2019年8月29日 第35号

 キャサリン・マッケナ環境・気候変動相は26日、カナダ政府として炭素税の上限を引き上げる予定は今のところないとの見解を改めて示した。

 これは全国紙グローバル&メールが25日付で掲載したマッケナ環境相へのインタビュー記事の中で、炭素税の上限としている1トンに付き50ドルから引き上げる場合は、州政府、準州政府の意向を確認してからになると発言したことに対する説明だった。全国的な炭素税を2019年に1トンに付き20ドルから導入した自由党政権は、毎年10ドル引き上げ50ドルを上限とするとしていた。2022年に上限に達する。そして今年6月にはこれ以上の引き上げは予定していないとマッケナ環境相自身が明言していた。

 しかしグローバルに掲載された記事で、それ以上の可能性があることを示唆したため、25日に保守党ピエール・ポリヴァー議員が、自由党は今年の選挙で政権継続を実現した後に引き上げを目論んでいると批判。選挙前には得票のために税金をばら撒き、選挙が終わった途端に国民から税を絞り取る計画だと激しく非難した。

 これに対しマッケナ環境相は、「ピエール・ポリヴァーはダグ・フォード(オンタリオ州首相)やアンドリュー・シェア(連邦保守党党首)と一緒で、我々が気候変動に対して行動を起こさなければならないということを理解していない」と反撃した。

 環境問題は10月の総選挙の争点の一つで、国民の関心も高い。特にミレニアといわれる20代から30代半ばまでの若者にとって環境問題への取り組みは投票を左右する争点とみられている。そのミレニアの大きな支持を得て自由党は2015年に大勝したという経緯がある。

 さらに、総選挙の激戦州とされるケベック州では環境問題への関心がどこよりも高い。2015年の選挙まで環境問題への取り組みに躊躇していた保守党でさえ、ここ最近のグリーン党への支持率の上昇などを目の当たりにして、環境問題に真剣に取り組む姿勢を見せている。

 ポリヴァー議員は、保守党は企業に対して持続可能な基準を順守させ、グリーンテクノロジーへの投資を奨励することで環境への取り組みに参加するよう促していくと語っている。ただ保守党は政権を取れば炭素税を廃止すると約束している。

 

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