2017年8月3日 第31号

 ブリティッシュ・コロンビア州内陸部で発生している山火事の現状視察のためBC州を訪問していたジャスティン・トルドー首相は8月1日、バンクーバー市を訪れグレゴール・ロバートソン市長と会談した。

 環境問題対策を重視する首相とバンクーバー市長は、トルドー首相が就任して以来、気の合うところを見せていた。しかし、昨年11月にトルドー首相がキンダー・モーガン社のトランスマウンテン・パイプライン拡張工事計画を承認して以降、首相とBC州には微妙な溝が生まれている。

 同パイプライン計画はBC州では反対派が多い。環境活動家や先住民族をはじめ、近隣市町村でも市長らが強く反対している。その一人がロバートソン市長で、今回の会談でパイプライン計画について話し合われるとみられていた。

 しかし会談後、記者団に対応した市長は、パイプライン計画には時間は費やさなかったと明かした。緊急の問題であるオピオイド中毒による死亡者急増への対策や住宅問題、公共交通機関の充実が話題の中心だったと語った。

 パイプライン計画については、BC州NDP政権が対応してくれるので任せるという。自由党前政権は連邦政府が承認した後にパイプライン計画を承認したが、NDPはあらゆる手段を使って阻止すると選挙公約で掲げている。NDPと協力体制にあるグリーン党もパイプライン計画には反対の立場を取っている。

 ロバートソン市長はバンクーバー市長に就任する前は、BC州NDP議員だった。

 

 

2017年8月3日 第31号

 ジャスティン・トルドー首相が7月29日、ブリティッシュ・コロンビア州内陸部の山火事の被災状況視察のため同州レベルストークを訪問した。31日にはウィリアムズ・レイクを訪問。この時にはジョン・ホーガンBC州首相も同行した。

 トルドー首相は、消火活動に当たっている消防士や救助隊、避難所のボランティアなど、山火事の鎮静化と避難住民の手助けをしている人々を労った。

 31日には記者団の質問に答え、連邦政府として州政府と協力し、できる限りの援助を行うと語った。また、国民からの寄付が多く集まっていることに、「カナダ国民の協力を誇りに思う」と語り、さらなる募金を呼びかけた。テキストメッセージで1回10ドルが寄付できるカナダ赤十字への募金方法も紹介。20222番に「BCFIRES」とテキストでメッセージを送ると寄付ができる。

 

 

2017年8月3日 第31号

 ブリティッシュ・コロンビア州で続いている山火事は収束する気配を一向にみせない。7月26日には、これまで避難勧告がされていたウイリアムレイクズ地区で勧告が解除され、避難していた住民は帰宅が許されたが、一方で、新たに避難勧告が発令された地区も出ている。

 8月1日現在、避難勧告対象となっているのは約6千人。これまでに発生した火災数は1840件、消失した家屋は300軒、火災被害は46万ヘクタールと発表されている。今年の山火事が発生してこれまでにかかった費用は1億8800万ドル。

 現在、BC州だけでなく、他州やオーストラリアなどから761人の消防士が加わり、約3700人が138件の山火事消火にあたっている。今週にはさらに、メキシコから108人、アメリカから27人が応援に駆け付ける。人為的要因による新たな火災も発生していることが分かっており、政府や消防署は火の取り扱いにはくれぐれも注意するよう呼びかけている。

 またメトロバンクーバーでは大気質注意警報が延長された。山火事の影響で大気質が低下しているため、注意喚起している。特に、呼吸器官に障害を抱えている人や高齢者、子供、妊婦など、なるべく室内で過ごすよう呼びかけている。

 カナダ気象庁によれば、今週末にかけて気温が例年以上に上昇するとの予報が出されている。できるだけ日陰を選び、水分補給に努めるとともに、ペットへの注意も呼びかけている。

 

 

2017年8月3日 第31号

 ブリティッシュ・コロンビア州クリスティ・クラーク前州首相が7月28日、州議会議員を辞職すると発表した。6月に自由党政権への不信任が決議され、16年間続いた自由党政権が終了、ジョン・ホーガンNDP政権が7月18日の就任式を経て正式に誕生していた。それから10日後の突然の辞職発表だった。

 クラーク党首は、選挙後にはすでに辞職が最善と心の中で思っていたが、発表の時機を見計らっていたとこの日の記者会見で語った。記者会見では、「これが政治家として最後の記者会見」と笑った。

 今後は何も決まっていないという。しばらくは、この日の記者会見に同席した一人息子との時間を過ごしたり、ガーデニングをしたりして過ごしたいと語った。次に何をするかは決めていないが「政治家ではないと思う」と語った。しかし、クラーク党首は時機を見てまた政治に戻って来るだろうとの見方が強い。

 クラーク党首は、1996年に初当選。2001年ゴードン・キャンベル自由党政権が誕生すると、副党首、教育相に就任した。2004年、再選を目指さず一度政界から引退。しかし2005年バンクーバー市長選に出馬し、サム・サリバン氏に候補選で敗れた。2007年からラジオ局でトークショー番組を担当。2010年、キャンベル元州首相がHST導入で州民の不信を買い辞職。2011年の党首選に立候補、党首に就任した。自由党が政権を担当していたことから州首相に就任。キャンベル元州首相の選挙区バンクーバー‐ポイントグレイの補欠選挙で当選した。しかし2013年の選挙では、党は選挙前の劣勢を跳ね除け大勝したが自身は落選した。党首にはとどまったが、議席を持たなかった。そのためケローナ地区で補欠選挙を強制的に行い当選。今年の選挙でもケローナ地区で当選している。

 州首相として、5年連続黒字予算、雇用の拡大、州の好景気を維持したものの、高騰する不動産への対策不足や高額な政党献金制度維持など富裕層を優遇した政策が批判された。また、2013年選挙で州経済の根幹とすると豪語していた液化天然ガス(LNG)産業誘致の失敗や、炭素税率引き上げの凍結、トランスマウンテン・パイプライン拡張事業計画の承認など環境問題対策に消極的だったことも今年の選挙に影響したとみられている。

 自由党は28日間の党首選を行い、9月には新党首を決定する予定になっている。現在のところ、コールマン副党首やトッド・ストーン前運輸相などが立候補するのではとみられている。

 

 

2017年8月3日 第31号

 CBC(カナダ放送協会)は看板ニュース番組「ザ・ナショナル」の新アンカーを8月1日に発表した。

 選ばれたのは、海外からのリポートが多いシニアレポーターのエイドリアン・アースノルト氏、オタワで政治番組「パワー&ポリティクス」を持つローズマリー・バートン氏、バンクーバーのアンカーを務めるアンドリュー・チェン氏、現在バンクーバーからの生番組を担当しているイアン・ハノマンシング氏。トロント、オタワ、バンクーバーを拠点に4人体制で放送する。

 「ザ・ナショナル」は、毎日午後10時から全国で放送されるCBCの看板ニュース番組。これまで30年間ピーター・マンズブリッジ氏が担当していたが、今年7月1日で引退。後任が注目されていた。

 プロデューサーは、時代がデジタル時代へと変化する中、番組も変化する必要があるとし、今後はテレビ放送だけでなく、オンラインでの報道も強化しながら、さまざまな取り組みをしていくと語った。バンクーバーから全国放送番組のアンカーを務めるのは初めて。デジタル時代に入り、より早く正確な情報が求められる中、時差を有効に使うとみられている。

 新体制は11月6日から始まる予定になっている。

 

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。