2018年9月6日 第36号

 アルバータ州政府レイチェル・ノッテリー州首相は8月30日、同日の連邦上告裁判所の判決を受け、アルバータ州がカナダ環境対策計画から撤退することも辞さない強い姿勢を示した。

 アルバータ州はカナダ自由党政権が進める環境対策計画に賛同し、2017年1月から炭素税を導入している。カナダにはオイルサンド事業をはじめとする天然資源産業が多いアルバータ州で炭素税を導入することで、カナダ環境対策計画が成功するとの認識がある。天然資源産業はカナダ経済にとって最も重要な産業の一つ。そのため、アルバータ州の炭素税への参加が、連邦政府が進める環境対策計画成功のカギとして、連邦政府はアルバータ州が炭素税導入を約束することでトランスマウンテン・パイプライン拡張計画を承認したという背景がある。

 しかし、今回の判決で裁判所はカナダエネルギー委員会(NEB)の判断に欠陥があったとして、トランスマウンテン・パイプライン拡張計画の承認を無効化した。NEBはタンカー航行による海洋汚染の影響と、パイプライン建設地域に関係する先住民族への説明責任と懸念への取り組みを怠ったことを判決の理由に挙げた。

 ノッテリー州首相は30日、「アルバータ州民は怒っている。私も怒っている。アルバータは正しいことを全てやってきた。それなのに裏切られた」と生中継会見で語った。州首相はジャスティン・トルドー首相と電話で会談し、すぐに上訴するよう要求したと語り、パイプライン建設に向けた対策を取るように訴えたと語った。

 そしてアルバータ州は現在導入している炭素税について1トン当たり40ドルまで引き上げられた時点で、カナダ政府の環境対策計画から撤退すると強い口調で語った。連邦政府の環境対策はアルバータ抜きでは、ただの紙切れ同然とアルバータ州の重要性を強調した。

 炭素税は2022年に1トン50ドルまで引き上げられるが、40ドルまで引き上げられるのは早くても2年後。ノッテリー州首相はパイプライン建設が確約されるまでは、連邦環境対策に参加するつもりはないと語った。

 連邦政府は今回の判決について精査して対応すると語ったものの、詳細は発表していない。ビル・モルノー財相は、パイプラインは必ず完成すると繰り返した。連邦政府は今年5月にトランスマウンテン・パイプラインを45億ドルで買収すると発表。判決が出される30分前には、パイプラインを所有するキンダーモーガン社の株主集会で、カナダ政府への売却が99パーセントの賛成を得て承認された。

 

 

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