アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルスで2月28日行われた第88回アカデミー賞授賞式で、パキスタン系カナダ人監督による映画が、短編ドキュメンタリー映画賞を受賞した。

 カナダとパキスタンの国籍を持つシャーミーン・オベイド=シノイさん(37歳)の作品『川の中の少女―許しの代償(A Girl in the River: The Price of Forgiveness)』は、パキスタンで実際に起こった名誉殺人(家族の尊厳を維持するために、容認されている殺人)を題材にした40分のドキュメンタリー映画。

 18歳になる主人公の少女サバは、両親の反対を押し切って恋に落ちた青年と結婚、青年の実家で暮らし始める。しかしサバの父親とおじは彼女を誘拐、川岸へ連れ去りそこで頭部を撃った後、袋詰めにして川へ投げ込む。奇跡的に救助され一命を取りとめたサバは、再び青年と暮らし始めるが、父とおじを許さないサバに対し、訴えを取り下げ、二人を公式に『許す』よう圧力がかけられる…。

 受賞後の取材でオベイド=シノイさんは、自分にとって最大の賞は、私が訴えたかった問題に対して世界中から注目が集まり、これからも注目され続けていくことだと答えている。また、パキスタンで同じ日、名誉殺人を犯した二人に対し有罪判決が言い渡されたニュースを紹介、この凶悪な風習にも取締りが始まっていると付け加えた。

 またジャスティン・トルドー首相からもツイッターで彼女に祝辞が送られたほか、パキスタンのムハマンド・ナワーズ・シャリーフ首相も、イスラム教には名誉の名において許される殺人など存在しないとコメントを発表。また、政府はこれを禁止する法律を準備中だと明らかにしている。

 人権団体の推計によると、パキスタンでは毎年およそ千人の女性が『家族に恥をかかせた』という理由で殺されているという。しかしイスラム教の規定により、被害者の家族からの許しがあれば罪を免れることができる。

 現在は、パキスタンのカラチ在住のオベイド=シノイさんは、2004年から2015年までトロントで暮らしていた。カナダは彼女の映画作製に大きな影響を与えたと、本人は語っている。カナダの一貫した人権主義と、最近の難民問題の対応に敬意を表しているとオベイド=シノイさん。自分にとってカナダの最大の魅力は、その多様性―自分が何者にもなることができ、世界中のどこから来ようが、カナダ人となることができ、また多様なカナダを構成する一部になれるということ―だと、彼女は話している。

 なお、『川の中の少女―許しの代償』は7日午後9時(東部時間)、HBOカナダで放映予定。

 

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