2018年2月1日 第5号

2016年に『こども教室 With』を開校した石井利枝子先生と石井順市さん夫妻。石井先生が日本で講習会に参加し取得したミュージックステップというメソッドをベースに、幼児期の絶対音感教育と才能開発を目的にしたクラスだ。4歳からの漢字教育にも注目したい。

 

(右から)『こども教室 With』の石井利枝子先生、教室の運営をサポートする夫の石井順市さん、アシスタントとしてリトミックやキーボードを担当する娘のあみさん(19)

 

リトミックで蒔いた感性の種

 ピアノ教師、『親と子のリトミック幼児音楽教室』主宰、幼稚園クラス主任など、30年以上にわたり音楽を通して子供教育に携わってきた石井利枝子先生。リトミックとは音やリズムに合わせた身体表現を基本とし、幼児期に豊かな感性を引き出す情操教育である。

「うちのリトミック教室は1歳〜3歳までの2年のコースですが、私は幼児期の教育は何よりも大事だと思っていますので、リトミックで蒔いた感性の種をもっと伸ばしてあげられたらと考えていました」

 

みんなで『絶対音感』を

 そして出合ったのが、日本で『絶対音感を育む適時教育ミュージックステップ』(MS)という教育法だった。

 3歳から6歳までは感覚的な吸収に最も適した時期であり(適時期)、それは一生に一度しかない感覚脳への臨界のチャンス。幼児期に絶対音感を身につけている子供からは音楽的な能力だけでなく、高いIQ、言語獲得の能力、深い集中力、五感全体の感度のすばらしさなど、さまざまな能力が育まれていく様子がうかがえるという。

 6歳児のクラス(MS4レベル)にお邪魔すると、アイマスクをつけて目隠しした子供たちが、担当教師の出す音を聞いてピアニーで同じ音を出していた。12人中ピアノを習っている子は2人だというが、5本の指を使ってドレミファソまでの音の展開をこなし、短いフレーズを弾いている。コーデルという3つの和音が出るオカリナサイズの楽器も使用。メロディーに合わせて和音を出しているところを見ると、音を聞き分けていることがわかる。

 「次のMS5レベルからはアンサンブルが加わり、子供たちは人と合わせる楽しさを身につけていきますよ」と石井先生。

 

漢字を使った絵本で読み聞かせ

 ミュージックステップと同時に取り入れたのが故・石井勲博士が開発した『石井式漢字教育』である。「漢字はひらがなよりやさしい」という理念のもとに『漢字を教える』のではなく『漢字で教える』というもの。

 先生が『竜宮城』『乙姫様』など物語りの重要な単語を示すと全員が音読する。そのあと一緒に『浦島太郎』の漢字絵本を指でたどりながら、みるみるうちに一冊読み上げてしまった。この日は初めての読み聞かせから3週めだというが、信じられない光景だった。

 「子供はすごいです。頭はスポンジ。我々大人の常識を見事に覆し、どんどん吸収していきます。小学科に上がる時点で、withの生徒はある程度の漢字は読めるようになっているはずです」

 

保護者も一緒に毎日課題を

 withは、お子さんと保護者(たいていお母さん)、そして教室が一緒になって進んでいくもので、週1回のクラスのほか、子供たちは親と一緒に毎日課題をこなす。

 「毎週ステップカードというのをお渡しして、ご家庭でのお子さんの様子を書いてもらっています。絶対音感と言葉を使って脳を鍛え、感性を磨く訓練をし『聴く耳』を目指していますが、保護者の皆さまからは、人の話を聞くようになった、音が合う合わないということがわかるようになった、字に興味を持つようになった、ひとりで絵本を読もうとする、英語が聞き取れるようになった、などの反響があります。またお母さま方から、ミュージックステップを通して自分自身を顧みるようになったと言われるのが一番大きいところです」

 子供たちと友達のように話す石井先生の様子からは、幼児期の感性や才能をいろいろな角度から、もっと引き出し伸ばしてあげたいという思いが伝わってくる。

 

石井利枝子(いしい・りえこ)
日本では北海道、福岡、沖縄で13年ピアノ、ソルフェージュ、リトミック、作曲を指導。1995年カナダ移住後、ピアノを教える傍ら2002年より『親と子のリトミック幼児音楽教室』を開講。30年以上音楽を通して子供教育に携わっている。2016年『こども教室With』を開校。
こども教室with www.withmusic.org

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

 

ピアニーを使って先生と同じ音を出す絶対音感教育

 

6歳児が漢字絵本『浦島太郎』を一冊音読

 

クラスの始めに姿勢を正して先生の話を聞く4歳児たち。立腰教育とは、哲学者・教育者である森信三先生が提唱した腰骨を立てて姿勢を正すことの実践的教育法

 

ミュージックステップ、メソッドの一つである指差し練習

 

音やリズムに合わせた身体表現。幼児期に豊かな感性を引き出すリトミック

 

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