2016年11月17日 第47号

● 海外20カ国から212名の日系人が東京に集結

 

歓迎のことばを述べる岸田文雄外務大臣(外務省飯倉公館で)

 

 第57回海外日系人大会が10月24日から26日まで、東京都の外務省飯倉公館、憲政記念館、JICA市ヶ谷ビルの3カ所で行われ、カナダからの9名を含む20カ国212名の日系人が参加し、「21世紀の日系人像」をテーマに活発な議論を行い交流を深めた。

 日系人大会は公益財団法人海外日系人協会の主催で、世界各地からの参加者が居住国の実情を相互に認識しあい、国際交流を促進する目的で行われているもので、講演とシンポジウムなどからなり、世界の日系人ネットワークの中心的行事となっている。

 24日、憲政記念館で行われた基調講演ではゲスト講師により、アイデンティティの問題が語られた。

 25日、JICA市ヶ谷ビルで行われた国際シンポジウム「21世紀の日系人像」では、「日系の独創力を活かすには」、「ビジネス戦略としての日系人」、「ユースにとっての『21世紀日系人像』とは」の3つの分科会にわかれて議論がかわされた。どの分科会でも世代交代が進んでいることが確認され、移民支援の要望といった旧世代の議論から脱却し、グローバル人材としての日系人の活用を日本に提案する内容が多く聞かれた。議論の内容は7項目からなる「21世紀の日系人を共生のパートナーに」という大会宣言としてまとめられ、全体会議で承認された。

 また、24日は秋篠宮ご夫妻のご臨席のもと憲政記念館で歓迎交流会が行われ、ご夫妻は各国からの参加者と会話を交わされた。

 25日には外務省飯倉公館で岸田文雄外務大臣主催による歓迎レセプションがあった。冒頭、大臣は世界各国で土地に根付いて高い評価を受ける日系人の活躍に触れ、日本の存在感を世界で示していくためにも日系社会との絆を大事にしていきたいと述べた。

 カナダ・バンクーバーから今大会に初めて参加した柴田祐子さん(在加43年)は、自身も戦前からの日系移民女性の聞き取り調査を行なっていることから、日系アイデンティティの問題について興味があり、今回参加を決めたと言い「世界各国の移民の話を直接聞くことができて実情を感じることができた。時代によって変化する日本の世界における位置づけが、日系人の自己像に影響していることも感じた」と話した。また第1回から欠かさず参加しているというメキシコの春日カルロスさんは「日本の側も日系人の力とネットワークに期待しているのが感じられる。新しい世代に期待したい」と語り、大会の手応えを感じている様子だった。

 同日は会場にハンマー投げのオリンピック金メダリスト室伏広治さんの顔も見られた。

 26日には憲政記念館で大島理森衆議院議長、伊達忠一参議院議長主催の昼食会が行われ、両議長をはじめ多数の国会議員が参加し、参加者と懇談した。

● 基調講演
「混血の進むアメリカ日系社会と日系アイデンティティ」
南カリフォルニア大学准教授 日本宗教・文化研究所長 ダンカン・ウィリアムズ氏

 ダンカン・ウィリアムズ南カリフォルニア大学准教授は、「混血の進むアメリカ日系社会と日系アイデンティティ」と題して講演した。北米での混血化が進んでいることをデータで示し、とくにカナダでは顕著であることにも言及した。出生国のアイデンティティを当然と考えていた人が、日本を訪問すると考え方に変化がある例などを披露され、日系人の心の持ち方を概観した。

「世界最大の日系コミュニティの未来像とは」
ブラジル日本文化福祉協会会長 呉屋 新城 春美氏

 かつて農業従事者がほとんどだった日系移民が一般の都市住民としてブラジル社会に溶け込んでいる様子を披露した。混血率についてはサンパウロの日系研究機関、人文科学研究所の調査で、1990年台末において二世6パーセント、三世42パーセント、四世62パーセントとされたが、現在では三世60パーセント、四世80パーセント、五世以降はほぼ全員が混血化していると見積もられ、同研究所の宮尾進さんの言葉では「近い将来、純血の日系人を見ることはないだろう」との認識があることを紹介した。その前提の中で20年後の日系社会の連帯を、顔の特徴ではなく、日本文化を愛する心に定め、青年リーダーたちの交流の場として文協統合フォーラムを行うなどの取り組みについて述べた。

「変わる日系人像」
公益財団法人海外日系人協会(JICA 横浜 海外移住資料館業務室 学芸担当) 小嶋 茂氏

 日本の統計資料で日系人の定義が時代とともに変化しており、1960年台に「日本国籍はないが、日本人の子孫」を日系人としていたものが、混血化と人数把握の難しさから1986年には定義が一度消滅し、2002年に「日本国籍を有する永住者と国籍はないが日本人の血統を引くもの」と再定義された様子を述べ、問題の根深さに触れた。一方、内面的な問題として、日本人の血は一滴も入っていないが、養子として日本人の名字の下で育ったスポーツ選手が日本人の魂を受け継いでいると述べる例や、「あなたは何者か?What are you?」という質問に対しHAPAと答えるカナダ人女性の例を挙げ、多様な自己像のあり方に触れた。また各国の日系人に共通する勤勉さや真面目さ、とりわけ感謝の気持ちが世代を通じ受け継がれていることに注目し、ハワイの資料館の展示に見た「おかげさまで」という言葉は象徴的な言葉として紹介した。

● カナダの現状を知らせる5分間スピーチ
日系人の主張 〜日系社会の現状と提案

 26日、大会宣言の発表に先立ち、「日系人の主張」と題して各国からの代表による5分間スピーチが行われ、カナダ・バンクーバーからは大河内南穂子さんと、林光夫さんが参加した。

 大河内さんは主宰するコスモス・セミナーの活動の経験からリーダーの資質について話した。コミュニケーション能力を高めること、ボランティア活動を通じて移住先国に溶け込んでいくことの大切さを主張した。林さんは日系社会における文化伝承の場、博物館機能、福祉施設がばらばらにあることのデメリットを指摘し、南米の移住地も参考にしながらそれらを一つにまとめた日系文化センター・博物館の構築に携わった話をした。

 5分間という短い時間ながら各国の事情と未来志向の意見とが聞かれた。

 また、二人に大会の印象を聞いたところ、大河内さんは「参加するまで、パイオニア移民たちの集まりというイメージを持っていたが、輝く女性や若手リーダーたちの姿もあって刺激を受けた」と語った。林さんは「中南米の元気のある若者たちの姿が羨ましくもある。カナダでも若手のリーダーたちに期待したい。また差別の中で苦労した一世たちの気持ちも伝わるといい」と語り、次世代への期待をのぞかせた。

(取材 仲島 尚)

 

あいさつをする大島理森衆議院議長(憲政記念館で)

 

スピーチをする林光夫さん

 

スピーチをする大河内南穂子さん

 

カナダからの出席者とともに。中央は岡田誠司・前在バンクーバー日本国総領事夫妻、左端は飯野正子・津田塾大学名誉教授、元学長(外務省飯倉公館で)

 

秋篠宮ご夫妻(憲政記念館で)

 

大会前夜祭(10月23日)で。歌手のマルシア(右)と

 

あいさつをする伊達忠一参議院議長(憲政記念館で)

 

 

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