ブリティッシュ・コロンビア州のビクトリア大学は、「不正義の光景」と題した、第二次大戦中にカナダ政府が行った、日系カナダ人の財産没収について大規模な調査研究を行っている。

 このプロジェクトの主要パートナーを務める同州バーナビーの日系文化センター・博物館は先日、そのための資料となる、戦前に製材業で巨額の富を築いたエイキチ・カゲツの遺産を、その子孫から譲り受けた。

 エイキチ・カゲツが来加したのは1906年。最盛期には自社の鉄道路線や従業員のための町、牡蛎の事業も所有していた。本社事務所をバンクーバーダウンタウンに構え、自宅をバンクーバーのケリスデール地区に持つとともに、避暑用の家もウェストバンクーバーに所有していた。またバンクーバー島ファニー・ベイ近くのディープ・ベイでは、材木切り出し業も行っていた。

 さらに日系カナダ人協会の会長職を10年にわたって務め、皇室関係者など日本からの要人が当地を訪れた際には、その応対にも当たっていた。

 そんな彼が所有していた資産は、1943年にカナダ政府に没収・払い下げされた時点で現在の値段で約8百万ドルの価値があったと見積もられている。

 そんなエイキチ・カゲツの末息子ジョンさんの未亡人(アメリカ南部在住)のもとを、昨年秋に日系文化センター・博物館館長シェリー・カジワラさんと、同博物館資料収集記録研究員リンダ・カワモト・リードさんが訪れた。その目的は、カゲツ家の歴史を後世のために保管するという、未亡人との約束を果たすためだった。

 カジワラさんらは未亡人から、日記や写真、木炭画のほか当時の名刺、豪華な装丁がなされた本や布地など、重さにして90キログラム以上の遺品を譲り受けた。

 これだけの資料が、いまだに保存されていただけでも驚きだとカジワラさんは語る。またビクトリア大学の歴史学を教えるジョーダン・スタンガー=ロスさんも、この資料から移民の生活や直面した困難、またバンクーバー島での労働状況がわかるほか、事業において稀有の成功を収めた移民の努力の全てを、この国の人種差別が葬り去っていく様子を知るための貴重な資料になると説明している。

 今回のプロジェクトは、社会・人文学研究所からの資金援助を受け、ビクトリア大学が15の団体の協力を得て7年計画で行っている。その目的は、日系人に対するカナダの人種差別の歴史を掘り起こし、これからのこの国の民主主義の健全な発展に役立てようというもの。

 そのハイライトは、2021年に予定されている、カナダ各地を巡って開催される調査研究結果の展示会。さらにこのプロジェクトでは、学校教材のほかウェブサイトや関連書籍の出版なども予定している。

 

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