2017年12月21日 第51号

2017年も残すところ、あと僅かとなりました。今回は趣向を変えて、今年のニュースをダイジェストにして、振り返ってみたいと思います。

① 薬物乱用問題
 去る10月には、米国でも非常事態宣言が出されたように、北米では薬物の乱用が非常に大きな社会問題になっています。メディアなどで「OD」といえば、麻薬のオーバードース(薬物過剰摂取)のこと。がん疼痛や慢性疼痛の治療薬として用いられるフェンタニル(モルヒネの80倍の効果を持つ麻薬)を誤用・乱用することで呼吸困難を起こし、多くの死を招きます。2017年のBC州における薬物過剰摂取による死亡件数は、11月の時点で1100件を超え、2016年の同じ時期の981件を大きく上回りました。この事態を憂慮したBC州政府は、「持ち帰り用ナロキソンキット(Take Home Nalxone Kit; THN)」をODの危険がある人や、ODの場に居合わせる可能性の高い友人や家族に無償で提供することを決めました。THNには、ODによる呼吸抑制が起こった時に呼吸を回復させるナロキソンという薬の他に、注射用のシリンジや注射針、手袋(非ラテックス)など、注射に必要な道具が一式揃っており、基本的にこのキットがあればODから命を救う事が出来ます。身近に薬物使用をしている家族や友人がいる方、是非オンラインのトレーニングプログラム(http://www.naloxonetraining.com/training)をご覧になり、緊急事態の対応に備えてください。THNを入手できる場所については、Toward The Heartというハームリダクション・プロジェクトのウェブサイト(http://towardtheheart.com/site-finder)で調べる事ができますが、地域の薬局も近いうちにこのリストに加わる予定です。

② 薬の供給問題
 今年薬局で、「製造会社が薬を供給できない状態です」と言われた方は、かなり多かったのではないでしょうか。日本人の感覚としては「そんなバカな!」と憤ってしまうのも無理はありませんが、こればかりは怒ってもどうにもなりません。ある日突然、製薬会社からの薬の供給が止まってしまうという状況が、カナダでは継続的に起こっているためです。この状態を英語で「manufacture short」や、「back order」と呼び、薬局としては、毎日のように同じ薬を注文して入荷を待つことになります。一向に供給再開の兆しがみられず、薬剤師としてもヤキモキすることは日常茶飯事ですが、患者さんには服薬を継続して頂くために、あの手この手を使って薬を用意します。例えば、ブランドの変更は代表的な手段で、いくつかの製薬会社が同じ薬を製造している場合、Aというメーカーの薬から、Bというメーカーの薬に変更します。その他にも、錠剤やカプセルの規格の変更を行うこともあります。例えば、ある薬の5mgの錠剤が入手できない場合、10mgの錠剤をお渡しして、一回につき半錠を服用して頂くといった具合です。あまりの多くの薬について供給問題が持ち上がるため、薬局としても非常に頭を悩ませる状況が続いていますが、最終的には数週間から数ヶ月後には供給が再開するのが通常の流れです。服用中の薬の供給が止まってしまったら、頻繁に薬局に連絡を取って、薬の入荷状況を確認することをお勧めします。

③新商品
 年末にかけて、明るいニュースもあります。去る10月に、新しい帯状疱疹ワクチンShingrix®がカナダで承認されました。従来のZostavax ®は、病原体となるウイルスの毒性を弱めた生ワクチンであるため、既往疾患や服用薬によっては接種を受けられない方もいました。しかし、Shingrix®は病原体となるウイルスの感染する能力を失わせた不活化ワクチンであるため、より幅広く接種を受けて頂く事ができます。投与スケジュールや値段等については、ワクチンが正式に販売された時に本欄でアップデートしていきたいと思います。

 さて、今年も無事に12月まで連載を続けることができました。沢山の応援を頂きましたことに、心より感謝申し上げます。12月のこの時期は、クリスマスパーティーやクリスマスショッピング、また日本人家庭の場合はお正月の準備と、多忙になりがちです。どうか風邪などひかれませんよう、ご自愛ください。そしてまた来年、この紙面でお会いしましょう。それでは良いお年を。

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

 

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