2019年4月18日 第16号

この夏、バンクーバーで日米加の大学野球チームによるトーナメントが開催される。日本からは東京六大学の東京大学、慶應義塾大学(慶応大学)が参加。カナダはブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)野球部サンダーバーズが、アメリカからはカリフォルニア州立大学サクラメント校野球部ホーネッツが参加する。参加チームは今からすでに気合十分!白熱した試合になること間違いない。 今回はトーナメントを前に主催するUBC野球部ディレクターのテリー・マッケイグ氏と、UBCアメフト部OBでトーナメントを支援するニコラ・マイニングCEOピーター・エスピグ氏に話を聞いた。両氏ともトーナメントの成功には日系コミュニティ、在留邦人コミュニティのサポートが不可欠と語った。

 

横浜スタジアムでのUBC対東京大学の試合(Photo courtesy of Satoshi Aoki of Life14 Photography)

 

日加大学野球で初の試み

 マッケイグ氏は日本の大学野球部がバンクーバーを訪問して試合を行うのは初めての試みと語った。

 自身も大学で野球選手として活躍し、長年UBC野球部のコーチも担当。選手、コーチとして、カナダ代表で国際試合に出場した経験を持つ。そこで国際試合の重要性を肌で感じたと言う。

 「国際試合で、日本、韓国、キューバなどと対戦しました。こうした経験は他では得られない貴重な体験です」と語る。「こうした経験を大学レベルのUBCでもできないかと10年ほど構想を練っていました」と明かした。

 そしてそれが実現したのが昨年。「他国の大学との交流試合が実現するなら、最初は必ず日本の大学とやりたいと思っていました。日本は野球が盛んな国ですし、私が対戦した経験からいっても日本が一番だと思いました」。そして昨年8月東京で、東京大学、慶応大学野球部との親善試合が実現した。

 

日加大学野球交流のきっかけはUBC小野学長

 UBC野球部と日本の大学野球部との交流戦が実現した大きな理由の一つはUBC小野三太学長の存在だったと言う。小野学長は2016年秋に学長に就任。さらなる国際化に力を入れ、世界中の大学との学術交流を促進している。

 その中で、日本との提携、協力も欠かせないと以前に語っていた。日系2世でもある小野学長は個人的にも日本とのつながりが深い。東京大学、慶応大学とは、すでに学術レベルでの交流があり、そこに野球を通しての交流が加わった形だ。マッケイグ氏は、「小野学長が野球交流のドアを開けてくれた」と語った。小野学長は大の野球好きとしても知られているという。

 「UBCと日本の大学との協力関係は、学生や選手が関わることで国際的な経験を高めることに大きな意味があります」と小野学長。「お互いの国を訪問することで世界的な視野を持つ人へと成長してもらうことが我々の願いです。東京大学、慶応大学には、世界トップクラスの学術機関として深い敬意を抱いています。野球を通じた交流がこれらの大学との研究や教育分野でさらなる関係の促進につながればうれしいと思います」とコメントを寄せた。

 

2018年から始まった野球交流、今年はトーナメントでさらに気合が入る!

 日本の大学との野球交流は、昨年の1年目が日本、2年目となる今年はバンクーバーで開催される。

 昨年は8月に日本を訪問。10日間の滞在で6試合を行った。東京大学と2試合、慶応大学と2試合、他の2校とも各1試合。30度を超える真夏の東京で、まずは慶応大学と対戦。2戦2敗も1-3、2-4と、慶応大学の実力を聞いていただけに「まずまずだった」とマッケイグ氏は笑った。

 東京大学との2試合は、第1戦が横浜スタジアムで行われた。これが日本訪問の「ハイライトだった」と笑う。UBC小野学長、東京大学五神真総長が始球式を行い、在日UBC卒業生が集う同窓会も兼ねた楽しい試合となったと話した。

 6試合の対戦成績は3勝2敗1分け。1年目の親善試合としてはまずまずの成績だった。

 しかし今年は少し様相が変わるという。マッケイグ氏は計画当初は、東大、慶大がUBCを訪問し各2試合行う予定だったが、「わざわざ日本から来て親善試合4試合ではもったいない」ということでアメリカNCAAからホーネッツを招待し、4チームでのトーナメント方式に変更。これで「俄然やる気が変わった」と言う。マッケイグ氏は日本の大学とのやりとりでその「本気度」を読み取ったと笑う。エスピグ氏もこの春に慶応大学で野球をやっていた長男の卒業式に出席した時に、野球部の選手から「今年は勝ちに行くよ」と言われたという。トーナメントは4チーム総当たり戦のあと、準決勝、順位決定戦、決勝が行われる。「メダルはあるのか」と聞かれて、「その本気度が分かった」とエスピグ氏も笑った。

