2011年09月22日 第38号 掲載

古くから「リトルイタリアン街」として知られるバンクーバー市コマーシャル・ドライブ沿い。今は、イタリアンばかりではなくアフリカ、中南米、アジアなどのさまざまな民族の文化が入り混じり、独特の街の様子を作り上げている。今、ここに「和」のテイストを引っさげ、この民族のるつぼに飛び込み、新発想の食文化を創り上げようとする男がいる。その名はレストラン「W a k a b a」の店主、K . N i c k 上田氏。その心意気を聞いた。

アーティスティックな街に、アートがあふれる店内

コマーシャルDr. に、新発想の和風レストランを出店した

K.Nick上田氏

人種のるつぼには、さまざまな食文化と「うまさ!」があるが、その評価は決して一様ではない。  そんな中で、どんな味を「売り」にするか…上田氏は「これからお客様とともに創り上げてゆく…和テイストをベースに、お客様の舌とキャッチボールをしながら、オリジナルな料理と味を追求したい」と言う。従って、オープン時のメニューもいたってシン プル。これに、足し算、引き算をしながら創り上げ、また、壊し、また、創る。  そんな創作の場に、このコマーシャルDr. は打って付け。挑戦のしがいのある街なのである。  この街に古くからある多くのイタリアレストランは、グルメたちに定評がある。その舌にもこたえ、さらに新しい顧客をひきつけていくための秘策…マーケティング・プランは、上田氏の経歴からも確信が持てる。  料理に限らずあらゆる分野で、さまざまなニーズに柔軟に対応できる技術、懐の深さは、多様な経験と技量の裏打ちなくしては語れない。  上田氏は、20 数年前、BC州バーナビー市のメトロタウンで寿司バーの先駆けとなるビジネスを始めた。『巻物』を中心にしていたため、学生やビジネスマンにその手軽さがウケた。マーケットにフィットした。当然のように次々と同種の店ができた。すると、上田氏は、まったく違うさまざまな分野へと転進して行った。食品では食肉のさばきも目利きも経験した。物流やホテル、レストラン、大手流通業での経験もつんだ。このなかで、多彩な分野の料理の腕を磨き、何より、料理のマーケティングを学んだ。  その集大成が、この新店にある。「一部の人ではなく、幅広い顧客を獲得するための商品政策=料理をファーストフードに近いシンプルなものにした。しかし、味はグルメの舌にもこたえるもの…が基本的な考え方」と言う。ともすると、料理人は孤高の世界に入り、マーケットと乖かいり離することがある。料理の技術とマーケッティング技術の融合が、繁盛店の必須。上田氏の言う「お客様の舌とキャッチボールをしながら…」という考え方が、まさにそれではないだろうか。  最後に、改めて意気込みを聞くと、「実に平凡ですが、人徳、信用。常に初心、若葉マークです。だから、店のシンボルマークも若葉マークにしました」と、いたって謙虚に話す上田氏の胸の内の熱き思いを感じずにはいられなかった。
(取材 笹川守)

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