2017年1月19日 第3号

 バンクーバー新報読者の皆様、明けましておめでとうございます。本年もどうか宜しくお願い申し上げます。

 新たな年を迎え、〇キロ体重を減らそう!といった目標を立てられた方も多いかもしれません。私の薬局でも、特に年始めにはお客様の強い健康志向が伺えます。多くの人が禁煙を始め、何らかの運動をし、また各種サプリメントを服用することで良好な健康状態の維持に取り組みます。実際薬局の棚を見れば、ビタミンA、B、C、D、E、プロバイオティック、ターメリック、濃縮クランベリー等々、実に様々な商品が並んでいます。しかし人はどのような情報に基づいて、サプリメントを選ぶのでしょう?

 インターネットテクノロジーが発達した現代においては、スマートフォンでちょっと検索すれば、膨大な量の情報が得られます。しかし、検索結果の上位に表示されるからといって、記事内容の信憑性が高いとは限りません。日本では、昨年11月に大手IT企業ディー・エヌ・エー(DeNA)が運営する健康・医療系キュレーション(まとめ)サイト「WELQ(ウェルク)」で、科学的根拠に欠ける記事や無断転用が発覚して大きな話題となりました。

 このサイトの記事は不特定多数のライターによって書かれ、また医療専門職の監修もなかったとのことです。たとえ監修者がいても、専門家によって意見が分かれることは多々あるので、1人ではなく複数の専門家により科学的根拠に基づいて客観的に下された評価が必要です。テレビや新聞を通して、多くの体験談で効果を強調したり、有名人が推薦しているようなサプリメントについては、必ずしも効果があるとは限らず、有害作用の可能性さえもありますので注意が必要です。

 しかし、信頼できる情報源であることを見極めるのが非常に難しいのも確かです。私がお薦めするのは、Canadian Diabetes Association(https://www.diabetes.ca/)やOsteoporosis Canada(https://www.osteoporosis.ca/)といった学会によるウェブサイトです。科学的見地に基づいた情報を提供しており、疾患の薬物治療は通常これら学会のガイドラインに従って行われています。日本語での説明が好まれる場合には、日本の学会の一般向け情報を参考にできます。

 サプリメントの話に戻ると、これは健康を補助するためのものであり、決して薬ではありません。しかし、薬ではないから、いくら摂取しても害や副作用がないという訳でもありません。特定の成分を効率的に摂取するために有効成分が凝縮されているものについては、簡単に過剰摂取につながり危険です。日本の国立健康・栄養研究所情報センターの「健康食品」の安全性・有効性情報のウェブサイト(https://hfnet.nih.go.jp/)では世界各地で報告されたサプリメント摂取による被害情報等が発表されています。

 更に、疾患治療のために服用している薬とサプリメントの相互作用により、本来の薬の効果が減弱または増強することもあります。サプリメントを使用する場合には「どんなものを」、「どれくらいの期間」、「どれだけの量」摂取したのか、把握しておくことが大切です。不明な点があれば、薬剤師に相談するようにしてください。

 「薬膳」、「医食同源」という言葉があるように、食事こそが疾患予防の要です。「和食」はユネスコ無形文化遺産にも登録され、一汁三菜を基本とする食事のスタイルは理想的な栄養バランスと言われています。うま味を上手に使い、動物性油脂の摂取量を減らすことで、日本人の長寿や肥満防止に役立ってきました。今こそ、食生活を見直す良いタイミングかもしれません。

 本連載では、薬局薬剤師としての知識を生かし、科学的根拠に基づいた公正かつ適切な医療情報を提供することを心掛けています。内容は学会指針や医学・薬学文献に基づき、また執筆はボランティアで行っております。ここでの情報が、今年も健康維持の一助になれば幸いです。

 


佐藤厚

新潟県出身。薬剤師(日本・カナダ)。
2008年よりLondon Drugs (Gibsons)勤務。
2014年、旅行医学の国際認定(CTH)を取得し、現在薬局内でトラベルクリニックを担当。
2016年、認定糖尿病指導士(CDE)。

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。