 

日系、在留邦人コミュニティの支援が不可欠

 昨年の日本訪問時には、野球だけではなくさまざまな文化イベントにも参加した。夕食会が主催されたり、日本舞踊や書道、慶応大学では「日本とカナダのスポーツ文化の違い」というレクチャーに参加。スポーツだけでなく、お互いの文化を知ることも重要という。

 こうして打ち解けた学生たちはすぐに仲良くなり、若者らしくSNS友達に。試合後には帽子やユニフォームの交換など、貴重な経験となった。

 「昨年は、主催者側が非常によくまとめてくれて、行き届いたもてなしを受けました」とマッケイグ氏。そのため今年8月に日本の選手たちがバンクーバーに滞在する時には、同じように文化交流も含め、そのお返しがしたいと言う。

 そのためには日系コミュニティ、在留邦人コミュニティの支援が不可欠と話す。「野球が大好きな日本の人々に協力をお願いしたいと思っています。試合観戦はもちろん、昼食会やディナーを主催してもらったり、選手たちとの交流機会を作ってもらったり。また企業のスポンサーも募集しています。ぜひコミュニティに協力を得たいと思っています」とマッケイグ氏。エスピグさんも「これは試合だけではなく、野球を通じた日本とカナダの文化交流であり、学校関係者、ビジネスにとってもいい機会だと思います」と語った。

 小野学長は「昨年日本を訪問したUBCの選手たちは物の見方が変わるような素晴らしい経験だったと私に話してくれます。できれば今年バンクーバーを訪問する選手や大学関係者にも同じような素晴らしい経験をしていただきたい」との思いを語る。「バンクーバーの日系コミュニティ、在留邦人コミュニティの多くの人々にトーナメントを観戦してもらいたいと心より願っています。楽しい試合になることは間違いないはずです」。

 野球が昔からバンクーバーで日加の架け橋となる重要な役割を果たしてきたことはよく知られている。バンクーバー朝日が初優勝して今年で100周年。その記念の年に日加の大学野球がまた新たな架け橋となることも何かの縁かもしれない。

 日本の大学2校からは関係者トップも訪問予定という。マッケイグ氏とエスピグ氏は、東大、慶大同窓生、関係者や家族、大学野球ファン、野球ファンなど、野球を通した2国間の文化交流、学術交流、ビジネス交流にぜひ積極的に参加してもらいたいと語った。

 

日米加野球トーナメント2019
開催時期:8月13日(火)〜8月18日(日)
参加チーム:UBCサンダーバーズ、東京大学、慶応大学、CSUSホーネッツ
*チケット販売やトーナメント詳細については後日発表
イベント主催、スポンサー参加についての問い合わせ先
テリー・マッケイグ氏:UBC野球部ディレクター
Eメール:This email address is being protected from spambots. You need JavaScript enabled to view it.
電話:604-822-4720(事務所)

(取材 三島直美)

 

 

日本舞踊に挑戦するUBCの選手たち (Photo courtesy of UBC baseball)

 

UBC対慶応大学の試合の前に両校選手と学校関係者で。慶大長谷山彰塾長(2列目右から6番目)、UBC小野学長(2列目左から6番目)、UBC野球部ディレクター・マッケイグ氏(2列目左から5番目)(Photo courtesy of UBC baseball)

 

UBC対東京大学の試合前に選手と学校関係者で。前列中央に東京大学五神総長、その左がUBC小野学長。横浜スタジアムで(Photo courtesy of Satoshi Aoki of Life14 Photography)

 

主要トーナメント会場となるUBCサンダーバーズ・スタジアム (Photo courtesy of UBC baseball)

 

UBC野球部員とスタッフで日本滞在中に 鎌倉大仏を訪問 (Photo courtesy of UBC baseball)

 

合同練習前にあいさつを交わすUBCと慶応大学野球部選手たち(Photo courtesy of UBC baseball)

 

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。