2019年10月31日 第44号

 日本語上級者からこんな電話がかかってきた。「先生、今日の午後3時ごろ学校におりますか」である。そこで意識的に「はい、おりますよ」と返事した。そして彼女が学校にやってきたので、早速敬語のお勉強をしようとすると彼女は照れ笑いを浮かべながら、「学校におりますか」はダメですよね、である。さすが敬語に興味のある上級者、ちゃんと間違いだと分かっている。でも日本語の会話の中でこんな言い方をよく聞くとのこと。なるほど。

 確かに、この「○○先生はおりますか」という言い方が正しいと思っている日本の若者が最近かなり増えているようであり、日本語教師として、敬語の乱れ、特に謙譲語の誤用はとても気になる。この「おる」は自分の動作を低める謙譲語であり、相手の行為に用いるのは大間違い。社会人になれば至極当然で、「いる」の尊敬語「いらっしゃる」を使って、「○○先生はいらっしゃいますか」である。

 日本語上級者に敬語を教える場合、相手の行為には尊敬語、自分の行為には謙譲語を使う、と強く教えている。するとこんな質問が、「どうして自分を低めるんですか」である。なるほど、でも日本語にはこの「低める文化」いわゆる「謙譲の美徳」が大きな役割を持っており、皆さんの文化にはないから難しいけど、敬語を学びたいのであれば、ぜひ頑張って、と説明している。日本の若者もこの「へりくだりの文化」などあまり必要性を感じなくなってきているのかもしれないが、日本語を母語とする者としては大いに意識してもらいたい。

 でも敬語の使い方において、方言なども絡んで、確かにややこしい面もある。一例として表題の「おられる」で、謙譲語「おる」に「られる」をつけて「おられる」、これは謙譲語「参る」に「られる」をつけ、尊敬語のように「お客様が参られました」と同じで、文法的には二重のミス、「○○先生はおられますか」は大間違いである。

 しかし25年間続けている日本語教師養成講座で「敬語の教え方」を行なっているが、この「○○先生はおられますか」に関西地区出身のほとんどの生徒は違和感など無く、文法的にも問題なし。さらに「○○先生はいらっしゃいますか」よりめっちゃ温かみを感じるとのこと。

 当初は驚いたが、東京出身の日本語教師としては大いに考えさせられた。事実、謙譲語「おる」は2007年に文化庁から「丁重語」として分類され、従来の考えと変わってきている。しかしこの「おられる」は間違いだと感じる人も多く、放送関係では使われていない。だが、文法はともかく、関西地区では昔からずっと使われており、現在ではもはや問題なしとされている。そら、そやろ !

 この「おられる」にめっちゃ力強い意地を感じた。言葉とは方言や世代差なども考慮して、その時代の人々が作り上げていくものなのであろう。

 

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