2020年1月16日 第3号

 皆様、新年明けましておめでとうございます。私事ですが、昨年は色々なことがありました。妻は、一昨年の暮れから日本の家族の遠隔介護をしているため、日本とカナダを行ったり来たり。その一方で私は、昨年5月からマネージャー職を拝命したので、残業代のつかない時間外労働は当たり前となってしまいました。日本で働き方改革が進んでいくのとは対照的に、早朝から仕事に行ったりしていたので、妻の小言は止まりません。そんな中でも、本コラムはもとより、健康セミナー等においても頑張っていきたいと思いますので、今年もどうか宜しくお願い申し上げます。  

 さて、新年を迎えた薬局では毎年恒例のことではありますが、公的保険や民間保険、ひいては薬の料金全体について説明を求められることが多くなっています。私は薬代を払わなくても良いはず!と言い張る患者さんの多くは、薬剤費保険の基本的なシステムを理解されていないことがほとんどですので、今一度、お薬代の保険についておさらいしたいと思います。 

MSPは薬代を負担しない

 今年からプレミアムが撤廃されたBC州の公的医療保険(Medical Service Plan、通称MSP)ですが、こちらはドクターの診察を受けたり、検査、手術等の際に発生する医療費を負担するものです。MSPは、一銭たりとも薬代を負担するものではありませんので、この点をよくご理解ください。では、どのような保険が薬代を負担しうるかというと、一般的にはファーマケア(Pharmacare)と呼ばれるBC州の保険、もう一つがエクステンディド・ケアと総称される民間保険です。代表的な民間保険会社としてPacific Blue Cross、Sunlife、Great West Life、Green Shield、Desjardinsといった会社が挙げられ、こちらは雇用主が従業員のために加入する場合がほとんどです。

フェア・ファーマケアに加入していないとどうなるの?

 BC州の公的保険であるファーマケアは、州政府の薬剤費保険部門の名前にすぎません。つまり、ファーマケアという名のもとに、幾つもの異なるプランが設定されています。このうち、BC州民であれば誰もが加入するべきプランが、「フェア・ファーマケア」と呼ばれるものです。このプランは、任意に加入するものなので、そもそも薬を飲まない人、薬の数が少ない人、ただ単に加入作業をするのが面倒な人の場合、フェア・ファーマケアには加入していないカナダ人は沢山います。フェア・ファーマケアに加入しないとどうなるかといえば、お薬代は常に全額自己負担となります。

フェア・ファーマケアに加入するとどうなるの?

 だったら、フェア・ファーマケアに加入した方が良さそうだと思いますよね。一応「保険」なんですから。明日急に心臓発作やガンになって、手術をしたら、高額のお薬が処方されるかもしれません。そのような時に備えて準備しておくのが保険というものです。ただ、フェア・ファーマケアは、加入したからといって、お金を払う必要がありません。つまり、「フェア・ファーマケアに加入するのはタダ!」なんです。これまで、フェア・ファーマケアに加入手続きをしたことがない、あるいはフェア・ファーマケアに加入したかどうかが不明という方、インターネット(https://www2.gov.bc.ca/gov/content/health/health-drug-coverage/pharmacare-for-bc-residents/who-we-cover/fair-pharmacare-plan/register-for-fair-pharmacare)か電話(Lower Mainland 604-683-7151、 BC州のその他の地域1-800-663-7100)で手続き・問い合わせができますので、こちらで是非トライしてください。

 「過去に加入手続きをしたはずなのに、薬局でファーマケアに加入手続きをしてくださいと言われました」という人もたまにいます。過去の加入登録が解除されている人の場合、インカムタックスリターン(カナダでは全ての個人が行う確定申告)が滞っていることがほとんどです。それというのもフェア・ファーマケアは、Canada Revenue Agencyと連係することで、収入に基づいた免責金額(保険による支払いを受けるまでの自己負担額)を決定します。従って、過去のインカムタックスリターンを行い、ファーマケアにその旨を報告することで、フェア・ファーマケアの登録をアクティブな状態に戻すことができます。指摘を受けた方は、早い段階でこの手続きを行うようにしてください。この状態を放置すると、どんなにお薬代を払っても免責金額に到達することはなく、ずっと全額自己負担となります。

 お薬の保険の話は次回も続きます。 

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。