2018年5月3日 第18号

4月26日、バンクーバー市の隣組で日加ヘルスケア協会による座談会が開かれた。今回のテーマはオーガニック農法について。講師は、オーガニック農法で野菜などを栽培している杉山ヨシさんと須田勇子さん。24人の参加者からの質問に答えるような形式で進められ、活発な意見交換も行われた。

 

講師を務めた杉山ヨシさん(左)と須田勇子さん

 

心の平穏を促すマインドフルネス

 座談会はいつもの通り、アンダーソン佐久間雅子さんのリードによる、マインドフルネスから始まった。今回は、自分の呼吸に意識を向けるマインドフルネス瞑想を参加者全員で体験する。呼吸に意識を向けようとしても、ついつい他のことがらが頭に浮かんだりしてしまうものだが、そこからまた呼吸に意識を戻していくようにする。マインドフルネスは静かな環境でなくてもできる瞑想として、怪我や病気による痛みの軽減や、うつ病などの治療の一端として、医療の現場でも活用されている。

 

オーガニック農法を学ぶ

 杉山さんはもともと農業とは全く関係のない仕事に従事していたが、10年ほど前にオーガニックの穀物類を作っていた友人を手伝い始めたのをきっかけに、自身もオーガニック農法で野菜や穀物を栽培するようになったという。須田さんはカナダ生まれ。やはり以前は違う仕事をしていたが、自分の子供たちに日本の野菜を食べてもらいたい、日本の味を伝えたい、と考えるようになった。昨年から農地を借りて野菜作りを始めているという。なお、「オーガニック」は日本語では「有機」とほぼ同義のものとされている。この記事内ではオーガニックという表現で統一する。

 

オーガニック農法とはどんなもの?

 オーガニックと呼ばれるのは、カナダ連邦政府の基準に沿った作り方をしている農産物や製品。基準に沿って作られているかどうか毎年検査がある。食べ物を摂取する人間の健康、作物を作る土地や周りの環境を維持する、といった概念に沿うように基準は作られている。オーガニックで使われる肥料は、完熟された動物のフン、コンポスト(堆肥)、海藻や魚から作られるものなど、天然由来のものから作られたものがほとんどだ。(編注:必要に応じて、鉱山から産出される石灰など「有機物」ではなく、認可されている「無機物」の肥料を使用することもある。有機物は炭素を含むもので、焦げたり腐ったりするものと捉えると分りやすい)

 遺伝子組み換えされているものは、オーガニック農法では使えない。また、生産者がファーマーズマーケットで売る場合は、認定機関が発行する認定書を提示できるようにすることが求められている。

 

ファーマーズマーケットで売っているものはすべてオーガニック?

 そうとは限らない。無農薬で栽培している人もいるが、その中にはオーガニックでやっている人もいれば、そうでない人もいる。また、オーガニックに近いやり方をしているという人もいてさまざま。オーガニック農法をしたいと考えてはいるものの、肥料だけはオーガニックのものを手に入れることができないという事情を持つ人もいる。規模の小さい生産者にとって、オーガニック認定を受けることは困難な点が多い。認定を受けていなくとも良心的な作り手も多いので、オーガニックの認定だけに惑わされないようにしたい。

 ファーマーズマーケットでは、「殺虫剤を使っているか」「どんな肥料を使っているか」など、生産者から聞くチャンスがあると思うので、ぜひ尋ねてみてほしい。生産者と直接話してみて、どうやって作られているかを知っていくことはとても大切だと思う。また、自然(ナチュラル)という言葉で呼ばれているものもあるが、これについては何も規定がないので、その言葉がついているものに関しては少し疑ってみたほうがいいかもしれない。

 

ファーマーズマーケットで売られているものは、どこか他の所から仕入れてきたものということはないのか?

 バンクーバー周辺のファーマーズマーケットでは、生産者が自分で作ったものを売るということに決まっており、業者などから仕入れたものを売ることは禁止されている。もし疑問に思ったことがあるならば直接、生産者に確認することが大事。

 

オーガニックに関してカナダの規定は厳しい?

