2018年2月15日 第7号

2月10日からブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系文化センター・博物館で『BETA VULGARIS:シュガービート・プロジェクト』の展示が始まった。第二次世界大戦中、強制移動によりアルバータ州とマニトバ州の砂糖大根畑で働いた日系カナダ人の歴史を探る。

 

(左から)アーティストのケルティー・ミヨシ・マッキノンさん、日系博物館館長のシェリー・カジワラさん

 

砂糖産業を支えた日系カナダ人

 「第二次世界大戦中の日系カナダ人の強制移動について聞くことはあっても、アルバータ州南部やマニトバ州南部の砂糖大根畑での労働については、これまで詳しく語られることがなかったと思います」と日系博物館館長のシェリー・カジワラさん。

 戦中、兵士召集による労働者不足、海外からの砂糖きびの輸送困難、砂糖不足解消のために、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州保障委員会が『砂糖大根プロジェクト』を開始。1942年、バンクーバー市のヘイスティングス公園内の家畜小屋に収容された日系人が内陸部へ移動させられた際、砂糖大根畑で働くことに同意した場合のみ、家族と一緒に暮らすことを許されたのである。約3600人の日系カナダ人がこのプロジェクトに参加。その結果、当時、砂糖大根畑で働く労働者の65パーセントを日系カナダ人が占めていた。

 

砂糖大根畑での労苦

 砂糖の原料は砂糖きびだけでなく、砂糖大根(学名:BETA VULGARIS)の根からも砂糖が作られる。

 オープニング式典には約80人が出席。その中のひとり、トッシュ・キタガワさんは「春に種まきし、秋に根を掘り起こすときには寒さで根に土がこびりつき、手で作業するのが大変でした」と砂糖大根畑で働いた経験を語った。また「私の母は祖父(1908年にカナダに移住した一世)とともにラングレーからアルバータ州に強制移動しました。私は戦後生まれですが、母から聞いた砂糖大根畑での苦労話を忘れたことがありません」とデビット岩浅さん。

 

日系カナダ人と砂糖と和菓子

 この展示を手がけたケルティー・ミヨシ・マッキノンさんは日系4世。「以前、曾祖母の話を書いたことからシュガービートに興味がありました。旧日本人町パウエル通りのすぐそばに製糖工場『ロジャーズ・シュガー』がありますが、当時は人種差別により日系カナダ人は雇われませんでした。砂糖を作るとき“白くする”過程があることも皮肉な事実です。今回の展示では日系人の歴史とともに砂糖についても触れています」

 展示には約2000キログラムの白砂糖を使用。オープニング式典後に、表千家のまい子ベアさんらが抹茶とともに和菓子を紹介した。開催中はフィルム上映(3月3日)、アーティスト・トークとてい茶(3月10日)、子供のための楽器制作(3月11日)や和菓子のワークショップ(4月7日)が予定されている。

 

BETA VULGARIS: THE SUGAR BEET PROJECTS
(5月27日まで開催)
日系文化センター・博物館
6688 Southoaks Crescent, Burnaby BC
電話 (604) 777-7000
月曜日休館 
www.nikkeiplace.org

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

(左から)砂糖大根畑での写真を見せてくれたトッシュ・キタガワさんとデビッド岩浅さん

 

約2000キログラムの白砂糖で表現した日本庭園・枯山水

 

 

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