「日系社会には、わたくしよりもっと長い間、頑張ってこられた方たちがいらっしゃいます。先達を差し置いてわたくしが?と、思いましたが、43年間コツコツ続けてきたことを評価していただいたと、素直に受け取らせていただきました。特にコスモス・セミナーの役員、会員の心強い支援があったからこそ。感謝しています」

ダイヤモンド・ジュビリー褒章受章に関する、大河内南穂子さんの開口一番の言葉だ。大河内さんは、1970年の来加以来43年間、日系女性の会、すみれ会やサレー日本語学校の立ち上げ、マルチカルチャーTV局での13年間にわたる日本語放送司会をはじめ、日系コミュニティに対して多大な貢献をしている。州立サイモン・フレーザー大学の生涯教育部門、異文化言語コミュニケーションセンターの講師として、またCBCラジオカナダインターナショナルから短波放送で日本のリスナー向けレポートでも活躍した。これまでの活動がカナダ政府にも認められたことについて、大河内さんは語る。
ノミネートされていることは、昨年夏に聞いていたものの、その後すぐに長崎県立大学での講義のため日本に行き、忘れかけていたそうだ。受章の連絡があったのは1月2日、奇しくも大河内さんの誕生日だ。10年前に亡くなった大河内さんの夫、大河内訓夫さんは、お墓は要らないと遺言を残していたため、かわりに桜の樹を2本、寄贈したという。「メモリアルベンチを探していましたところ、和歌山県人会がゲリーポイントパークで桜の植樹を行っていることを知り、寄贈したものが育っています。毎日の散歩でも必ずお参りしている、この桜の樹のところに直ぐに行って、報告しました」
フットワークが軽く、のんびりすることができないという、活動的でパワーにあふれる大河内さん。「メールアドレスの名前はますます増えています。何よりもステキな財産です」と語る。中でもカナダという異国の地で暮らす日本人女性の仲間たちは心強い存在だ。「日系センター(現、日系文化センター博物館)建設の際、共同募金委員長を務めました。バブル崩壊後であったため、募金活動に苦労していましたが、多くの方々よりご寄付いただいたことは、とても嬉しく今でも忘れられません」
2000年7月に発足、今年で13年目を迎えるコスモス・セミナーでは、主宰として会員や出席者に心を配る。「終了して参加してくださった方たちがお帰りになる際、できるだけご挨拶をするようにしています。コスモスの花が開くように、生き生きと輝くお顔を見るのが嬉しくて、月1度の集いが楽しみで、待ち遠しいです」
生涯学習の一環として、文化、科学、技術、経済など、多くの異なった場で活躍する方々と交流する機会を提供するコスモス・セミナー。日本語で講義していただける講師を探して、企画、交渉までが大河内さんの担当、あとは事務局が行う。充実したセミナーを開催するため、いつもアンテナを張っているという。同時に、「ワン・ゲスト=ワン・スマイルを心がけることで、おもてなしの練習にもなりますし、フルネームで会員の名前を覚える努力もしています」と常に自分を磨く努力を続けている。
「ボランティアの原点は、母の町内会での世話役振りを幼い頃から見て育ったからでしょうか。自分に出来ることは当然です。自分が好きでやらせていただいているのですから」と語る大河内さん。

バイタリティあふれる大河内さんの原点、その後の人生に大きな影響を与えたことに、松竹映画『二十四(にじゅうし)の瞳』(1954年公開)への出演がある。『二十四の瞳』は壺井栄原作、小豆島に赴任する新任教師、大石先生と、12人の子どもたちとのふれあいを描いた、故、木下惠介監督の名作だ。

もともと人前に出るのが好きで、劇団に入っていたので基礎もできていてセリフも話せる。子役に応募した3600人ほどの中から見事に小ツル役を射止めた。12歳の時のことだ。
ロケが行われた3カ月間、物語の舞台となる小豆島の旅館で暮らす。「家庭教師がつき、主演の大石先生役、高峰秀子さんなどは、別の旅館でしたが、他の子役や大人の役者と一緒。合宿生活のようでとても楽しかったです」と振り返る。「好きな映画に出て、大スターに囲まれて、その上、瀬戸内海の海の幸を食べて……。夢のような日々で、まるで竜宮城に行ってきた浦島花子のようでした」
民間のテレビ放送局向けのタレント養成所に入り、黎明期のテレビ業界で、コマーシャルやドラマに出演して活躍した後、単身渡米し、フラワーアレンジメントを習得。『夢』より、いつまでと期限を区切る『目標』という言葉のほうが好きという大河内さんは、1970年にカナダに移り住んでからも、持ち前の好奇心で、当地の日系社会のリーダー的役割を担ってきた。「当初はサレーに住んでいました。ESLの仲間から郊外に住んでいて心のよりどころが欲しいと言われて作ったのが、日系女性の会、すみれ会です」

つらい立場にいる人に寄り添うような映画を撮り続けた、『二十四の瞳』の木下惠介監督が、注目を集めている。

大河内さんが出演した『二十四の瞳』を撮った木下惠介監督の映画が、最近、世界三大映画祭と言われるベネチア国際映画祭やカンヌ国際映画祭、ベルリン映画祭のすべてで上映されるという快挙を遂げるなど、高く評価されている。
木下監督は、日本全国の僻地を点々とする灯台守を描いた、『喜びも喜びも悲しみも幾年月』をはじめ、高齢者や貧困にあえぐ人、障がい者、女性など、一般的に社会で『弱者』と言われる人たちに対する温かい目を持っていた。その映画を見て、力づけられる人が多いというものだ。
この再評価の動きについて、「木下監督は同時期の黒澤明監督と比べられますが、これまで世界であまり注目されることはありませんでした。やっと地道な監督の作品が海外で日の目を見ることになり、わたくしの今迄のボランティア活動にも重なり、コツコツと築き上げたことが、いつかは認められて大きな賞と言う形になると感じました」と歓迎すると同時に、不思議な縁を感じるそうだ。「天国から木下監督に応援していただいたのでしょう」
友人に紹介されたという、『あなたが善を行うと利己的な目的でそれをしたと言われるでしょう。気にすることなく善を行いなさい』(マザーテレサの言葉)を胸に、「今回の受章はゴールではなく、今後も励むための大事なステップと心して参ります」と語った。5月には地元で「スティーブストン・ライフスタイル春のファッションショー」が開催され実行委員に任命されたので、ミーティングにも参加し新たなボランティア活動が始まるという。今後のさらなる活躍が楽しみだ。

(取材 西川桂子)

 

大河内南穂子さん

1970年のバンクーバー移住以来、ボランティア活動は多岐にわたり、サレー日本語学校、日系女性の会、企友会の設立に尽力。移住者の会役員、日系プレース建設募金共同委員長、同プログラム委員、ナショナル日系ヘリテージセンター協会の理事を務めた。1996年四国新聞社から著書『瞳からの旅立ち』が発行され、同年全国優良推薦図書に選ばれる。2000年に発足させた、生涯学習の集い「コスモス・セミナー(www.cosmos-seminar.com)」の主宰。ホームページ www.naokocanada.com

 

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