2019年8月29日 第35号

第1回日米加大学野球トーナメント“Collegiate Baseball Classic Tournament”は慶應義塾大学が初代チャンピオンに輝いた。 カナダ、日本、アメリカから4校が参加。開催国となったカナダからはブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)サンダーバーズ、日本からは東京大学と慶応大学、アメリカからはカリフォルニア州立大学サクラメント校ホーネッツが参加。真夏のバンクーバーで4校による熱い戦いが繰り広げられた。

 

︎優勝トロフィを持つ大久保監督と優勝メダルを胸にする慶応大学選手たち。8月18日

 

トーナメントは 8月13日から 18日まで、UBCトーマリンウエスト・ベースボールスタジアムで行われた。13日のUBC対東京大学戦はナットベリースタジアムで開催した。総当たりの予選後、準決勝を経て3位決定戦、決勝を開催。決勝戦は慶応対ホーネッツの日米対決となった。投手戦となった手に汗握る接戦は、2回裏に相手のミスをついて得点した慶応がこの1点を守り切り、優勝。3位決定戦は東大が3‐2でサンダーバーズに勝利した。 カナダ初の大学野球国際大会は多くのファンを魅了して幕を閉じた。

 

投手の粘りで初代チャンピオンに

 慶応大学郡司裕也主将は決勝を振り返り、「ピッチャーがすごく粘ってくれたので」と投手陣の奮闘を称えた。「海外のピッチャーとの対戦で打つ方でなかなか対応できなかったんですけど」と語ったが、それは相手も同じ。「いかに守るかが国際試合では大事なんじゃないかなって思いました」と総括した。そして輝いた初代チャンピオンの栄冠。「初代が初代だけで終わらないように毎年やってほしいですね」と笑った。

 大久保秀昭監督はホーネッツの投手陣は「簡単ではなかった」と振り返り、外国人投手との初対戦で対応しきれなかったが、「(慶応の)投手の方は日本と変わらず持っているものをしっかりと出してくれたかなと思います」と胸を張った。  ホーネッツに対しては、北米のチームはもっと自由で大雑把な野球という印象を持っていたが対戦してみると、しっかり管理され意外と丁寧な野球をするという印象と語った。

 ホーネッツのレジー・クリチャンセン監督は慶応について「基本に非常に忠実で守備が良いチームだった。得点するチャンスが何度かあったが、いい投手に阻まれた。でも、とてもいい試合で、対戦できて楽しかった」と語った。

 

東大がサンダーバーズに勝利し銅メダル!

 3位決定戦でサンダーバーズに1点差で勝利した東大が銅メダルに輝いた。予選初戦では無安打黒星に沈んだ。雪辱を果たした形だ。

 この試合の前に始球式に臨んだ東京大学五神真総長は、「9回まで手に汗握る試合で楽しめました。よく頑張ったと思います」と笑顔で選手たちを称えた。

 辻居新平主将は第3戦の後「比較的自分たちの目指しているものが出せた」と自信をつけて臨んだ準決勝と3位決定戦。「今日はしっかり勝てたので、試合内容として課題も残っていますが、勝てたというのが大事だと思います」と銅メダルを胸に振り返った。

 海外でプレーするのはほとんどの選手が初めてだったと浜田一志監督。そんな中で強豪2校に勝利し、ここで2敗した慶応には神宮でのリベンジを誓った。野球以外でも選手たちがバンクーバー滞在を楽しんでいることに参加した意義は大きいと喜んだ。

 五神総長も「(選手たちが)いろいろな機会を得られるといいと思っています。随分楽しんでいるようで良かったと思っています」と選手同士の交流に目を細めた。

 

上西氏を招いてナットベリーで東京大学対UBCの記念すべき第1戦

 予選第2試合サンダーバーズ対東京大学の一戦は、ブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー市にあるナットベリースタジアムで開催された。

 始球式にはバンクーバー朝日唯一の選手、上西ケイ氏が登場。「練習していないけど」と自信がなさそうに話していたが見事な投球を見せ、会場に詰めかけた野球ファンを沸かせた。一緒に始球式をしたのはUBCサンタ・オノ学長。「上西さんと一緒にナットベリーで始球式ができるなんてすごく光栄」とうれしそう。上西氏は「ワンバウンドしたけどね」と笑って、「でもよくしてもらってよかったです」と笑顔を見せた。

 広島出身の上西氏は、東大で4番の青山海選手が広島出身と分かり声を掛けたという。第3戦では本塁打を放ち東大初勝利に貢献した青山選手、カナダで広島出身の人とこういう形で会えたことにびっくりしたと照れ笑いした。

 ナットベリーの雰囲気に浜田監督は、野球そのものを楽しむファンがたくさん来てくれてそういう雰囲気の中で野球ができたことにすごく感謝していますとチームを代表した。

 

野球を通して大学間の交流を促進

 今年のトーナメントは昨年8月、UBCサンダーバーズが東京を訪れ、東京大学や慶応大学と親善試合を行ったことから始まった。提案したのはUBCオノ学長。学術研究や留学生の交流だけでなくスポーツを通して相互理解を深めようという意図だった。そして今年はUBCが主催して東大、慶応を招き、それならばとアメリカからホーネッツを招待し、第1回大学野球大会へと発展した。

