被災者への支援を込めて
「こういうときにこそ、少しでも被災された方のお役に立ちたい、それがセレブレートにつながるのではと、震災後このコンサートの目的を支援へと置き換えました」と開催前に話していたミュージック・ディレクターの内藤邦子さん。この日、ステージに真紅のドレスで現れた24人のコーラスは、ピアノ伴奏のシェパードひろ子さん、内藤さんの指揮で『カトレアに』に続き、犠牲者や被災者へのお見舞いの気持ちを込めて『千の風になって』を歌った。
司会の内藤優理さんに紹介された在バンクーバー日本国総領事伊藤秀樹氏は、カトレアコーラスの20周年のお祝いの言葉を述べたあと、現在でも総領事館にたくさんの支援金が寄せられていること、復興には長い時間がかかることなどを説明し、この支援コンサートに感謝の言葉を述べた。
カトレアコーラスのレパートリーでお馴染みなのが童謡・唱歌メドレー。日本人であるという誇りを持ち、日本の文化の素晴らしさを伝えたいと、衣装の上に羽織を羽織り『通りゃんせ』『我は海の子』『故郷』など7曲を歌った。普段、どれだけの人がこうした懐かしい歌をゆっくりと聴く機会があるだろうか。

生きているって素晴らしい
「想像を絶するような災害で日本が大変な中、『生きているって素晴らしいな』と思えるような歌を歌いたいと思いました」と選んだのが『信じる』『ありがとう』『明日という日が』という、希望に満ちたタイトル曲。中でもNHKで放送された『ゲゲゲの女房』の主題歌『ありがとう』はテンポと言葉合わせが難しい曲だが、ソプラノ、メゾソプラノ、アルトの3パートをしっかりと合わせて、明るくのびやかに歌いこなした。
『明日という日が』は、中学生が合唱コンクールで歌う予定だったが震災でキャンセルされ、避難先で歌ったという曲。夏川りみの歌で話題となったこの歌で、自分を信じて生きていこう、という力強いエールを送った。

ドボルザークのジプシー
休憩後はハープ奏者、大竹香織さんが友情出演し、ハイドンやリストの作品を演奏。アンコールは、日本の復興への祈りを込めた『さくら、さくら』。日本人の心に根づく情緒深いメロディーが、場内に響いた。
第2部で青いドレスに着替えたメンバーは、後半で日頃の力量を発揮。ベートーベンの『メヌエット ト長調』『アビニオンの橋の上で』に続き、『遠い日の歌 パッヘルベルのカノンによる』の重なり合う合唱で聴衆を引き込んだ。
今回カトレアコーラスが挑んだのは、ドボルザークの歌曲『ジプシーの歌』全7曲のうちの5曲。これを内藤さんが女声合唱用にアレンジした。さらに『我が母の教えたまいし歌』(堀内敬三訳)に、メロディーに合った歌いやすい日本語の歌詞をつけた。難しいピアノ伴奏とともにソロを入れたコーラスで哀愁のあるメロディーを盛り上げ、幕を閉じた。
なお、このコンサートの収益金、寄付金などは後日日本総領事館に届けられるという。

カトレアコーラス:
ミュージック・ディレクター内藤邦子。1991年発足。グレーターバンクーバー全域から歌の大好きな女性たちが集まり、カナダの地で美しい日本語を音楽に乗せ、温かく優しい心、平和への思い、そして生きる喜びを人々に届けようと、定期演奏会、ジョイントコンサート、シニアセンターなどへの慰問、地域のイベントへの参加など、幅広く活動している。
連絡先:604-432-7030

 

(取材 ルイーズ阿久沢)

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