2017年2月2日 第5号

ビームスの目で選んだ 日本のいいもの・ことを世界に日本の若者ファッションをリードしてきた「ビームス」が、日本を発信する「ビームス ジャパン」を昨年オープン。新宿にある地下1階、地上7階のビームス ジャパンには、ビームスが選び抜いた「ジャパン」がたくさん詰まっている。

そのビームス ジャパンが、今回、バンクーバー市ダウンタウンのフェアモント・パシフィック・リムで1月27日から開催されている展示会「ジャパン・アンレイヤード」に、ポップアップ・ストア(期間限定店)をオープン。ビームスの目で選んだ日本のいいものを紹介している。

今回は『ジャパン・アンレイヤード』のオープニング参加のためにバンクーバーを訪れたビームス代表取締役社長、設楽洋氏に話を聞いた。

 

 

設楽洋氏。商品が陳列されている棚の前で。(1月22日バンクーバー)

 

バンクーバーの 質の高いライフスタイルで

 北米でのポップアップ・ストアはバンクーバーが初めてという。ビームス ジャパンを新宿にオープンしてもうすぐ1年。「ジャパンのいいもの・ことを世界に紹介しようというコンセプトでスタートして。海外では昨年はパリ、ロンドンで、ポップアップをやって、北米でやりたいなって思っていたところに、今回のお話をいただいて」。

 

 隈研吾氏の建築理念の紹介や無印良品の出店など参加メンバーもよく、「うちだけのポップアップだけではできない日本の紹介みたいなのがほんとにできる機会だと思って」と参加の理由を語った。

 今年は6回ほどポップアップを開催するという。バンクーバーを北米最初の地と決めたのは、「カナダ、特にバンクーバーは、カナダを代表する自然と都市が非常に接近していて、ものを見る目だとか、生活の楽しみ方とか、ライフスタイルが非常に成熟した街だと思っている」から。ここで試すことによって「北米でのセンシティブな部分が分かりやすいと思いまして」と説明した。

 ビームス ジャパンのどのような商品が北米で受け入れられるのかリサーチするにはカナダは魅力的という。「アジアの人も多いですし、アメリカ、カナダの人も多いですし、いろんな人がいて分かりやすいかなと。人口もそれほど多くないですし」。

 ただ本格的に展開するかは未定。ポップアップの状況を把握し、最も適した都市を選択していきたいと語った。

 

変わっていくもの、変わらないものをビームスの目で見極める

 ビームスは1976年に原宿にオープンした。日本の最新ファッションの聖地であり、トレンドの発信地だ。それは昔も今も変わらない。「日本の場合は、変化がものすごく激しいと思うんですね。感性を消費していく文化というか」。そんな若者ファッションをその場で40年間見つめてきたからこそ、「旬が新しい旬に凌駕される歴史を見てくることによって、その中から全部がなくなるわけじゃなくて、どこか1個が次の時代にライフスタイルとして残っていくような部分が見えてくるんですよね」という。

 「旬から沈殿したものがライフスタイルになっていくわけで。その変化を見るのと同時に、その中で残っていく変わらないものみたいなものをずっと見つけてきたことが我々の潜在的なノウハウになってきたんじゃないかと思うんです」。ビームスのコンセプトは『ベーシック&エキサイティング』。「自分自身がデザイナーではなく、キュレーションをずっとやってきているというか、セレクトをずっとやってくることによって、分かるものがあると思っています」。

 そんなノウハウから生まれたのがビームス ジャパン。「(ビームス)ジャパンを始めたのもですね、40年間、海外のいいものをずっと探して取り入れて日本に紹介して。そうしてるうちに、海外に行って良いって思っていたものが、結構メイド・イン・ジャパンだったりするんですよね」と笑う。「灯台下暗しだったことに気が付いて、自分たちも海外に憧れてそれを積極的に取り入れてきたけども、割と自分たちの足元を知らなかったということに気が付いて」。

 時代も日本人が日本の良さを自分たちで認めることができる余裕を持ってきた。「日本人自身に日本ってかっこいいよねって、もう1回再確認してもらうことで、それができて初めて海外進出っていうのはあるなって思っています」。

 変化していくものと変化しないもの。その中から生まれる「良い部分を残していきたいなって思ってますね」。

 

