Dr. ワイズ(Brian L. Weiss, M.D.)の前世療法
―7月、バンクーバーの講義に参加して― (2)
ウィンザー原田直子

7月27日、前世療法についての多くの著書・翻訳書で、日本人の間でもよく知られているDr. ワイズ(註1)が、バンクーバーにて一般の人々対象の前世療法の講義と催眠の実習をされた。私自身は、ニューヨークで、2011年に初級コース、2012年に上級コースの前世療法のトレーニング・ワークショップ(註2)を受けているが、ここバンクーバーで講義を聞けることをとても楽しみに、何人かの友人たちと、そして夫も誘い、参加した。会場のバンクーバー・コンベンション・センターは、1200名の参加者で埋め尽くされた。

 

II 実習
 レクチャーの間を縫って、会場の参加者全員に対して、2回の前世療法への退行セッションを含め、4つのエクササイズが行われた。
 その一つが、見知らぬ隣の席の人とお互いに何か大切に見につけているものを、交換し、瞑想しながら、その交換したものに静かに注意を集中すると言うものであった。
 私は、隣に座っていたインド系のカナディアンの女性の琥珀の指輪を交換し、手に持ち、瞑想に入った。と、いきなり、大きな麦の一粒が目の前に現れ、しばらくして消え、その途端に私の左半身が鋭く痛み出し、深呼吸をしながらその痛みと一緒にいると、それも次第に消えてゆき、次に目の前の海辺に、年取って杖をついたグレーの髪の女性が現れ、心配そうに近づいてきて、私なのか、手の中の指輪なのかはっきりしないのだけれど、大きく抱きしめてくれて、去っていく。しかし、また心配そうな顔をしてまた再び戻ってきて、同じように抱きしめてまた去っていく。それが何回か繰り返された後、突然、沢山の麻の袋が並ぶ倉庫が見え、その倉庫の中は夕日のオレンジの光で明るく輝いている。その一つの麻袋の奥底に、光る琥珀の指輪が入っていて、それが突然まばゆい光とともに螺旋を描きながら、宙に飛んでいってしまった。
 瞑想の時間が終わって、その情報を隣の彼女に伝えたところ、少し驚きながら「それは8年前に亡くなった私の母だと思う。母は、晩年脳溢血で倒れ、半身の強い痛みを訴えていたから。‥‥わたしは末っ子で母にとても可愛がられ、強い結びつきがあったので、母の死をまだ受け入れられない、母のことを考えるといまだに本当に悲しく、寂しい。母は、死ぬ間際まで私のことを本当に心配していたから、それで、きっと何度も母のイメージが出てきたのかも」「でも、麦の粒とか、倉庫とかは、何でしょうね、ぴんと来ない」と、でもどこか腑に落ちない様子で語ってくれた。
 しかし、一日のレクチャーが終了し、会場の参加者それぞれが立ち上がり帰りかけたとき、彼女が突然驚いたような表情で駆け寄ってきて、「思い出した!母はインドのパンジャブ地方で生まれ育ったの。パンジャブは有名な麦の穀倉地帯で、母の生まれた家にも大きな倉庫があったと聞いている。母の指輪はそこに帰っていったのね。今ここで、母が傍に一緒にいてくれていて、いつも私を見守ってくれていることが本当に実感できました。本当にありがとう、本当にありがとう」と涙を流しながら、長く長く、ずっと私を強く抱きしめてくれた‥‥その暖かい余韻は今でも、私の身体に残っている。

III 新しい考えを受け入れる 

 これもやはり、マイアミでクリニックを開業していた当時、講演会でクリーブランドから来たというクリスチャンの女性が、「催眠は原罪である」とワイス博士を糾弾した。ワイス博士が「クリスチャンの言う原罪とは何ですか?」と問うと、彼女は「ジーザス・クライストがそう言った」と。「ええ?!でも催眠療法は18世紀、ルイ16世の時代に活躍したにウィーン出身の医師メスメル(Franz Anton Mesmer)によって初めて行われたもので、イエス・キリストの生存していた紀元前にはまだなかったんですよ」と言っても、「イエス・キリストが原罪と言っている」と譲らない。そこでワイス博士が「不眠やうつ状態、不安を抱えた多くの尼僧や神父が司教から紹介を受け、マイアミの私のクリニックに治療に訪れている。イエス・キリストが原罪と言っているなら、どうしてマイアミの多くの司教が、彼らを私の催眠療法を受けさせるためにクリニックによこすのでしょうか?」と再び問うと、彼女は「マイアミでは原罪ではないかも知れないが、私の住むクリーブランドでは原罪です!」(会場爆笑)
ここで、ワイス博士のユーモアと駄洒落が発展していって、「そうなると、ここで言う原罪はOriginal Sin(人間の持つ生まれながらの罪)ではなく、実はRegional Sin (場所、地域の罪)のことなんですね~」等と、とぼけて見せる。  
 私たちの考えの狭量さと頑固な歪んだ信念が如何に歴史上、多くの弊害をもたらしてきたかについての彼の解説は、再び独特の諧謔に満ちたユーモアでストーリーを展開し、聴衆を笑いの渦に巻き込んでゆく。

