2018年2月1日 第5号

日本からバンクーバーに移り住み四半世紀を過ぎたガラス作家の竹ノ内直子さんは、精細でメッセージ性の高いガラス作品を作り続けている。彼女のガラス作品の展示会はガラス作品コレクターが通い詰めるほど人気がある。カナダ評議会より『ミッド・キャリア』グラントを授与され、2003年よりガバナー・ジェネラルズ・パフォーミング・アーツ・アワードを委任されている直子さんに今回の個展への想いを語ってもらった。

 

今回の個展の作品: Flight 80cm x 30cm x 20cm(写真提供 長井憲治さん)

 

個展『スピリットメッセンジャー』への想い

 今回の展示会は、自然や鳥がスピリットメッセンジャーとして私にインスピレーションを与えてくれた、とてもパーソナルな作品展です。 

 私にとって創作のプロセスは常に自己の内面との対話と人生経験のリフレクションから始まります。

 3年前に最愛の夫を亡くした後、抜け殻のような精神状態が続きました。前向きに生きていくためのスピリットと、自分の足でしっかり立つグラウンドを取り戻すための葛藤を繰り返しました。そんな時に野鳥が帰巣本能を備えていて、どこに行っても自分の巣に戻るように、常に私の人生のコンパスであった創作活動に帰ろうとしている自分がいることに気づきました。以来、創作活動に復帰する試みを通して内観を繰り返す日々の中で、愛を持って手放すことの意味と、今を生きることの尊さを私なりに理解できればと感じています。スピリットメッセンジャーが私にインスピレーションを届けてくれたように、この展示会がたくさんの人達の心に触れることができればと願っています。

 

カナダに来たきっかけ、現在、同地にいらっしゃる理由を教えてください。

 以前、札幌にあるスウェーデンセンターというガラス工房で働いていた時にお世話になったスウェーデン人アーティストにバンクーバーのグランビルアイランドにあるガラス工房を紹介してもらい、1989年の終わりにワーキングホリデーでバンクーバーに来ました。その後、ワーキングビザでバンクーバーに滞在しガラス工房に勤務しました。カナダの永住権取得以降はガラス作家としてバンクーバーで創作活動を続けています。グランビルアイランドで木工房をしていた夫と知り合い1994年に結婚して以来、私にとってバンクーバーはプライベートでも仕事面でもホームベースと言える場所になっています。

 

過去から現在への創作における変容について教えてください。

 若い頃は自分の周りにある美しいものをガラスで表現したいと思っていましたが、カナダに渡って人生を自分の足で歩み始めた頃から作品作りが自分の生き方と内面のリフレクションに変容してきました。今でもインスピレーションを自然から受けることが多いのですが、作品の趣旨は自分の内面との対話になってきました。

 

これからの抱負をお聞かせください。

 これからも自分の人生経験をより深く見つめてガラス作品に表現することによって、人の心の深い部分に触れることのできる作品作りができればと思っています。

 

ガラス作家:竹ノ内直子さん 個展『スピリットメッセンジャー』
会期:2018年2月15日〜3月8日 12:00-17:00(日曜日は14:00〜16:00) 
会期中は毎日開廊
会場:VISUALSPACE GALLERY: 3352 DUNBAR STREET, VANCOUVER

(取材 北風 かんな)

 

竹ノ内直子さん近影(写真提供 竹ノ内直子さん)

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。