 トーナメントになったからには優勝チームが決まる。各校とも開催前から気合十分でこの時を迎えた。爽やかな夏のバンクーバーは3校にとって野球をするにはベストの気候。どのチームも真夏のバンクーバーで真剣に野球を楽しんだ。

 楽しんだのは野球だけではない。レクリエーションでは野球以外のスポーツで汗を流したり、UBC構内でレクチャーを受けたり、ウィスラーへ旅行に行ったり、昼食会や地元の卒業生らと交流したりと、滞在期間中に野球以外でも忙しく楽しい時間を過ごしたようだ。

 UBC、東大、慶応は、すでに学術研究分野での交流は盛んだ。しかしスポーツを通じて学生同士が交流し、お互い刺激し合って仲良くなることに意義があると、今回の関係者全員が声を揃える。選手がユニフォームの交換をしたり、同じ体験をしたり、若い時に経験する海外での交流は選手の人生にも大きく影響すると3校の学長や監督が同意する。

 慶應義塾大学長谷山彰塾長は、文武両道は慶応創始者からの教えであり、スポーツを通して「学生たちが文化的な交流をすることは教育の一環と考えていますので、今回の野球大会は交流が広がるいいチャンスだと思いお受けしました」とオノ学長からの提案にすぐに同意したと語った。結果、慶応が初代チャンピオンに。トーナメントが大きく育っていくためにも、全力を尽くして観客に喜んでもらう野球をしてほしいと選手には語ったという。しかし最後には勝利して「エンジョイベースボール精神」を全うしてほしいとはっぱをかけたと笑った。

 

来年以降もトーナメントが発展していくために

 UBC野球部テリー・マッケイグディレクターは、UBCの結果についてはすごく残念だったがと振り返りながらも、今大会については大成功だったと総括した。オノ学長の熱い思いから始まった野球を通しての大学間の交流は、選手たちだけでなく、バンクーバーで野球を楽しむファンや関係者にも刺激となったと思うと語った。

 観客動員はナットベリーに3361人、決勝戦には576人でUBC史上最高を記録した。大学野球がこれほどのファンを魅了したことは、マッケイグ氏にとっても大きな収穫だったと手ごたえをつかんだようだ。

 初戦の東大戦で活躍を見せたサンダーバーズのノア・オー捕手は「昨年の東京遠征はすごく楽しく有意義だった。機会があればまた行きたい」と残り2年ある学生野球生活での実現を熱望。ホーネッツのクリチャンセン監督も日本で野球ができるなら、ぜひと語る。

 マッケイグ氏は、この大学野球国際大会を大きく膨らませていきたいと希望する。これは選手にとっても大学野球にとっても大きなチャンス。来年の東京行きは五輪開催があるため難しいとしながらも何かいい方法を考えたいと来年以降への構想を巡らせた。

 野球をこよなく愛するオノ学長は今大会3試合で始球式。その熱意が今大会でも伝わってきた。今大会の意義は野球を通して太平洋を越えた交流を続けていくこととオノ学長。大学にとって日加間の関係は非常に重要、野球という日米加の国民が愛するスポーツを通して若者が交流し絆を深めていくことが大学の将来にも好影響を与えると語った。

 

試合結果

8月13日 ホーネッツ 0‐0 慶応大学
8月13日 東京大学 2‐8 サンダーバーズ
8月14日 慶応大学 6‐0 東京大学
8月14日 ホーネッツ 8‐1 サンダーバーズ
8月15日 東京大学 8‐0 ホーネッツ
8月15日 サンダーバーズ 1‐3 慶応大学
8月17日 準決勝第1戦 東京大学 0‐10 慶応大学
8月17日 準決勝第2戦 サンダーバーズ 5‐9 ホーネッツ
8月18日 3位決定戦 東京大学 3‐2 サンダーバーズ
8月18日 決勝戦 ホーネッツ 0‐1 慶応大学

(取材 三島直美)

 

杉本選手のヘッドスライディングで1点先制の慶応。ホーネッツとの接戦を制す。8月18日

 

4回裏ヴァルキ選手がホームインして1点を返すサンダーバーズ。8月18日準決勝サンダーバーズ対東大

 

東大先発小宗投手。8月13日ナットベリースタジアム

 

試合終了後に握手を交わす選手たち。バンクーバーで慶応対東大の試合が実現。8月17日

 

ボールを手に始球式の前の東大五神総長(左)とUBCオノ学長(右)。8月18日 

 

UBCサンダーバーズ、東京大学、新朝日チーム、上西氏(中央)、オノ学長とナットベリースタジアムで試合前に記念撮影。8月13日

 

バンクーバー朝日の上西氏による始球式。後ろでは新朝日選手が見守る。8月13日ナットベリースタジアム

 

ピーター・エスピグ氏(右端)主催昼食会でUBCオノ学長(右から2番目)からthe President's Medal of Excellenceを贈られた慶大長谷山塾長(左から2番目)。「大変名誉なメダルをいただいて驚きました」と語った。右端はUBC野球部ディレクターのマッケイグ氏。8月15日バンクーバー市内で

 

全10試合で国歌を斉唱したNAVコーラス。8月13日ナットベリースタジアムで。

 

 

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