2018年11月29日 第48号

「きのうはもう歴史になり、明日は謎に満ちているが、今日は贈り物なのだよ」

 これはカンフー修行を諦めて麺作りに戻っていこうとするジャイアントパンダのポーを、レッサーパンダのシーフー老師がたしなめる言葉です。「だからプレゼント(英/現在)と今日のことを呼ぶのだ」と老師はポーを勇気づけます。

 全世界で300億円の興行収益を突破した人気アメリカ・アニメ映画『カンフー・パンダ』の1シーン。  忙しい日常にふりまわされて、つい忘れてしまう「“今”が与えてくれる幸せ」の確実さ。落ち着かなくてどこか不安な気持ちを満たすには、過去の思い出をたどったり、未来に夢を描くよりも、今この場所にある 幸せに気づくのが一番の早道なのかもしれません。そんなことを想起させてくれる物語を、千葉県で『食のおうち革命』を目指し、料理教室やお弁当販売の食育の仕事をされているミホさんが作ってくれました。『ルナシー心の旅』を全文でご紹介します。

 

 私はルナシー7歳。沖縄の海の見える山の中でおじいさんとおばあさんと暮らしています。優しいおばあさん。寡黙なおじいさん。太陽さんに起こされて、おばあさんの作るお味噌汁の匂いに包まれて一日が始まります。

 遊び相手は山の樹々たち。お話を運んで来てくれる草花や動物たち。もうすぐ春だね。今日は雨が降るよ。ルナシーは季節を感じ、覚え、お天気がわかるようになりました。

 ある日、毎日毎日見ている海に、あの大きく広がる海へ行ってみたいと思うようになりました。ルナシーのすむ所から海は崖。どうしたら行けるんだろう!?樹々たちに聞きます。「行っておいで」「こっちだよ」「こっちは危ない」時に根っこを引っ掛ける意地悪な木や蔓をおろしてくれる優しい木。あの道、この道。

 転がりながら…辿りつくと、目の前には、どこまでもひろがる白い砂浜。どこまでも広がる青い海。いつも見ている空はまだ遠いけど、目の前には大きな大きな海。優しく包まれる波音。あれ?これって、まるで、おじいさんとおばあさんみたいだ!ルナシーは夢中になって砂浜と波と戯れました。

 陽も傾き、夜が近づいてきました。帰ろう…。来た山道を戻ります。少しするとおじいさんとおばあさんがいました。「黙って行くな…」初めておじいさんがルナシーに声をかけてくれたのです。おばあさんは黙って抱きしめてくれました。海も山も草花たちの優しさも、おじいさんとおばあさんに感じました。

 お家に着くまでの道のりを、ルナシーは沢山沢山おしゃべりしました。樹々たちはざわざわと、おじいさんとおばあさんはただただ黙って聞いてくれました。おしまい。

 

 ノベル・セラピーのワークショップに参加されたミホさんは、物語の中で主人公は何かにおびえている気持ちでいると、設定しました。そしてまっすぐ自分を信じて生きるために、本当に癒してくれる愛を探す旅に出る物語を作られたのです。主人公の女の子ルナシーは、遠くに見えていた海に辿りつき、砂浜や波と戯れているうちに、そこに、いつも共に暮らしているおじいさんとおばあさんを感じます。そしてふたりに迎えにきてもらったことで、深い安心感とやすらぎを手にします。ミホさんはその後、物語を読み返すたびに心があたたかくなって、涙があふれてとまらなくなると言います。

 いま、この瞬間に見えているもの感じていることをまっすぐ受けとめてみると、そこに自分にとってかけがえのない贈り物が見えてきます。それは自分のなかにある不安もためらいも、すっかり消してくれる贈り物。心から楽しみながら、その包みを開けることができるのが、ノベル・セラピーです。あなたも自分への贈り物を開けてみたくはありませんか?

 


Ojha Emu Goto ノベルセラピスト

 日本で雑誌,広告制作者として活躍していたが、98 年にカナダに移民。光の色波動を用いるZenith Omega Healing( ゼニス・オメガ・ヒーリング)のマスターティーチャーヒーラー。月刊ウェブ・マガジン “Cradle Our Sprit! ” www.ojha-angel-vancouver.net / 編集長。しらゆきのゆめ出版代表。

 著書に「アカシック・レコードの扉を開ける〜光の鍵」明窓出版(2010 年)。 ノベル・セラピーのテキストを兼ねた小説集「しらゆきのゆめ」を昨年末出版した。同時に 『しらゆきのゆめ』出版を設立し、バンクーバーの日系社会のみなさまの自費出版をお手伝いさせていただいている。

 今春3月に日本縦断ノベル・セラピーワークショップツアーを行い、現在ノベル・セラピーで誕生した物語を Pod Cast での世界に向けたインターネット配信を準備中。ノベル・セラピーワークショップは随時開催している。自費出版及ノベル・セラピーのお問い合わせはThis email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it. まで。 

 

読者の皆様へ

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