2019年2月14日 第7号

凍てつく寒さが続いていた2月5日、日本の専修大学から海外日本語教育実習の一環として、同大学文学部日本語学科の王伸子教授をはじめ5人の研修生が、バンクーバー日本語学校にやって来た。研修テーマは「異なる文化背景の人に、どうすれば、日本語、日本文化に親しんでもらえるか」…この一行の中に、相撲部のキャプテン戸田隼介くんが加わっていた。

カナダではあまり知られていないが、日本の伝統文化でもある大相撲について実演まじりの講座が開催された。「まず、日本に興味を持ってもらうきっかけにしたい」と、ひと肌脱いで、熱い講演を披露した。

 

講演参加者、全員集合

 

「僕は、日本語の教師になります」

 と、はっきりと明言した戸田くん。170Kgの立派な体格、相撲部キャプテンながら、プロへの進路は考えていないという。それより、「異なる文化背景の子どもたちに、日本語を教える教師になりたいと思っています。それで今回の教育実習に参加しました。モンゴルや、ハワイ、ブラジル、そしてジョージア、ブルガリアなどのヨーロッパ出身の力士はいますが、カナダ出身の力士はいません。それだけに、ここでは、大相撲はあまりなじみがないと思いますので、興味を持ってもらえるのではないかと考えます。日本語を学ぶ、日本文化を知るきっかけになれば、と思います」と、自らの個性を注目ポイントにして、コミュニケーションを深めようという作戦。まさに、王教授が言う「まずは、日本語に対する関心を持ってもらうことがスタート。そのきっかけはなんでもいいんです。アニメや漫画が好きで日本語をもっと知りたいということでもいいんです。今回の実習に相撲部キャプテンの戸田くんがいてくれたので、相撲をメインにし、カナダの人がどう受け止めてくれるか、を見極めたいと思います」。その実地検証を兼ねた教育実習だ。

 大相撲に関する資料も事前に用意。例えば、“土俵”、“行司”、“すり足”、“てっぽう”、“しこ”など、代表的な38種の相撲用語を英訳した解説一覧と最新の大相撲の番付表を配布した。さらに、アシスタントを買って出てくれた塩澤聖也くんを相手に“技”、“しこ”、“すり足”などを披露。また、戸田くんへ受講者にぶつかってもらい、その力のほどを体験してもらうサービスぶりで、たいへんな盛り上がりであった。

 今回のバンクーバー日本語学校では、スケジュールの関係でアダルトクラスが対象だったが、「子どもたちにも参加してもらいたかった」と戸田くんをはじめアダルトクラスの受講者、先生たちも残念がっていた。なかでも戸田くんは、子どもが大好きで、“ちびっこ相撲”や“泣き相撲”(赤ちゃんを力士が抱いて土俵にあがり、泣かせる神事)にも積極的に参加するという。相撲を武器に、さまざまな文化背景を持つ人々に日本語を教える教師に…まさしく、うってつけの素養だ。

 

ここで、ちょっと一服…日本語を学問としてとらえる専修大学の 『日本語学』

 あまりにも身近に使っている言葉を「学問としてフォーカス」できるのか…と疑問に感じていたが、専修大学のパンフレットや王教授にインタビューして、奥の深さに驚いた。日本語を客観的にとらえて、さまざまな角度から分析、研究する…その成果が、日常のさまざまな場面に生かされていることを知った。

 専修大学は、日本で初めて「日本語で経済、法律を学べる学校」として1880年に創立。その後、日本語日本文学科を経て、創立から130年を迎えた2010年に、言語学の視点から日本語を学ぶ『日本語学科』が誕生。研究課題は、「社会を通して言葉の多様性を考える」、「日本語の音声の特徴を考える」、「日本語の中での文字の役割・機能を考える」、「古典日本語の文法、文法教育」、「現代日本語の文法、日本語教育」、「外国人と日本語で話すときのさまざまな問題を考える」、「コーパスを用いて日本語を定量的に分析する」などの課題に、それぞれ専任教授陣がつき学生の指導に当たっている。ちなみに、今回の研修に同行した王教授は、「日本語を音声からアプローチしている」という。

 

最後は、『ちゃんこ』で温もり、『スポーツチャンバラ』を見た

 専修大学相撲部部員は、全員寮生活で交代で自炊する。メインの料理は、もちろん“ちゃんこ鍋”。その鍛えた腕前で、参加者全員に振る舞ってくれた。主材は、鶏。これは「相撲の世界では手をつくことは負けを意味するため、手がない鶏を使うのが、昔からの習わし」と戸田くんが教えてくれた。野菜もたっぷり入り、彼が味付けした醤油ベースの味付けは、絶品。それを味わっている間に、『スポーツチャンバラ』の紹介があった。昔、男の子たちが、木切れを持って遊んだチャンバラごっこが、近年、道具や防具を考案し、スポーツとして人気を集めている。これを実演してくれたのは、徳永帆南さん。彼女は、フェンシングや剣道の経験もあり、今や『スポーツチャンバラの達人』なのである。この実演もまた、大いに盛り上がり、相撲同様、日本語をおぼえる垣根を低くするツールになるのではないだろうか。

 なつかしいチャンバラと熱々のちゃんこで温まった取材であった。

(取材 笹川守)

 

日本文化紹介プログラム・コーディネーターのベイリー氏江智子さん(バンクーバー日本語学校教諭)

 

大相撲のあれこれを興味深く、おもしろく、熱心に

 

技の見本

 

シコの実習、片足を上げてバランスを取るのが難しい

 

押せども引けどもビクともせず

 

赤ちゃんを抱く戸田隼介くん(右)とアシスタントの塩澤聖也くん

 

おいしそうでしょう ちゃんこ鍋

 

ちゃんこで身も心もぬっくぬく

 

スポーツチャンバラを実演した徳永帆南さん

 

ちゃんこの準備中 野菜もたっぷり

 

 

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