9月21日、日加ヘルスケア主催の健康講座が「ストレスと向き合おう」をテーマに開催された。講師は田中朝絵医師。西洋医学から見たストレスの正体について、生理学的、医学的見地からの講演に続き、参加者が自由に発言する座談会の2部構成。田中医師の絶妙なリードのもと、ストレスの実態と、それに向き合うヒントを、全員で探り合った3時間であった。
田中医師の誇りの中には「日々の生活をさらに楽しく、ハッピーにするために役立てていただきたい」というメッセージが込められていた。

参加者の声(以下S) 「それはストレスのせい」と一言で片付けられがち。しかし、どうも釈然としない・・・。

病名は、症状や検査によって特定されるものだが、ストレスの正体はつかみどころがない。医学的に、ストレスの要因は四つに大別される。薬害や公害などの「化学的ストレス」、騒音や温・湿度などの不快感による「物理的ストレス」、そして、過労、睡眠不足、ケガ、病気などによる「生理的ストレス」、これらをバックグラウンドにし、さらに、人間関係やネガティブ思考による「精神的ストレス」がある。
化学的、物理的、生理的ストレスは、具体的で顕在化した要因の場合が多いだけに対処法が見出しやすい。問題は、精神的ストレスである。ストレス要因が潜在化している場合が多いために対処法も難しい。そこで、この「心理的ストレス」にフォーカスし、話が進められた。

S「病原菌」でもないストレスが体にどんな変化をもたらすの?

ストレスがあると「アドレナリン」、「ノルアドレナリン」、「グルココーチコイド」というホルモンが血中に入り、全身に回り生理的な変化をもたらすことになる。
症状や引き起こされる病気は「血圧上昇、高血圧症」、「脈拍上昇、不整脈」、「筋肉硬直」、「血行の変化」、「感覚が過敏になる」「食欲過剰、肥満、糖尿病」など。
また、「免疫力の低下によって風邪をひきやすくなる、肝炎、ガンなどにかかりやすくなる」、「疲労、ケガからの回復力の低下」、「記憶力の低下、認知症」、「怒りっぽくなる、うつ病、不安症、自律神経失調症、痛みが過敏になる」、「ホルモンの低下で生理不順、インポテンツ」などを体にもたらす。
ストレスはこのようにさまざまな病気の原因となる。ストレスを軽く見てはいけない。田中医師の経験では、ガンになった人の80%はストレスが隠れた原因だそうだ。

S「ストレスが病気につながる」というのは初めて知った。私の持病、高血圧、糖尿病は、シンドイことが続いた後に発症した。

ストレスになるようなことが、少しずつ積み重なり、慢性化するのがいけない。「ただのストレス」、「自分の精神の弱さだ」、「我慢すればよい」と、特に日本人は我慢を美徳としてきたため、ストレスを甘く見がちだ。しかし、そんなタイプの人は自分の中にストレスをため込んでいく。我慢するより、自分のために何か行動を起こす必要がある。外から来るストレスは仕方がない場合があるが、自分の中で発生することは速やかに発散して蓄積しないようにする必要がある。
医者が診る患者の問題の大半がストレスによって起こっていることを認識してほしい。自分なりのリラックス法を見つけ、ストレスをためないようにしなければならない。

S 私のリラックス法はアロマの香り。なぜか落ち着くんです。

自分の好きなアロマの香りは副交感神経を刺激するといわれる。心を癒して、ストレスを手軽に除けるものを常に身近に置いて利用するのはとても良い方法。
自律神経には、副交感神経と交感神経がある。副交感神経はリラックスさせ、食べ物を消化し、体にエネルギーを与え、回復・修復させる。良い方良い方に考えるポジティブな思考法が副交感神経を刺激する。
一方、交感神経は、危険を感じ、戦う逃げる反応を促す。したがって、脈拍上昇、筋肉硬直、血行の変化、感覚過敏を招くことになる。なんでも最悪の状態に考えがちのネガティブ思考。もちろん、これも生きる上で大事なことだが、両方のバランスを取ってこそ、健康が保たれる。

S 伴侶のことをネガティブに言う人がいるけれども、それは、自分自身をも否定したことになりますね。自分自身だけでなく、周りの人に対してもポジティブに見ることで、結果、楽しく過ごせるように思います。「ほめて伸ばす」教育が注目されています。これもポジティブ思考の考え方ですね。

悪い方悪い方に考える、ネガティブ思考の人は、ストレスをため交感神経を刺激する結果になる。これは、どんどん深みにはまるパターンで、ネガティブ思考のスパイラルだ。病気の引き金になっていく。ともかく、早い段階で、ポジティブ思考に切り替えなくてはならない。そのキーワードは、「怒ったことを認め、受け入れる」、「『なぜ?』をやめる」、「広い目で見る」、「どうにかなる」、「良いところを探す」など、逆転の発想をしてみる。 妻や夫のことで気に触ることがあっても、「ああ、こんないい面もあるな」とポジティブなことを、ともかく無理やりにも思い浮かべるようにする。
また、できないことを指摘するより、できることをほめる、ポジティブにやる気を引き出す教育法は、子供にばかりではなく、会社などの人材育成にも有益な方法だ。

S 考えてみれば、本当はどうでもよいようなことをクヨクヨと考えてストレスをためているように思います。

日常のストレスの大部分は、自分の内側で創り出していることが多い。ストレスは外部から来ることは少ない。自分でコントロールできるものなのだ。
運動でストレスホルモンを使い切る、カラオケで大声を出す、笑い飛ばす、あるいはセラピストに相談してみる。またファミリードクターからも20分間、年4回のカウンセリングを受けることができるので、問い合わせてみるのもいいだろう。
ともかく、まずは自分をケアすること。自分、そして周りを許し、感謝し、愛を送れば、ストレスは溶け去ってしまうのだから。
(取材 笹川守)

日加ヘルスケア協会

日本語を話す、または日本の文化的背景を大切にする人々の心身を、より健康にすることを目指して設立された非営利団体。活動の一部として2005年度より講演会を開催し、西洋医学、東洋医学をはじめとして様々な視点から健康に関する情報を提供し、幅広い知識や健康になるための実践的な方法を共有することで健康の維持増進に貢献していくのが目的。http://nikkahealth.org

田中朝絵医師 プロフィール

BC州医師・ファミリードクター。日加ヘルスケア協会理事長。日本で生まれ8歳でカナダに移住。
SFUで生物学、UBCで生理学を学び医学博士を取得、ダルハウジー大学(ハリファックス)で家庭医の研修を終えBC州内の緊急病棟、ファミリードクターのオフィスに勤務。日本語の話せる医者として日系コミュニティで活発な活動を続けている。

 

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