バーナビー市役所で日系コミュニティからの公開意見聴取会

 

バーナビー市セントラルパークの慰安婦像設置問題について、バーナビー市は4月9日、同市役所で市議会執行委員会の公開意見聴取会を行い、日系コミュニティからは市民の立場で2人が意見を述べた。 発言したのは、バーナビー市在住のピーター河野さんと敬子パーカーさん。設置反対の立場を主張した。バーナビー市からは、議長としてサヴ・ダリワル市議、副議長ポール・マクドネル市議、ダン・ジョンストン市議の3人が出席。会場では約30人が傍聴した。

 

 

意見を述べる河野さん(左)と、パーカーさん

  

「賢明で、確かな情報に基づいた決定を望む」ピーター河野さん

 河野さんは意見を述べる中で、動画共有サイトのユーチューブに公開されている、アメリカ・カリフォルニア州グランデール市デーブ・ウィーバー元市長と、同州ブエナパーク市エリザベス・スイフト元市長へのインタビュー映像を紹介した。

 グランデール市は慰安婦像設置を決定し、ブエナパーク市は否決した。現在のバーナビー市と同じ状況に立たされ、異なる決定をした当時の市長2人がこの問題について振り返っている。

 インタビュー内容を要約すると、ウィーバー元市長は設置すべきではなかった、こういう論争が巻き起こったことを後悔している、グランデールという小さな町で国際問題に巻き込まれることはすべきでなかったと語っている。

 スイフト元市長は、市の公有地に設置したいという申し出に対しては十分な理由が必要であり、その理由が理解できなかったと設置否決の理由を語り、ブエナパーク市にとって必要なのは、グループを分断するものではなく団結させるもので、平和的、調和的な関係を築いていけるものだと語った。

 河野さんは、慰安婦問題は、日本と韓国の間で現在も続く政治的論争であり、慰安婦像を設置するということは、現実的には一方の側を支持することになると述べた。

 アメリカ3都市で設置された慰安婦像をめぐり、日系アメリカ人や国内外の日本人コミュニティからは、失望の声があがっている。バーナビーを、カナダとは直接関係ない2国間の論争の場にはしてもらいたくない、像が設置されることにより、反日、反日系がこのメトロバンクーバーで煽られることを危惧すると訴えた。

 市としてコミュニティ全体にとって最善の策を選択し、賢明で確実な情報に基づいた決定をされることを望んでいると締めくくった。

 

 

画面に大きく映し出されたブエナパーク市元市長のユーチューブ映像

 

「海外の二国の論争にバーナビー市が介入しないことを望む」パーカー敬子さん

 パーカーさんは「セントラル・パークに韓国慰安婦の像が設置される計画があると聞いて、とても心を痛めています」と心境を語った。

 この問題に関するこれまでの日韓の経緯を一通り説明した後、バーナビー市に対して設置によって引き起こされる問題点、それを回避するための要望を提示した。

 問題点としては、「多文化主義が浸透するカナダでコミュニティが平穏に暮らしている中、この問題により引き起こされる人種的衝突に、市として対処する用意があるのか」、「人権と自由の憲章によって保障されている平和と自由が、設置によって犯される可能性があり、それでも市は日本人、日系人に安全と自由を保障できるのか」が、あげられた。

 要望としては、「『コミュニティで誰でも受け入れる会』の名誉会長であるバーナビー市デレク・コリガン市長は『バーナビーは多様性を受け入れる市』であることを公言しており、この言葉が虚言でないことを希望する。一方の意見だけを受け入れ、設置を決定するのはこの言葉に反すると思われる」、「海外の二国の論争にバーナビー市が介入しないことを望む」とした。

 そして私見として、バーナビー市は今年、釧路市と姉妹都市50周年を迎える。慰安婦像の設置は、バーナビーと日本の友好関係に悪影響を及ぼすと思われると述べた。

 

 

議長を務めたダリワル市議

 

バーナビー市、像の設置は未決定を強調

 一人10分という制限時間のため、パーカーさんの発言は最後の方を議長によって省略された。それでも3議員は、2人の意見に耳を傾け、用意されたユーチューブの映像を真剣な表情で見ていた。

 2人の意見を聞き終え、議長のダリワル市議は今回の慰安婦像設置について、「まだ何も決定していない」ことを強調した。バーナビー市は、あらゆる文化について対応する市であり、さまざまな文化を繁栄させる機会を設けることにより、コミュニティが調和することを推進している。その中には、もちろん日系コミュニティも含まれている。意見があれば、我々はその意見に耳を傾ける。事案については、論争を巻き起こすものなのか、大丈夫なものなのかを検討すると説明した。

 その上で、今回の件については、まだ何も決まっておらず、我々全員が満足できる方法を見出すために、コミュニティに意見を聞いている段階だと語った。

 この問題について、市には多くの意見が寄せられているという。そのほとんどが、日本人、日系人からの設置反対の意見で、バーナビー市内のみならず、カナダ国内や海外からも寄せられていると語った。市としても、この事案によって論争が巻き起こり、コミュニティが分断されることは本意ではないと語った。この件は提案の段階であり、それ以上はまだ一歩も進んでいないと、バーナビー市の立場を明確にした。

 

 

午後5時から行われた公開意見聴取会の様子

 

参考

 意見聴取会に先立って、慰安婦像設置に反対する443人分の署名が、河野さんによってバーナビー市に提出されている。今回の聴取会の議事録は現時点では掲載されていないが、署名とともに提出された「署名の主旨」をまとめた文書は、バーナビー市ホームページに掲載されている。

 下記リンクのページにあるカレンダーの4月9日をクリックし、AgendaのHTMLをクリックすると、4月9日のアジェンダのページが現れる。そのDEREGATIONSの下に表記されている Peter Kohnoをクリックすると、右側にPDF形式の書類が現れ、ダウンロードできる。

http://www.burnaby.ca/Our-City-Hall/Mayor---Council/Agendas-Minutes-Reports.html

ユーチューブへのリンク

 河野さんの発言中に紹介された、アメリカのグレンデール元市長、 ブエナパーク元市長へのインタビュー映像へのリンク。

グレンデール市デーブ・ウィーバー元市長  https://www.youtube.com/watch?v=U4eydc8bmRA  

ブエナパーク市エリザベス・スイフト元市長  https://www.youtube.com/watch?v=8JRf5UCuEsE  

日本文化チャンネル桜による上記インタビュー映像の元映像  https://www.youtube.com/watch?v=6d_iiRnsRZs

お断り:これらの映像は参考のためにご紹介しますが、議会で紹介されたものを抜粋して第三者が制作したものです。

    

(取材 編集部)

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