2018年2月1日 第5号

ワーキングホリデーでバンクーバーに来た2人の日本人青年が、俳優、スタントマンとして、夢だったハリウッド作品に出演。大きな一歩を踏み出した。活躍の場を着実に広げている2人に話を聞いた。

 

Taiga Seiyaさん(右)と Shota Tsujiさん

 

―バックグラウンドを聞かせてください

Shota Tsujiさん(以下S)「16歳の時、テレビでシルベスター・スタローン主演の「ランボー」を見たんです。ビビッと刺激を受けて、将来絶対にスタローンと一緒に仕事をするぞと思ったんです。役者で彼と共演するのはかなり難しいけど、スタントマンだったらもっと可能性があると思ったんです。そして、スーパー戦隊シリーズなどで、スーツアクターを2年間やりました。高校卒業後に辞めて、ロサンゼルス(LA)へ渡りました。ビザは取れたんですが、コネクションもないし英語も話せなくて仕事がなかったんです。いったん諦めて、日本で留学仲介会社に就職しました。出勤初日の昼休みにスタントの先輩から電話がかかってきて、『なんでバンクーバーに行かないの?』と言われたんです。世界で一番多く撮影が行われているのがバンクーバーで、ワーキングホリデーなら1年間自由に働ける。それで昼休みから帰ってすぐ『辞めます』と。バンクーバーに来て、すぐにネットフリックスのショーに関わることができ、どんどん仕事がつながって今に至るという感じです」

Taiga Seiyaさん(以下T)「母がECCスクールをやっていて外国人と会う機会が多かったんです。子供ながらに親が外国人と英語で話しているのを見て、すごいなと思ってたんです。こういう世界に入りたいなと。高校の時、アメリカ・アイオワ州の、日本人が全くいないところで1年間過ごしました。外から日本を客観的に見れて、日本のことがすごく好きになっていきました。そして『日本人として海外でなにかをやっていく』という方向が見えてきました。その時に入っていたアメフトクラブのみんなと観た映画で、日本人を演じているのが日本人じゃないということを、誰も変だと思っていないことに気づいたんです。それが悔しくて、自分が海外で日本人アクターとしてやっていこうと思ったんです。日本に戻ってからは、ヒッチハイクの旅をしたり、大学を中退したり、不動産会社に就職したりといろいろなことをしました。やはり自分の夢を追いたくてアメリカに行くことを考えたんですが資金がない。それでまずはバンクーバーに行くことにしたんです」

 

―2人の出会いについて

S「スタントマンが集まる体操場で練習していた時に、Seiyaと初めて会って連絡先を交換しました。住んでいたところを出ることになってルームメイトを探そうという時、携帯を開いたら、ぱっと彼の名前が出たので電話してみたら、『今日、家を追い出された』と」

T「少しの間ホームレスになってました。アクティングスクールにお金を使いすぎて家賃が払えなくなってて」

S 「それで一緒に住むところを探して。ルームメイトになったし、同じ業界で働いているのだから、何か目標を作ろうと。1つ目は『The Man in the High Castle』というアマゾンプライムの作品で日本人の役をやること。毎日そのことを語っていたら1カ月で連絡が来て、2人とも出られることになったんです。2つ目は、Seiyaが役を取って自分がスタントダブルをすること。簡単なことではないんですがかなったんです。『The Flash』というテレビ番組に、Seiyaがヤクザのリーダーという役で、僕がスタントダブルでキャスティングされました」

 

―ワーキングホリデーの期限が来て、SeiyaさんはLAに向かいますね

T「最初に持った夢がアメリカで日本人アクターとしてやっていくということでしたから、夢があるところに行くべきだなと。バンクーバーには救われたと思ってるんです。ここで大きな作品に出演するようになったし。いずれは日本人というくくりを超えて、アメリカ生まれのアジア人の役をやれるようになったらいいなとは思ってます。自分が可能性の象徴みたいになれたらいいですね。大学を中退した自分、ワーキングホリデーで始めた自分がここまでやってきたという。夢はかなうってことを伝えていきたい」

 

―バンクーバーの若い日本人へのメッセージを

S「ワーキングホリデーは夢のチケットだと思うので、カナダに来て夢をかなえてほしい。ワーキングホリデーは、他のビザに比べて比較的簡単に取れて1年間好きなところで働けるんです。自分たちもワーホリだからこそ、いろいろな現場に行けていろんな人に会えたんです。日本で『バンクーバーでこれをしよう』と思っていたことを忘れている人がいるのは、もったいないです。自分のやりたいことを思い出してほしい、ワーホリでいられるうちに。自分たちとしても、そういう人たちが夢をかなえたらすごくうれしいし、僕らでもできたんだから誰でもできると思うんです」

(取材 大島多紀子)

 

「The Flash」の撮影現場で。撮影の多くはバンクーバーで行われた。Taiga Seiyaさん(右)と Shota Tsujiさん(写真提供 Tony Admare)

 

 

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