2019年11月21日 第47号

11月12日、Simon Fraser University Department of History主催による歴史問題シリーズの初日、ホーグランド監督による『The Art of History: Subjective Truths and Objective Facts』が講演された。SFUの学生や教授をはじめ200人以上のカナダ人がバンクーバー市内のSegal Graduate School of Businessに集まった。

 

講演をするリンダ・ホーグランド監督

 

歴史と少女の傷

 リンダ・ホーグランド監督は、日本生まれの日本育ちで完璧なバイリンガル。「日本語を吸って英語を吐く」というぐらい学校で日本語、家では英語の通訳生活をしながら育った。250本ほどの日本映画の翻訳をしながら、映画監督の多くが『戦争は間違っている』と間接的に訴えているのを感じたそうだ。歴史と芸術。今回の講演では監督自身の手がけた映画と芸術家による作品が数点紹介された。

 ホーグランド監督が『広島の原爆』について初めて習ったのは小学校4年生の時だった。担任の先生が黒板に『原爆』『広島』『アメリカ』と文字を書いていくと、クラス全員の目が自分に集中した。アメリカ人としての責任を感じた彼女はその場から逃げ出したかったそうだ。それは少女にとって人生ではじめての『罪』。そんな思いに区切りをつけて、2005年に広島を訪れるまでかなりの時間が必要だった。

日本の『内戦』

 日本の熟年層でも日米安全保障条約の背景について知る人は意外と少ない。1960年、資本主義に必要な『奴隷化』を生活に感じた一般市民は、米軍基地拡張に猛反対した。 アメリカは、韓国やベトナムへと続くアジア戦争に備える基地確保と、中国共産党への恐怖心から、岸信介首相率いる日本政府を過剰に支援。政府の指示に従い市民を暴行する警官と、警官に向かって「良心を呼び起こしてください」と訴える日蓮宗の僧たち。 その様子はまさしく『内戦』状態で、過去にこんな大規模なデモが東京をはじめ各地方で起こっていたのだと多くの来場者は初めて知った。

 監督の映画にはナレーションが全くない。そのせいかまるで自分がその場所にいるような感覚になってしまう。拡大された油絵や写真から見る、正義、恐怖、権力などそれぞれの違った表情が全てを物語っていた。戦後の日本がドイツのように政治改革や戦後教育ができなかった理由の一つに、このような怖い出来事が国内でまだ起こっていたのだと認識できた。

 だが内戦が終わると勝者が史実を作り、敗者はその存在すら認めてもらえない。ホーグランド監督は自身の勉強の中で、芸術家たちが後世に残そうとした気持ちを知り、「日本人はただ無抵抗だったのではなく、過去に抵抗していた記録がある」と若い人に知ってもらいたかった。そして監督の映画『ANPO』が上映されると、日本で50年ぶりに安保美術展が国立現代美術館で開催された。

 来場者からの多くの質問が終わると拍手が止まらず、今回の講演は大成功だった。近いうちにまたバンクーバーに戻ってきてくれそうなホーグランド監督。VIFFは来年も映画『江戸アバンギャルドの保護者』を再上映するので、ぜひお見逃しなく。

(取材:ジェナ・パーク)

 

講演のポスター 2019 © Simon Fraser University

 

優しい笑顔の監督

 

 

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