログラムを自分で作って、それを作品の一部に使っています。数学を使うのは作曲の世界ではそんなに珍しいことではありません。バルトークなんかは有名ですが、ルネッサンス期とかでもやってますし、そもそも音楽って数学が根本にありますので。完全に独学なので音大出の作曲家とは全くルートが違います。作曲の方法論も目指す方向も、同じ人は近くにはほとんどいませんね。たまに寂しいです。

ープロジェクトを進めてきて、これまでの感想は?

 なにか新しいことをやるというのが、もっとも重要な趣旨だと思っています。協会も40年も続けてくると、伝統の重みで動きにくくなってくるところがあると思います。これまでKOCAは韓国や中国との交流はありましたが、北米との交流はありませんでしたし、ましてやペルシャの民族楽器の作品を書くなどという体験もなかったでしょう。自重で動きづらくなっているところに極端に新しい試みをすることが、協会に新しい筋肉をつけるものだと思っています。それが単発ではなく、3年続けるということでエンジンがかかってくるでしょう。手応えは非常に強く得ることができました。

 カナダ公演に挑んだ作曲家たちは皆、VICOの目指す異文化理解の大切さを深く理解しましたし、大変な事業に思えたこのプロジェクトも、やればできると実感してもらえたようです。今回得たコネクションを元に、さらに広がりを持つためのアイデアをメンバーそれぞれが考え始めたというのは、これまでにない新しい活力を得たということと思います。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

『KOCA : A JAPAN-CANADA EXCHANGE』に出演したバンクーバー・インターカルチュラル・オーケストラ (VICO) と九州・沖縄作曲家協会(KOCA)、関係者のみなさん(前列右端が米倉豪志さん)

 

6月9日、カナディアン・ミュージック・センターで演奏した原田大志さん(左)と河野早紀さん(右)。原田さんは井財野友人(イザイノ・ユージン)という名前でベトナムの一弦琴ダンバウと弦楽四重奏のための『アンピトリーテーの声』を作曲し、6月7日にVICOが演奏した

 

近藤裕子さん作曲による『緑蔭〜尺八と箏のために〜』を演奏したミヤマ・マックイーン・トキタさん(左)とハリー・スターレベルドさん(右)。近藤さんは、石巻の樹齢約100年のしだれ桜やソメイヨシノをテーマに曲を書いた

 

 

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