IV 科学と宗教
 そのユーモアは、科学にも及び、ガリレオの地動説の顛末に触れる。古代ローマ時代、ギリシャの天文学者プトレマイオス(Claudius Ptolemy)によって、宇宙の中心に地球があり、太陽その他の惑星が地球の周りを回っているという天動説が唱えられ、その後何世紀にも亘って、その天動説は揺るぐことはなかった。しかし、1630年、イタリアの天文学者ガリレオ(Galileo Galilei)が既存の理論体系やローマ・カソリック教会の権威に盲従することなく、自分の目で確かめ、その自身の実験結果を数式で証明記述することで、天動説を覆し地動説を唱えることとなる。その結果、ローマ教皇庁より異端審問で追及され、軟禁状態での生活という悲惨な晩年を強いられることになる。
 そのガリレオの死の1年後に、ローマ・カソリックから自由であったイギリスにニュートン(Sir Isaac Newton)が生まれ、地球と天体の運動を初めて実験的に示し、太陽系の構造について言及した結果、ガリレオの天動説を科学的な数式で証明することになる。
 ワイス博士はこの事実を述べながら、微笑を交え「これは、もしかしてガリレオがニュートンに生まれ変って、自分がイタリアでできなかった、やり残した自分の課題を証明したのではないのでしょうか?」
 さらにこの地動説には、後日談が続く。1965年にローマ教皇パウロ6世がこの裁判に言及したことを発端に、裁判の見直しが始まりがスタートするが、実際に審査の委員会が組織されたのは1980年である。そして最終的に、1992年、ローマ教皇ヨハネ・パウロ2世が、ガリレオ裁判が誤りであったことを認め、公式にガリレオに謝罪した。それはガリレオの死去から実に350年後のことである。Dr. ワイズはいたずらっぽく、「となると、もしかして、さらにもう一度ガリレオはローマ教皇ヨハネ・パウロ2世に生まれ変って、過去に自分の負わされた咎(テーマ)をクリアにしたのかもしれませんね~」(会場爆笑)
<続く>

註1:Dr. ワイズ(Brian Weiss, M.D.):精神科医。イエール大学医学部卒。FL州マウントサイナイ病院の精神科部長兼マイアミ大学医学部精神科の教授を勤め、西洋医学の正統的精神医学の主流を歩んでいた。ところが、ある日、長く重篤な不安障害を患い、何人もの精神科医、治療者によっても治癒できなかったクライエントがDr. ワイズを訪れる。そして催眠療法によって、彼女はDr. ワイズ自身も全く予想だにしなかった前世を語り始め、その結果重篤な症状が完治してゆく。これまでの現代の科学・医学では説明できないその事実がDr. ワイズの精神科医としての伝統的な考えを大きく転換することになる。多数の前世療法につしての本を出版、現在はクリニックでの診療を離れ、前世療法のワークショップを世界各国で行っている。 www.brianweiss.com

著書:
・Brian L. Weiss, M.D., “Many Lives, Many Masters”, Fireside, 1988
(『前世療法―米国精神科医が体験した輪廻転生の神秘』山川 紘矢、山川 亜希子訳、PHP文庫 1996)
・Brian L. Weiss, M.D., “Through Time into Healing”, Fireside, 1992
(『前世療法2 ― 米国精神科医が挑んだ、時を越えたいやし』山川 紘矢、山川 亜希子訳、PHP文庫 1997)
・Same Soul, Many Bodies: Discover the Healing Power of Future Lives through Progression Therapy (2005).
・Miracles Happen: The Transformational Healing Power of Past Life Memories (2012)など、多数。

駐2:Dr. ワイズの前世療法のワークショップの報告は、「私にとっての前世療法」の題で、バンクーバー新報(2011年10月 20日~2012年3月8日)において、9回にわたり掲載したので、それをご参照下さい。

プロフィール:
Dr. Naoko Harada Winther, R.C.C.
東京医科歯科大学医学部において、精神医学の研究で医学博士号取得。
アメリカ、カナダで、従来のカウンセリングの方法を超える、Three
In One, BodyTalk, などのApplied Kinesiology(筋反射テスト)に加え、
Quantum-Touch などのエネルギーワーク、そしてDr. Weiss による前世療法
のトレーニングを受ける。<心と身体と魂>の統合をめざす新しい心理療
法を目指している。BC 州公認クリニカルカウンセラー、Broadway にカウンセリング・オフィスを持つ。

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。