2018年8月2日 第31号

7月22日、ブリティッシュ・コロンビア州リッチモンド市にあるスティーブストン仏教会で、最先端の医療現場で主流となりつつある『湿潤療法(モイスト・ウーンド・ヒーリング)』について、日本形成外科学会専門医の長谷川宏美先生を講師に招き、講演会が行われた。(メディアスポンサー:バンクーバー新報)

先生は、カナダに来る直前まで、『キズ治し』を専門にしていた形成外科医。そのプロが教える驚きの手法は、身体が持っている自己治癒力を最大限に引き出し、“消毒せず乾かさない”、“痛くなく”、“早くきれいに”治す方法。しかも、家庭にあるもので手当てできる。これまでのキズの手当て法をくつがえす話に100名の参加者が驚きを隠せない様子だった。

1時間半の講演で、ユーモアもまじえ、シリアスな内容もサラリと話し、聴衆を飽きさせない。その濃密な内容を限られた紙面で再現することは不可能なので、要約してご紹介したい。

 

 

熱心に聞き入る参加者たち

 

今回の講演会を主催した『日本語認知症サポート協会』は―

 認知症の人やその家族、認知症の予防やサポートに関心のある人への情報提供と交流を目的に2017年2月、バンクーバー地域に創設した非営利法人会。そして今年2月にリッチモンド支部を設立し、リッチモンド在住の杉浦留奈さんが加わった。今回の講演会は、昨年から活動を続けているガーリック康子さん、福島誉子さん、辻奈緒子さんを含め、この4人で企画、開催。主な活動としては、「オレンジカフェ・バンクーバー」を年に10回開催している。

 リッチモンド支部設立にあたり、10月5日(金)に、第一回目の「オレンジカフェ・リッチモンド」を開催。「遠距離介護の心得」をテーマにアメリカ・ワシントン州認定のソーシャルワーカーの角谷紀誉子さんが講演する。

・場所:JTB本社 8899 Odlin Cres., Richmond
・日時:10月5日(金)午後5時30分開場、午後6時〜午後8時
・申込先:info@japanesedementiasupport.com
・参加費:$15

 

まずは、基本。正常な皮膚の構造を

 皮膚は、3層構造になっている。一番外層の「表皮」は、バリア機能を果たす。基底層で細胞分裂した細胞が徐々に押し上げられ最外層で、垢として落ちる。このようにいつも入れ替わり新しくなることを「ターンオーバー」といい、20代で約1カ月、40代になると2カ月、60代になれば3カ月間ぐらいかかるが、ほとんどが入れ替わる。高齢になり、“最近、キズがなかなか治らない”というのは残念なことに、ほんとうのこと。

 中層の「真皮」は、線維芽細胞とコラーゲンの塊。皮膚の弾力性を保ち、毛穴、汗を出す汗腺、神経も含む。最下層が皮下組織で、脂肪の塊。この構造を頭に入れながらキズの治し方を学んでいただきたい。

 

キズの治り方

<浅いキズの場合>

 血管が破れて出血すると、血液のなかにある出血を止める作用をする血小板が働き止血され、体のなかからキズを治すための『浸出液』が出て、やがてキズ周囲と毛包(毛穴)の細胞が増殖し、改めてキズが表皮細胞で覆われる。浅い傷は、基本的に1週間〜10日間で治る。

 

<深いキズの場合>

 深いキズで毛包(毛穴)が残っていない場合は、最初に肉芽(にくげ)が増殖してキズを収縮させる。この上に表皮の細胞が増殖する仕組み。

 

キズの仕組みがわかったところで、次は治し方

  

この従来の方法にかわって、最先端の医療現場で主流となっているのが『湿潤療法』

家庭でできる『湿潤療法』の実際のやり方

 ケガをしたら、まず、石鹸と水道水(シャワー)で洗い清潔にする。その後、キズを乾かさないように処置をする。簡単な方法は、湿潤療法に使われる特別な絆創膏(市販では、Blister Bandadeハイドロコロイドが簡単に手に入る)を使用する方法。ワセリンやラップでも代用できるが、注意しながら使うことが必要。

 

*これまで行っていたキズを乾かすことと消毒は、「自分の治ろうとしている細胞」を殺す作業をしているようなもの。また、消毒薬の効果は、せいぜい3時間に過ぎない。

一日3、4回ワセリンをたっぷり塗りかえ、ラップまたはハイドロコロイドを交換。

 

病院に行ったほうがいい場合(緊急)

・ 出血が止まりにくい場合:まずは、ガーゼなどで傷口を直接強く押さえる「直 接圧迫止血」を15分程度行う。通常、血液中の血小板によって止まる。
・キズが汚れている場合:たとえば、土などがキズの中に入り込んでいて洗っ ても取れないと、キズが治っても入れ墨のようになってしまう。病院では、 麻酔をし、キズ口をブラシなどで洗い出す。
・深いキズの場合:神経や腱などの損傷の可能性がある。

病院に行ったほうがいい場合(準緊急)

・動物に噛まれた場合:一番危険なのは、人間に噛まれたとき。雑食の人間の 口の中には、無数の雑菌がある。犬猫の場合なら、猫のほうが危険。
・ 経過中、キズの周囲の部分が赤くなって熱をもった場合: 感染の可能性がある。湿潤療法をしていた場合は中止する。

 

キズが治った後のアフターケア

・キズが治ったばかりの皮膚は、まだ薄く安定していない。『炎症後色素沈着』の おそれがあるので、遮光をすることが大切だ。
・2、3カ月までにかたくなり、その後、全部で6カ月以上かけて成熟してやわらかく なじんでくる。
・場合によっては、テーピングをする。テーピングすることで遮光、安静にもなる。

(イラスト・写真提供:長谷川宏美先生)
(取材 笹川 守)

 

長谷川宏美先生(日本形成外科学会専門医)プロフィール
2000年に医学部卒業後、形成外科医局に入局。東京近郊の大学病院などで研鑽を積みながら勤務。特に、形成外科一般、さまざまな傷、熱傷、床ずれなどの創傷治療を得意とする。2015年より子供3人を連れ親子留学中。カナダ在住4年目。

 

講演中の長谷川先生

 

 

今週の主な紙面
8月16日号 第33号

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