日本で陶芸を習い、カナダ移住後はコミュニティセンターの陶芸クラブに所属して作品作りに励む奥貫英子さん。12月の陶芸展を前に忙しく準備中の奥貫さんに、陶芸の魅力、初心者へのアドバイス、日本とカナダでの違いなどを聞いてみた。

 

どんなきっかけで陶芸を始めましたか?
若い頃から食器類を見るのが好きで、デパートに行くと服売り場などより陶器売り場を時間をかけて見ていました。1983年に東京世田谷区で陶芸講習会に参加した後、陶芸クラブに入会して陶器作りを始めました。

陶芸の魅力とは?
作品が出来上がるまでにいくつかの工程があり時間もかかりますが、そのおもしろさにとりつかれました。形作り、乾燥、素焼き、その後模様や絵付けをし釉掛け、もう一度焼成(本焼き)して完成です。絵付け以外にも装飾技法はたくさんあります。粘土の塊が食器やオブジェなど作りたい物に変身するのですから、窯出しの時は毎回わくわくします。
粘土や釉薬の組み合わせ、形を工夫すれば作品作りの可能性は無限に広がります。窯の中の位置や様々な要因で微妙に違った色合いに焼き上がることがあります。こういったことが長年やっていても決して飽きることがない理由かもしれません。縄文の土器から続く長い歴史と、土、水、火の要素があって出来上がる陶磁器になぜか魅了され続けています。

どんな物を作るのが好きですか?
何にでも挑戦しますが、実用的な食器類、シンプルで軽く使い勝手の良いものをと常に心掛けています。やはり毎日の食卓で使えるのがうれしく、家族も喜んで使ってくれると張り合いがあります。変わった物ではバードフィーダーやジョウロも作りました。ジョウロは上手く水が出ず失敗でした。一番作りやすく重宝するのは鉢やどんぶり、湯呑みやマグなど。
初心者に特にお勧めなのは植木鉢。これは重くてもいびつでも、手に持つ物でないので殆ど気になりませんから(笑)。

日本とカナダでの違いはありますか?
基本的には同じですが、強いて言えばロクロの回転が逆。私は日本で始めたので右回転で作陶しますが、カナダでは左回転でする人が多いです。
日本人は侘び寂びに通じる色を好みますが、カナダ人は明るく派手な色を好む傾向がありますね。私もこちらに来てからは伝統的な物ばかりでなく、かなり自由な発想で作品を作るようになりました。
日本では新年最初に窯炊きをするときにはお神酒を供えたり、新しい窯を購入したときには御払いや安全祈祷をしたりしますが、こちらではそのような儀式はないので素っ気ない気もします。そういった点では伝統と文化の違いを感じます。

陶芸クラブではどんな活動をしていますか?
違った作風や個性的な作品を見られることが良い刺激になります。約50人の会員で年2回、陶芸展&即売会を開催してお客さまを迎えることが、エキサイティングで楽しいです。ポットラックパーティー、ハイキングや食事、アートギャラリーに行くなど、陶芸を通して友人が増えたことも大きな収穫です。  粘土と畑の土という違いはあっても何か共通する点を感じ、3年前からコミュニティ・ガーデンの1区画を借りて野菜作り(ガーデニング)も楽しんでいます。

 

(取材 ルイーズ阿久沢 / 写真提供 奥貫英子)

 

プロフィール:(おくぬき・えいこ)
1983年に陶芸と出会う。1995年カナダ人の夫、娘(当時4歳)、母親とカナダに移住。1999年より陶芸クラブ『ABERTHAU POTTERS』メンバー。3年前からコミュニティー・ガーデンの1区画を借りて野菜作りも楽しんでいる。

ABERTHAU POTTERS 陶芸展&即売会

12月1日(土)10時〜4時

ウエストポイントグレー・コミュニティセンター(Aberthau)4397 West 2nd Ave. Vancouver

http://okueiko.shawwebspace.ca

 

2012年11月08日 45号掲載

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