あふれる情報からのキュレーション

 「日本の若者の風俗、文化を変えるぞと、たった6・5坪で思っていたのと同じように、今でもやっぱり次の時代の新しいスタンダードであるとか、そういうものを作っていくぞという気持ちは変わりません」。40年前、ビームスを始めた当初からの思いだ。

 ただ当時と今との大きな違いは情報量。「40年前は若い人は、ものと情報がなかったために飢えていたんですね。僕もそうでした。ちょうど76年っていうのはビームスがオープンして、夏にポパイが創刊になった」。ポパイ(マガジンハウス発行)は1976年創刊の男性向けファッション・情報誌。ものと情報に若者が飢えていた時代だったと振り返る。

 しかし今は状況が反転。「若い人たちはものと情報がありすぎるために飢えていると。まったく逆になったんですけども。ですから、当時の我々は『見たことないでしょ』っていうのを見せてあげることが役目だったのが、今のセレクトはあらゆる情報の中から絞ってあげることが役割になったなって思います。その市場の変化の中で、我々のセレクトであったり、キュレーションであったりっていうのが、これからはさらに大事になるなっていうのは時代の変化と共に感じてますね」。

 

ビームスに求められているもの、それは「ハッピー」

 人々はビームスに何を求めていると思うかと聞くと、「最終的にはハッピーだと思います」と笑って答えた。すでにあふれるほどのものを持っていても、「それを買う行為であったり、それに袖を通した時であったり、それを着てキャンプをしたり、サーフィンをしたり、スキーをしたり、誰かにプレゼントした時に、やっぱりワクワクドキドキしたり、ハッピーになる気持ちがあるから」と言う。「そういう幸せの素材の提案みたいなものをしていると思っています」。

 そうであるならば、「どんな形であっても、ハッピーの要素があるとすれば、そこにビームスが介在する余地はあるなって思っているんです」。だから、単なる洋服ファッションだけに止まらない。「オケージョンであったり、同好の士が集まるコミュニティであったり、そういうものが作れる提案をしていきたいなと思いますし、日本と世界の文化をつなげるような、そこにまた新しいコミュニティができたり、新しい作品ができたりするきっかけを作りたいなって思いますね」。

 そしてバンクーバーの読者に「今まで世界のいいものを日本に、ということでやってきましたけど、日本の本当に繊細なモノづくりであったり、新しいポップカルチャーであったり、そういうものの融合、ものの中には文化があるっていうのはどこの国もそうですけども、それが一番分かりやすい形で伝えられるのが日本だと思うので、それを見てほしいと思います」とメッセージを送った。

 「ビームスのフィルターが掛かった『もの』を感じていただければ、ビームスが分かっていただけると思います」。 ビーム スジャパンの商品は、フェアモント・パシフィック・リム1階に併設されたGiovane Caféで展示・販売されている。

(取材 三島 直美)

 

設楽 洋氏
株式会社ビームス代表取締役社長

電通に8年間勤務している時にビームス創設(1976年、創設者;設楽悦三氏)に関わる。1983年に電通を退社、ビームス、新光株式会社専務取締役に就任。1988年に、ビームス、新光、ビームスクリエイティブ社長に就任。

ビームス ジャパン
ビームスが手掛ける、『日本をキーワードに、幅広いカテゴリーのコンテンツをキュレーションするプロジェクトBEAMS “TEAM JAPAN” の発信拠点のショップ』(HPより引用)。2016年4月28日新宿にオープン。

Japan Unlayered展示会 (1月27日から2月28日)
現在フェアモント・パシフィック・リム(1038 Canada Place Way, Vancouver)で開催されている。ビームスジャパン、MUJIの期間限定店や隈研吾氏の建築に関するパネル展などを開催。また、日本のミシュラン2つ星レストラン『分けとく山』や山櫻井焙茶研究所が参加する1日10食限定のランチボックスプレート(62ドル+税)も楽しめる。 詳しくはHPを参照:http://japanunlayered.westbankcorp.com/

 

 

ビームス・ジャパンのロゴが際立つ

 

 

衣類から雑貨までがずらりと並ぶ

 

 

ビームス・ジャパンの全ては持ってこられないが、バンクーバーの人に喜んでもらえる商品をセレクトしたと設楽社長は語っている

 

 

これらの商品は全て購入可能

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。