 カナダのオーガニックの認定基準は、世界の中でも水準が高いといわれている。ただしアメリカの方が、オーガニック認証済みの肥料や殺虫剤などの種類が多く、比較するとカナダではオーガニック農法を行うことが困難になることもあるのが現状だ。

 

オーガニック栽培のローテーションはどんな風にしている?

 基本的には同じ作物を同じ所に植えないことで、虫や病気が増えないようにする。今年ジャガイモを植えたところには次の年には違うものをというように。そうしないと、病気などのマネジメントが大変になるので、家庭菜園でもできるならそういうことをしたほうがいい。例えば、トマトに病気が出たら次の年は他の作物にして、少し土の環境を休ませてあげることも良いだろう。このように作物を回転させることは、オーガニックにかかわらず大切な点だ。

 緑肥を使うのも有効。(編注:緑肥とは土を肥沃にするために栽培され、生育中に田畑にすきこんで肥料として使う)大気からの窒素を同化してくれるマメ科のクローバー、ハチやチョウに喜ばれるソバ、越冬できるライ麦などがよく使われる。緑肥は有機物を増加させ、土壌中に微生物が増えて土を豊かにするなどのメリットがある。また、マリーゴールドはコンパニオンプランツ(編注:病害虫の予防効果が期待できる植物。共栄作物や共存作物とも呼ばれる)としても知られている。

 

コンポストにうどんこ病になった葉を入れるのは大丈夫?

 コンポストの温度を高くすれば植物の病気などが死滅するので、ホットコンポスト(高熱になるタイプのコンポスト)ができれば良いと思う。しかし、リスクを避けるためには病気の植物は捨てたほうが良い。

 

コンポストを市が回収したあとはどうしているのか。

 バンクーバー市では集めたものを処理してから、公園の庭の手入れに使ったり、市民に販売したり、コミュニティーガーデンなどの団体に無料で提供している。市で処理するものはホットコンポストなので、菌がほとんど死滅していると考えられる。

 

ガーデニング初心者。何からやればいい?

 一番いいのは自分が食べたい物を育てること。また、しそ、バジルなどのハーブ類など料理で少しだけ使いたいものを作るのもいい。レタスやケールなど常に収穫できるものは家庭菜園で作るのには便利。

 栽培するにあたって大切なのは、水や肥料を与えるタイミングだ。例えば肥料の場合、野菜が一番大きくなる直前に与える。作物によって水をあまり多く必要としないものや逆にたくさん必要なものもあるなど、それぞれにあった対応を。

 

参加者からも多数のアイディアが

 作物を育てるにあたって、土に愛情を与えて肥やすことは大切だが、栄養のある土を作るのはなかなか難しい。特に家庭菜園となると、理想的な土壌を作り出すのは大変だ。土を構成する砂やクレー(粘土)などの割合、酸性度(pH)などの要因で、適した作物というものも決まってくる。実験感覚でいろいろ作ってみて、その土地に合うものを見つけるのもいいかもしれない。また、油かすや米ぬかなどを土やもみがらなどと混ぜて発酵させて作る、ぼかし肥料を使って栽培した例なども挙げられた。

 オーガニックな方法で作物を育てることができるのは理想だろうが、土壌の状態、環境、気候などによっては、その理想通りにできないということも多々ある。どれが一番ということはなくて、その土地に合った栽培方法で自分たちができるベストの方法でアプローチすることが大切だろう。

 

杉山ヨシさん プロフィール
環境、健康、社会、政治、経済、さまざまな世界の問題への答えを模索し、自然と協力して育てるオーガニックの農法が世界のsustainabilityへの答えだという信念から、オーガニック農業へと転職。現在、Cedar Isle FarmとYarrow Ecovillage Community Farmで穀物や野菜を育てる仕事に従事。

須田勇子さん プロフィール
カナダで生まれ育ち、10年以上、土木工学士としての仕事に従事。エンジニアの仕事にやりがいを感じる一方で農業にも興味を持つ。エンジニアとしての経験を活かし、未来の子供たちのためにできることはないかと模索し、オーガニック農業を始める。現在、サレーの農園で日本の野菜中心にオーガニック農法で栽培中。

(取材 大島多紀子)

 

参加者の間でもいろいろな意見やアイディアが共有された

 

 

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