消えた日系2教会

戦前、日本人街のコルドバ通り(430 E.Cordova St.)に『日系カナダ人聖十字聖公会』、またバンクーバー市内のウエスト3番街とパイン・ストリートには『昇天教会』があった。ところが昇天教会は広島原爆の1ヵ月前に、聖十字聖公会は日系人が戦時中の強制移動からバンクーバーに戻り始めた1949年に売却された。どちらの売却もカナダ聖公会ニューウエストミンスター教区によって行われ、その後はっきりとした説明もないまま60年が経過していた。
2009年、これら日系資産の土地売却と、それによって得た資金のゆくえに疑問を抱いた日系聖公会会員らが日系カナダ人・バンクーバー諮問評議会(JC-VCC)を結成。教区首脳部によって行われた意外な不正事実をつかんだ。
この事実は今年、カナダ聖公会の全国会議で首座主教によって認められ、未解決だった問題に終止符が打たれる形となった。

 

和解と調和を求めて

ニューウエストミンスター教区主教補佐ダグラス・フェントン司祭は記念礼拝の中で、和解とはもう一度会い平和を取り戻すこと。暗闇から抜け出し真の自分になるためには過去の失敗を吐き出すことが必要と述べ、『光の中を歩みなさい』(ヨハネ伝)という聖句を引用した。
日系教会に起きた過去の歴史を覚えることで和解と癒しが始まったとし、戦中・戦後に売却された日系教会の基本事実と正式謝罪を刻んだ盾の奉献式を行った。
また退職したマイケル・インガム主教が書いた文書を読み上げ、イム・テビン(任大彬)師が正式に同教会でフルタイムの司祭に任命された旨を発表した。

 

多くの人に守られて

礼拝後、『ホーリー・クロス・デー』と『敬老の日』を祝う持ち寄り夕食会が開かれ、NAVコーラスとさくらシンガーズの合唱、岡田誠司総領事のサキソフォーン演奏、子どもたちの太鼓演奏などが行われ、80歳以上の人にコサージュとおまんじゅうが配られた。
イム牧師は「今日の記念礼拝には教会員、聖公会関係者ほか、日系教会の信者さんやコミュニティ関係者など多くの人に出席していただき、この教会がみなさんによって守られていることを強く感じました」と感想を述べた。

 

 

(取材 ルイーズ阿久沢)

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