7月2日、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)音楽学部ホールにてソプラノ歌手のイザベル・バイラクダリアンさん出演の『Amor & Pasión(愛と情熱)』が開かれた。これは2週間のマスタークラスで指導を終えたイザベルさんのフィナーレともいうべきコンサートで、約230人を前にイザベルさんが情熱的なリズムに乗って表現力豊かにタンゴのメドレーを熱唱した。

 

タンゴ曲を熱唱したソプラノ歌手イザベル・バイラクダリアンさん

 

情熱的なハープで開演

 カリフォルニア州在住のイザベル・バイラクダリアンさんが今回バンクーバーを訪れたのは、バンクーバー・インターナショナル・ソング・インスティテュート(VISI) 主催のマスタークラスで指導するため。2週間の講習には45人が参加。ロマンス言語と形容されるフランス語、イタリア語、スペイン語の曲に焦点を置き、発音、歌い方、表現力などを指導し、生徒とのディスカッションも行われた。

 コンサートでは、開演前にハーピストの大竹美弥さんが数曲を演奏。癒しの楽器として知られるハープだが、共鳴版を叩きながら激しく弾く『バロック・フラメンコ』で、この日のテーマである『愛と情熱』を見事に表現した。

タンゴ曲をたっぷりと

 マスタークラスを受講した生徒たちの歌に続く第2部は、アルゼンチン・タンゴを代表する『ラ・クンパルシータ』で幕開け。バイオリンとクラリネットがメロディーをリードする中、コントラバスとピアノがリズムを刻んだ。

 舞台に登場したイザベルさんは真紅と黒のロングドレスに身を包み、ベテランの貫禄いっぱいにスペイン語曲、フランス語曲、ドイツ語曲に加え、ルーツであるアルメニア語でタンゴ曲を熱唱し、その美しい声と歌唱力を存分に披露。アンコールでは「アラビア語でタンゴを歌いましょうか?」と数か国語を操る才能を覗かせた。

 曲のアレンジとピアノ伴奏をしたのは夫のセロージ・クラジャンさん。「夫婦で共演するのは素敵なことですが、まずお互いが音楽的に同意しなければなりません。それを乗り越えれば一緒に音楽を作っていく素晴らしさを分かち合えます」と話す。

後輩を育てる

 イザベルさんはレバノンでの内戦を逃れ、14歳のときにカナダに移住。トロント大学で医用生体工学を専攻したが、幼い頃から教会で歌っていた恵まれた才能と表現力で2000年にドミンゴ設立のOperalia 国際オペラコンクールで最優秀賞を受賞しオペラ歌手の道に進んだ。

 現在はカリフォルニア大学サンタバーバラ校の准教授(声楽)でもある。 「私はこれまでとても祝福された道を歩いてきました。このあふれるほどの祝福を次の世代と分かちあうため、教え始めました。まず生徒が心を開いて信頼してくれることが大切です。失敗から学ぶことも多いですが、その失敗を逃れるよう導くこともします。そこからインスピレーションを得て、自由に歌うことを覚えていくのです」と後輩を育てることにも意欲的だ。

 観客の中には合唱関係者も多く、ナナイモから来たという高校生アケーラさん(17)は「ピアノと歌を勉強しています。すごく良かったです」と感想を述べた。 (取材 ルイーズ 阿久沢)

 

タンゴ曲を熱唱したソプラノ歌手イザベル・バイラクダリアンさん

 

(左から)終演後にサインをするイザベル・バイラクダリアンさん、開演前にハープを弾いた大竹美弥さん、イザベルさんの長年の友人でバンクーバー・インターナショナル・ソング・インスティテュート(VISI)理事のアダムス弘美さん

 

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