2002年にワーキングホリデーでバンクーバーに来た森井園子さん。日本ではオリエンタルランドこと、東京ディズニー・リゾートのスーパーバイザーをしていた園子さんにフォーカス!

自分の言葉で話したい
「オリエンタルランド(東京ディズニー・リゾート)では、外国人のお客様の接客がとても多かったです。でも、アメリカ本社からお越しになっているエグゼクティブマネージャー/エグゼクティブシェフの方達とは通訳を通してしか話せませんでした。人を通さず、自分の言葉で話したい」と強く思った園子さんは、そこそこの英語環境の会社にいても、ここまでの英会話力しかないことを痛感し、「本格的に英語を勉強しなければいけない」と決意し、バンクーバーの地を選んだと言う。「多国籍な街なので出身国を問わず、皆さんとてもフレンドリーで良いですね。英語がうまく話せなくても、相手も分かるまで一生懸命聞いてくれ、外国人でも違和感がなく、そして心地良く暮らせる、そんな街だと思います」と、笑顔でバンクーバーの良さを話す園子さんは、ここ大好きなバンクーバーで念願のカフェを2009年にオープンした。

 

恐怖に襲われ
ディズニー時代、ディズニー・シーの立ち上げメンバーとして配属されたのがイタリアンレストランだった園子さん。そこで、「ラテやカプチーノをお客様に提供するにあたり、カフェオレとラテ、アメリカーノとアメリカンの違いを調べて行くうちにエスプレッソを使ったドリンクの面白さを感じ始めました。また、友人の紹介でバンクーバーのカフェで働き始め、『自分がもしカフェを開くなら』と、少しずつ発想を膨らませていきました」と話す園子さんは、ある種の恐怖にも襲われたと言う。「ビジネスを売りに出している物件を購入したのですが、交渉が始まると、こちらが調べる間もなくあれよあれよと言う間に話が進み、情報がないままあらゆる決断を迫られました」と当時の不安や恐怖を振り返る。思っているだけではなく実際に行動に移すことで伴う恐怖に襲われながらも、一生懸命前を向いて走り抜いた園子さんの芯の強さを感じた。

 

ただいま
「お客様を家族のように大切にし、ホスピタリティを重視しています」と話す園子さんのカフェは、時々「ただいま」と言って入ってくる常連さんや、「引っ越すからもう来れない」と、報告してくるお客様もいると言う。朝昼の献立はこちらの人に馴染みのある北米スタイルの朝食メニューから日本の洋食などが楽しめる内容。また夜は、日本の洋食のセットメニューと手作りのスイーツで、食事の方は大正時代をテーマにしているため、レトロさと懐かしさを感じるほどだ。自宅以外にも「ただいま」と言える場所がここにある。

 

最後に
「お客様やスタッフの『いつでも帰れるうち』になること。また、あり続けること」を今後の目標にする常に笑顔の絶えない園子さん。夜は同じ場所でPoccoro@Marulilu Cafeとなりスタッフ全員が袴で接待するという。バンクーバーで和洋折衷な場と味を楽しめるのはうれしいものだ。

 

(取材 門利 容子)

 

 

Marulilu Cafe (まるりる・カフェ)

場 所: 451 West Broadway, Vancouver
電 話: 604-568-4211

ウェブ: www.marulilu.com

 

2013年5月30日 21号掲載

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