2016年11月3日 第45号

 連邦政府ビル・モルノー財務相は11月1日、財政政策最新改定案を国会に提出。今年3月に発表した予算案よりも赤字額が膨張する内容となった。

 今回の報告では今年度(2016― 17年度)の赤字額は251億ドルと予測。3月の予算案では294億ドルとしていたため減少しているように見えるが、実際には60億ドルの準備金を使用した後の数字であり、事実上は赤字額が膨らんだといえる。ただ、2021―22年度には146億ドルに減少すると予測している。赤字予算の解消時期についてモルノー財相は明言を避けた。しかし、負債額はこの先5年で3月に予測したよりも318億ドル増額すると報告している。

 負債額が増加すると予測するも、負債対GDP(国内総生産)比は、今年度の31・8パーセントから2021―22年度には30・4パーセントにやや改善すると予測している。

 今回、最も注目を集めたのは経済刺激策として、2017年から2028年までにインフラ整備費810億ドルを追加したこと。公共交通機関、環境対策インフラ、港湾整備などの貿易インフラ、住宅・チャイルドケアセンター・レクリエーションセンター建設から僻地のインターネットインフラ、そしてカナダインフラ銀行、インベスト・イン・カナダのハブセンター創設までを含んでいる。

 自由党政権は2017年にカナダインフラ銀行創設の法案を提出するとして、国内のインフラプロジェクトを金融面で支援するのが目的としている。

 インベスト・イン・カナダは2億1800万ドルを費やして創設する予定で、海外からの投資先としてのカナダを売り込む役割を果たすとしている。

 その他、国内企業の要望に応じて労働ビザの発給を迅速化することや国会財政調査官(PBO)に完全独立的権限を与えることなどが盛り込まれた。

 モルノー財相は「今回は長期的視野に立った内容となっている」と記者団に語り、カナダ経済にとってはまだ厳しい状況が続くと語った。

 野党保守党ローナ・アンブローズ暫定党首は、経済刺激策は減税を基本とするもので何十億と費やして行うものではないと批判。これではいつ均衡予算に戻れるのか分からないとし、「税金を使うだけ使って、借金を増やすだけという財政に懸念を抱く」と語った。

 新民主党(NDP)トーマス・マルケア党首は、インフラ銀行創設について国民を裏切る行為と批判。国民にとって重要なインフラを民営化することになり、最終的には橋や高速道路などが有料化されることにつながると語った。

 

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