Dr. ワイズ(Brian L. Weiss, M.D.)の前世療法
―7月、バンクーバーの講義に参加して― (3)
ウィンザー原田直子

7月27日、前世療法についての多くの著書・翻訳書で、日本人の間でもよく知られているDr. ワイズ(註1)が、バンクーバーにて一般の人々対象の前世療法の講義と催眠の実習をされた。私自身は、ニューヨークで、2011年に初級コース、2012年に上級コースの前世療法のトレーニング・ワークショップ(註2)を受けているが、ここバンクーバーで講義を聞けることをとても楽しみに、何人かの友人たちと、そして夫も誘い、参加した。会場のバンクーバー・コンベンション・センターは、1200名の参加者で埋め尽くされた。

 

V 愛
—与えること受け取ること—

 ワイス博士はキューブラー・ロス博士(註)の生前、「愛」について、語り合う機会があり、その折、彼女は母親の思い出を語ってくれた。
 彼女の母親は、非常に独立心が強く、活動的でハイキングなど運動を好む活発な女性で、かつ人の世話が大好きで、常に自分のことは後回しにしてまで、周囲の人に尽くし、いつも与える人であった。ところが、晩年脳溢血を患い半身不随となり、トイレにも介助がないと行けない状態になった。 その死の2カ月前にはロス博士に密かに、自分が植物状態になったら薬で安楽死をさせてほしいと頼んだほど、本人は人に世話をしてもらうことを本当に恥じていた(勿論、ロス博士は母の依頼を強く断ったのだが)。彼女は人の世話をすることが当たり前で、自分が世話をしてもらうなどまったく論外で、その状態は彼女のプライドや信念を傷つけたように見えた。結局4年間、その不自由な身体で人の介護を受け、母親は亡くなった。
 しかしその後も、ロス博士は絶えず母親の晩年について常にどうすべきだったのか、答えが見つからぬまま、時間を過ごしていた。ある日、いつものように瞑想をしていたとき、突然母親が目の前に現れ、驚く彼女に聞くことには、「あなたはなぜ、そんなに腹を立てているの?」と。ロス博士は、母のようにあんなに人に与えることばかりして優しかった母が、なぜ晩年には人の助けなしには生活が送れないような悲惨な状態にさせられたのか、母の奉仕の結果が、このような人生からのとんでもない仕打ちだとしたら、人生はフェアではない、そのことに深い哀しみと怒りを覚えているのだと。
 すると、母親が言うには、私は常に人に与えることのみに心を砕き、人から受け取ることをしてこなかった。だから、身体が不自由になったことで、やっと人からの恵を受け取る機会を与えられた、逆に人々は母親を助けることで、人に与える機会を得られることになったと。
 母は静かにロス博士に語りかけた。「これは私にとって『Gift of Grace(恵み、恩寵)』でした。この世に次にまた生まれ変って再び同じレッスンを繰り返さないために、この世で自分のレッスンを終結させるための学びなのです。愛とはバランスで、この世は与えることと受け取ることのバランスで成り立っています。私は、周囲の助けを恥だと思っていたのです。素直にそこから愛をもらい、感謝することを忘れていました。この状況は愛のバランスを取るためのレッスンでした」この言葉を聴いて、ロス博士は長く抱いていた自分の「怒り」を解き放つことができたのだった。
 
 無償の愛に触れるチャンスが来たとき感謝すること、愛はこのように、自己満足でもなく、一方通行でもない、ということを学ぶことでもあるのです。幾つかの実習で皆さんが感じたように、心を開いたとき、私たちは皆、ひとつの存在なのだと実感できます。この会場で、目に見える身体は1000以上ですが、目に見えない魂は一つなのです。そのとき、与えることと、受け取ることは、同じことになり、分離してはいません。価値の贈り手と受け手の分離はほとんど無いに等しくなるのです。こうしたこと、ここで学ばれたことを、是非皆さんの周囲の人に伝えてください、愛を持って接してくださいと、ワイス博士は締めくくった。

(註)エリザベス・キューブラー・ロス博士(Dr. Elisabeth Kubler-Ross、1926—2004) スイス生まれのアメリカの精神科医。医師として勤務していた病院で、死を迎えた患者の悲惨な扱われ方に大きな衝撃を受け、それまで医療現場ではタブーとされ、扱われることのなかった「人の死と死ぬこと」に初めて正面から取り組んだ。死にゆく患者の魂との対話を通じて、死のみならず、後に死後の世界にも関心を持ち、医療の世界のみならず、一般の人々の間にセンセーションを巻き起こした、現在のターミナル・ケア(終末期医療)の先駆者。画期的な著作「死ぬ瞬間」他、多数の著書がある。

著書 
・On Death and Dying, (Simon & Schuster/Touchstone),1969  (『死ぬ瞬間』川口正吉訳 読売新聞社 1971年/『死ぬ瞬間』鈴木晶訳 読売新聞社 1998年、中公文庫 2001年)
・Death is of Vital Importance, (Out of Print- Now "The Tunnel and the Light") 1995 Unfolding(『「死ぬ瞬間」と臨死体験』鈴木晶訳 読売新聞社 1997年 ※改題『「死ぬ瞬間」と死後の生』 中公文庫、2001年)など、多数。

註1:Dr. ワイズ(Brian Weiss, M.D.):精神科医。イエール大学医学部卒。FL州マウントサイナイ病院の精神科部長兼マイアミ大学医学部精神科の教授を勤め、西洋医学の正統的精神医学の主流を歩んでいた。ところが、ある日、長く重篤な不安障害を患い、何人もの精神科医、治療者によっても治癒できなかったクライエントがDr. ワイズを訪れる。そして催眠療法によって、彼女はDr. ワイズ自身も全く予想だにしなかった前世を語り始め、その結果重篤な症状が完治してゆく。これまでの現代の科学・医学では説明できないその事実がDr. ワイズの精神科医としての伝統的な考えを大きく転換することになる。多数の前世療法につしての本を出版、現在はクリニックでの診療を離れ、前世療法のワークショップを世界各国で行っている。 www.brianweiss.com

著書:
・Brian L. Weiss, M.D., “Many Lives, Many Masters”, Fireside, 1988
(『前世療法―米国精神科医が体験した輪廻転生の神秘』山川 紘矢、山川 亜希子訳、PHP文庫 1996)
・Brian L. Weiss, M.D., “Through Time into Healing”, Fireside, 1992
(『前世療法2 ― 米国精神科医が挑んだ、時を越えたいやし』山川 紘矢、山川 亜希子訳、PHP文庫 1997)
・Same Soul, Many Bodies: Discover the Healing Power of Future Lives through Progression Therapy (2005).
・Miracles Happen: The Transformational Healing Power of Past Life Memories (2012)など、多数。

駐2:Dr. ワイズの前世療法のワークショップの報告は、「私にとっての前世療法」の題で、バンクーバー新報(2011年10月 20日~2012年3月8日)において、9回にわたり掲載したので、それをご参照下さい。

プロフィール:
Dr. Naoko Harada Winther, R.C.C.
東京医科歯科大学医学部において、精神医学の研究で医学博士号取得。
アメリカ、カナダで、従来のカウンセリングの方法を超える、Three
In One, BodyTalk, などのApplied Kinesiology(筋反射テスト)に加え、
Quantum-Touch などのエネルギーワーク、そしてDr. Weiss による前世療法
のトレーニングを受ける。<心と身体と魂>の統合をめざす新しい心理療
法を目指している。BC 州公認クリニカルカウンセラー、Broadway にカウンセリング・オフィスを持つ。

読者の皆様へ

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