2018年8月16日 第33号

 8月後半に米国・ニューヨークの国際連合(以下、国連)に赴任する岡井朝子在バンクーバー日本国総領事と夫君の知明氏を見送る日系コミュニティー合同送別会が8月8日にブリティッシュ・コロンビア州バーナビー市の日系センターで開催され、約150人が出席した。

 続いて10日には総領事館主催の離任式が総領事公邸で開かれ、学術、文化、経済・政府・自治体関係者ら約170人が出席した。

 出発前の多忙なスケジュールのなか、開催された送別会・離任式では、出席者が長蛇の列を作り、総領事ご夫妻との名残惜しい挨拶と記念撮影が続いた。

 

 

(左から)送別会実行委員長の岡本裕明さん、岡井朝子総領事、夫君の岡井知明氏、送別会実行委員の五明明子さん。総領事ご夫妻に花束と思い出のスライドショーを入れたCDが贈呈された

 

日系コミュニティー合同送別会

小松和子さんを偲んで

 8月8日の日系コミュニティー合同送別会は、バンクーバー日系経済団体連絡協議会、日系文化団体から日系文化センター・博物館、バンクーバー日本語学校並びに日系人会館、隣組の有志が実行委員会を結成して開催し、連絡を受けた日系コミュニティー諸団体を中心に約150人が出席。司会の大和奈緒美さんが「このたび岡井朝子総領事は国連開発計画危機対応局長に任命され、大変重要なポストに就任されることになりました」とアナウンスし、レセプションがスタートした。

 開会に先立ち、実行委員長の岡本裕明さんが先月27日に亡くなった小松和子さんについて語った。小松さんは日本・カナダ商工会議所の創設者であり、パシフィック・ウエスタン・ブリューイング(PWC)社を経営。カナダのビール業界で、初の女性経営者だった。「小松さんのチャレンジ精神とその功績は、日系社会のみでなくローカル社会にも大きな影響を及ぼしました。バンクーバーの日系社会は大きな指導者を失いました」と述べ、全員で黙とうした。

『ひとつの日系』として開催

 岡井総領事ご夫妻の2年4カ月にわたる日系コミュニティーとの絶え間ない接点が、この日の多くの参加者につながったと述べた岡本さんは「バンクーバーのビジネス系と文化系の団体が実行委員会を結成し、ひとつの日系として会を開催することができました。岡井総領事はユナイテッド・ネーションズ(国連)に移動されます。我々はユナイテッド・コミュニティーズとして新たな時代を迎えました。今後も日系がともに手を結ぶきっかけになればうれしく思います」と述べ、岡井総領事のますますのご発展を祈念した。

 続いて文化団体を代表して五明明子さんが、バンクーバーには長い歴史を持つ日系人社会、戦後の移住者、国際結婚して移住した人、学生、ワーホリなど、さまざまなバックグラウンドを持つ人が大勢住んでおり、日系団体は文化関係だけでも100以上あると説明し「複雑なバンクーバーの日系社会で、岡井総領事は積極的にさまざまなイベントに参加されました。またダウンタウンの総領事館まで足を運べないシニアのために、日系センターで出張サービスを行うことを提案され実行されました」と感謝し、国連本部への赴任にお祝いの言葉を述べた。

総領事館とコミュニティー

 挨拶に立った岡井総領事は、まず始めに小松和子さんの功績を称え、哀悼の言葉を述べた上で、多くの出席者、日系団体をまとめて会を開催した実行委員会に感謝の言葉を述べた。

 バンクーバー着任にあたり、総領事館を親しみやすく、日系コミュニティーのニーズにあったものにすること、日本の魅力を幅広く発信すること、経済関係をさらに拡大するための支援をしていくことの3つを目標としたという。

 「大使館と違い、総領事館はコミュニティーと近いところにおります。何を企画するにしても、協力してくださる皆さまがたがいらしたことをとても心強く思いました。また、外交にはデジタル・ディプロマシーが必要という時代になり、慣れないながらソーシャル・メディア、フェイスブックを始めました。これは今後、非常に大きな財産になると思います。多文化主義につきましてはアジア系コミュニティーと連携をはかり、新たな展望を広げることができたと思います」と振り返り、「南京大虐殺記念日の制定問題などコミュニティーが分断されるような動きが起こっている中、非常に心残りなこともございます」と付け加えた。

 新任務については「世界各地で紛争が次々と発生し、危機も解消されない状況が継続しています。そういった状況下では、国連はこれまでのやり方を変える必要性に迫られており、その任にあたることになります。大きな課題ですが精一杯とり組みます」と豊富を語った。

 ロバート・バンノさんが乾杯の音頭を取ったあとは、オープンブックマークス社の開本たかしさん作成の総領事のご活動をまとめたスライド写真を見ながらビュッフェの食事を楽しみ、歓談が続いた。

 

岡井朝子総領事、離任式

 8月10日に総領事公邸で開かれた離任式には英語を話す人を中心に経済、教育、文化、政府・自治体関係者ら約170人が出席した。

 岡井総領事は「経済面では日本企業とカナダ企業の間のファシリテーターとして、技術、エネルギー、観光、農業、貿易のほか、新しい分野を開拓できたと思います。CPTPP(環太平洋地域による経済連携協定)が批准されれば、カナダ連邦政府は日本市場のアクセスにより最も利益を受けます。社会、歴史、文化、政治、経済、科学技術などにわたり日本を紹介する25分のビデオを製作しましたので、ぜひご覧ください。2020年のオリンピック開催に向けた日本政府の取り組み、私が促進してきた内容がおわかりになると思います。大学関係ではブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)と明治150周年プロジェクトを進め、今後もUBCとビクトリア大学(UVIC)の連携を継続します。観光では伝統と革新が共存する今の魅力的な日本の紹介に努めてきました。各分野でご協力いただいた皆さまに感謝いたします」と英語でスピーチした。

 ジョシュア・モストウUBC教授が「岡井総領事は何でも先を読んで取り組む方ですから、国際的な危機を未然に防ぎ対応していくための適任者といえましょう」と代表で祝辞を述べた。

 BC州政府よりマイク・ファーンウォース公共安全・法務大臣が乾杯の音頭を取ったあと、出席者らは緑が美しいガーデンで歓談を楽しんだ。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

日本を紹介するビデオ『Japan Into the Future With Canada』 https://youtu.be/Ju7sO4QfcuEまたはYoutube でJapan Canada Futureと検索してください

 

総領事館提供の日本酒で乾杯

 

食事と歓談を楽しむ出席者のみなさん。スクリーンに映し出された思い出のビデオは岡井総領事に贈呈された

 

ビュッフェスタイルの食事

 

挨拶する岡井朝子総領事

 

出席者を前にスピーチをする岡井朝子総領事

 

公邸の庭園で行われた離任式

 

乾杯の音頭を取ったマイク・ファーンウォースBC州公共安全・法務大臣

 

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