在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏による記念講演

「日本が目指す女性が輝く社会」~女性が輝く外交の社会~

 

5月13日、日系センターでコスモス・セミナー15周年の記念祝賀会が開かれ、会員・来賓など100人あまりが出席した。 在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏による記念講演『日本が目指す女性が輝く社会』のあとはジャズの演奏、特製お弁当、おみやげは手作りの紅白饅頭にコスモスの種。コスモス・セミナーならではの気遣いあふれた演出で15周年を祝い、親睦のひとときを過ごした。

 

 

(左から)岡田誠司総領事・寧子夫妻とコスモス・セミナー主宰の大河内南穂子さん

  

気配りとおもてなし精神

  岡田寧子総領事夫人によるフラワー・アレンジメントが華やかさを添えた舞台。会場には会員の竹田麗子さんの夫、竹田弘さんによる特製氷の彫刻がライトアップされていた。

 純粋な生涯学習の集いとして2000年7月に発足したコスモス・セミナーは今年で15周年。長い年月を経て成熟したセミナーだが、変わらないものはおもてなし精神だろうか。入り口の受付では役員たちがいつもの気配りで、会員や来賓のテーブル配置と入場案内をしていた。

 

打ち倒れても、また立ち直る花

 冒頭でコスモス・セミナー主宰の大河内南穂子さんが「コスモスは繊細でやさしい花ですが、打ち倒れてもまた立ち直る、芯はしっかりした花です。亡き夫が道端で倒れていたコスモスの種を植えたものが、毎年咲き続けています」と挨拶。おみやげにコスモスの種が用意された。

「毎月第2水曜日に皆さんのお顔を見るのが、わたくしにとって大きな心の支えであり、元気の源でした。快く承諾いただけた多くの講師の皆さま方、会員の皆さまに、言葉で表せないほど心より感謝しております」と述べ、この日はセミナー10期から15期の間に講師を務めた方々や来賓の紹介があった。

 

■ 記念講演 ■

「日本が目指す女性が輝く社会」女性が輝く外交の社会   

    在バンクーバー日本国総領事 岡田誠司氏

 昨年秋、在バンクーバー日本国総領事館開館125周年記念行事の一環として、コスモス・セミナーで特別企画『暮らしの中の外交』を講演した岡田誠司総領事が、今回は女性の社会進出をテーマに講演した。(以下は講演からの概要)

 

岡田誠司総領事による記念講演

 

女性の社会進出・就業率の増大

 女性の社会進出というのは、日本では長い間議論されている話題のひとつであり、現在安倍政権が提唱する女性の社会進出には、具体的な目標が掲げられている。

*現在女性の就業率は68パーセントだが、2020年には73パーセントにする。

*育児休暇を3年延長する。

*育児休暇を利用した男性は2・6パーセントしかいなかったが(2011年の統計)、2020年までに13パーセントに引き上げる。

*指導的地位にある女性は現在1・4パーセントだが、2020年までに30パーセントにする。

 統計によると、84・6パーセントの女性が結婚後も引き続き働くことを希望している。また、女性に働いてもらいたいと思う男性は、82・4パーセントであった。

 出産後に子どもを保育所に預けられないなどの理由から、日本では出産後に仕事を辞めることが多い。子育てが終わるとまた就職することが多く、その統計をグラフにするとMという形になることから、Mカーブと呼ばれているが、カナダにはそういう数値はない。

 

女性の社会進出で 何が変わるのか

 フォーチュン紙によると、役職のある女性が3人いる会社といない会社では、いる会社の方が利益率が8割以上増加することを示している。

 少子化が進む日本で経済を支えていくためには、男女を問わず雇用するという現実的な課題が課せられている。

 外務省では全職員約5500人中、約45パーセントが女性職員。女性の管理職(課長職以上)の割合は、5・2パーセント。課長補佐を入れると11・3パーセントである。これらの数字は、日本の民間企業の平均よりはるかに高い。

「外務省の仕事というのは、外国を行ったり来たりしてハードな仕事でもあります。なぜ女性職員が多いのかを考えると、総合職、専門職、一般職があり、ひとつの仕事をずっと続けるわけではないので、ある意味では飽きない、刺激があるということもあるのではないでしょうか」と岡田総領事。

 ちなみに、バンクーバーの総領事館も全体の40パーセントが女性職員であるという。

 

岡田総領事の電子サックスも加わったジャズの演奏

 

女性ならではの 対応・気配り

 次に、岡田総領事は女性社員の採用について、出席者に意見を聞いた。「女性ならではの細やかな対応で心配りが充分に発揮され、お客様に好評です」と赤堀正明氏(パンパシフィック日産リッチモンド社長&CEO)。

 岡田総領事は「女性エンジニアが設計された車は、小さな子どもの乗り降りが楽であるなど、女性の観点からの配慮が生かされてヒット商品になったとの例もあるようです。女性管理職の割合は、カナダは日本の10倍にあたります」と付け加えた。

 

お土産はコスモス・セミナー会員手作りの紅白饅頭

 

ワーク・ライフ・バランスの推進

 会計士の黒住由紀さんによると、カナダの大手会計事務所では30年前、子どもが生まれるとパートで仕事を続けることをオファーされたが、今は家で仕事ができ、何時に仕事をしてもいいようになり、それが女性の管理職にとって重要な点ではないかと述べた。

 外務省ではフレックスタイムの導入により、朝早く出勤して早めに仕事を終えて夕方子どもを迎えに行く職員も多い。朝、子どもを幼稚園に送るのは夫の役目だ。

 岡田総領事の前任地アフガニスタンの大使館では、100人中3分の1にあたる32人の女性職員が勤務していた。特殊地域といわれる地には希望者のみが赴任するのだが、こうした危険な地にもかかわらず、女性職員が勤務希望する理由は、8週間勤務すると4週間まとめて日本で休みが取れ、家族と過ごす時間がとれるという大きなメリットがあるからだという。

「大切なことは、ワーク・ライフ・バランスを法律だけでなく、社会全体としての取り組みとして変えていく必要があるのではないかと思います。女性の社会進出と同じように進めなければいけないのは、男性の家庭進出です。それがないと女性の社会進出に結びつかないわけです。これは(自分の反省も含めて)我々ひとりひとりが考えていかなければならないことだと思います」と結んだ。

 このあと、岡田総領事の電子サックスも加わったジャズの演奏、乾杯のあとは昼食をとりながら和やかな歓談が続いた。

 

 

(取材 ルイーズ阿久沢 写真提供 斉藤光一)

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