横田花子さん

 

東日本大震災3.11から4年。現地の復興速度とは裏腹に、 “忘れないで…”と声高々に叫ばなければならないほど世の移り変わりは速いものだが、ここバンクーバーにあって、しぶとく“愛・つなぐ”人がいる。横田花子さん。3.11直後から若者を中心にしたボランティアグループの「Japan Love Project」に関わり、復興支援活動を行なってきた。この4年の間、メンバーの帰国や就職で活動内容も変化していく中、彼女は、「震災起因の洋上漂着物の清掃活動と国際連携」に軸足を置いた活動を行なっている。それは、実に地道な作業だが、そこから見えてくる生態系への影響、野生動物への連鎖についても語ってもらった。

 

 

横田花子さん

  

「何かしなければ…」の一途な思いでスタートしたJapan Love Project。

 東日本大震災直後、遠藤明日香さんと高井洋季さんのfacebookでの呼びかけに集まった多くの若者によって立ち上げられた「Japan Love Project」。2011年3月16日、最初の街頭募金でダウンタウンに集まったのが100人を超えた。その後、4月末まで毎週2回、アートギャラリー前やロブソンストリート、スカイトレイン駅前などで、雨の日も声をからして呼びかけた。また、地元高校生グループや日本のカーリングチーム、仙台大学の学生、JaVanゴスペル、YOSAKOIチームなどが加わった。そのムーブメントは日系コミュニティや企業、ショップなどへも広がった。こうした募金活動で寄せられた義援金は、すべてカナダ赤十字を通じて被災地へ寄付された。

 さらに、街頭募金ばかりではなく、「チャリティーコンサート」や「サイレントオークション」、「バンクーバーマラソン」、「クラフトセール」、「カナダデーパレード」、「桜デイズ・ジャパンフェア」などに参加し、募金活動を行なった。

 そして、東日本大震災発生から1年後、「被災地の現状」や「復興した場所」、「まだまだ支援の必要な状況」などをアピールした『写真展』を開催。マスコミでの報道も減り、少し忘れかけられたムードが漂いはじめていたとき、この写真展は、多くの人々に改めて、その衝撃を与えるものであった。

 

「震災起因漂着物が、北米大陸西海岸に漂着」のニュースがJapan Love Projectの活動内容を変えた。

 写真展を終えたあたりから「津波により東北沿岸部から海に流れ出た大量の漂着物が、バンクーバー島・トフィーノの海岸に漂着する」というニュースが流れた。一方、Japan Love Projectのメンバー構成も、帰国や留学修了、就職などがあり、少しずつ変化し始めていた。そんな中にあって、ますますのめり込んでいったのが、横田花子さんであった。「これも流れなんです。2011年6月に1週間の予定でバンクーバーからの災害支援に行ったのですが、目の前の瓦礫の山が少しも減らず、もう少し、もう少しと思っていたら、とうとう東北に16カ月間、居続けました」と、さらりという。「この期間中にJapan Love Projectの代表の高井洋季さんや辻太一さんと出会いました。私が帰る頃、震災起因の漂着物のニュースが報道されていて、バンクーバーへ帰ったら、カナダの人々に募金などの支援をしていただいたせめてもの恩返しに、その清掃に行こうという話になったんです。それでまた、Japan Love Projectのメンバーも集まりました」。2013年3月9日、10日に1回目の震災起因洋上漂着物の清掃活動をバンクーバー島のトフィーノ周辺で、39人で実施。2回目は、5月18、19日、66人に倍増。このときは、在バンクーバー日本国総領事の岡田誠司氏も参加。自ら汗を流し、メンバー全員を励ましてくれた。さらに、3回目は、2014年3月9日から11日まで、国際ボランティア学生協会IVUSA(イヴューサ)71人の協力を得て、約7トンものを回収した。「IVUSAのメンバーが仕事を終え帰国するときは、みんなで、肩を抱き合いながら泣きました。その仕事ぶりには、地元の人も感心しきりでした。私がこの清掃作業に関われ、感動を得たのも、人との出会いがすべて。流れなんです」と、気負いがない。このときの状況を撮影していた写真家の斉藤光一さんは、「このとき、花子さんだけは決して涙を見せなかった。まるで、無事にみんなが帰国するまでは…と、緊張感を持って見守っているようだった」と述懐した。

 

とうとう、花子さんは海洋漂着物の専門家に。

 一般社団法人「JEAN」(Japan Environmental Action Network)という散乱ごみの調査やクリーンアップを通じて海や川の環境保全を行なっている非営利の環境NGOがある。日本の環境省も支援する団体で、横田花子さんは、国際連携担当としてスカウトされた。実際に、現地調査をする一方、クリーンアップもし、国際シンポジウムの講演や通訳の仕事、環境省への情報提供など、多彩な活動を行なっている。「海岸漂着物の中でも深刻なのは、プラスチックごみですね。それを野生の熊が食べている形跡があるんです。早く何とかしなければ、動物などへの影響は大です」と心配する。

 一方、Japan Love Projectも2014年の活動をもって休止となった。東日本大震災の復興支援ボランティアとして、愛をつなぎ、行動してきた経験は何にも変えがたい財産であり、それぞれのメンバーに、それぞれのポジションで大輪の花を咲かせることだろう。

 

寒い空の下で国境を越えた支援と人の温かさが身にしみた

 

予想をはるかに超えて集まったボランティア仲間

 

写真展で見入る当時の在バンクーバー日本国総領事の伊藤秀樹氏

 

1回目の清掃作業に参加したメンバーたち

 

2回目の清掃作業に参加した在バンクーバー日本国総領事の岡田誠司氏

 

バンクーバー水族館でのシンポジウムで講演する横田花子さん

 

3回目の清掃作業で驚くほどのパワーを見せたIVUSAの面々と記念撮影

 

流木とともに漁具のウキもハイダグアイ島に

 

カナダBC州のハイダグアイ島での現地調査

 

ハイダグアイ島に流れ着いた大船渡魚市場のかご

 

離島での作業に行くためゴムボートが大活躍

    

(取材 笹川守 写真提供 斉藤光一、横田花子)

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これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。