オンタリオの電力の半分以上は原発から

カナダの原子力発電所の立地点を調べると、全てが東部にある。地震活動が活発とされているブリティッシュ・コロンビア州には全くない。しかし、人口が集中する東部、特に首都オタワと、カナダ最大の都市トロントのあるオンタリオ州には現在、稼動中のものだけでも16基ある。オンタリオ州では60年代から、原子力発電が州のエネルギー供給の一部を担っていて、現在は電力の半分以上を頼っているなど、原子力への依存度が高い。

 

規模が大きいのはブルース原子力発電所だ。ヒューロン湖岸にあるブルースパワー社の同原子力発電所は、北米で最大、世界でも柏崎刈羽原子力発電所に次いで二位の出力を誇る。

 

カナダ各州ではクリーンエネルギーを促進していて、風力、太陽光、バイオエネルギーなどの、よりクリーンなエネルギーへの転換を推進している。オンタリオ州も同様で、シャープの子会社が関わる太陽光発電プロジェクトを誘致したりと、積極的だ。ただし、同州のクリーンなエネルギーの中には二酸化炭素の排出が少なく、地球温暖化を防ぐということで原子力発電も含まれている。

 

オンタリオ州
Ontario Power Generationのピッカリング(Pickering) AとB
8基 (CANDU炉)
うち2基は長期休止中。05年にオンタリオパワージェネレーションは、05年に補修は採算に合わないと判断していることから、廃炉が予想される。

Ontario Power Generationのダーリントン(Darlington)
4基 (CANDU炉)
新たに2基が18年までに稼動する予定。

Bruce Powerのブルース(Bruce) AとB
Aで4基(うち2基は休止((補修中)))
Bで4基。加えて13年までに1500 MWのCANDU炉を建設予定

Nuclear Power Demonstrator ロルフトン(Rolphton)
プロトタイプ1基 廃炉
Douglas Point ダグラスポイント(Tiverton, Ontario)
プロトタイプ1基 廃炉

 

ケベック州
Hydro-Québecのジェンティリー(Gentilly)
2基
うち一基は77年に閉鎖

 

ニューブランズウィック州
NB Powerのポイントルプロー(Point Lepreau)
1基

 

そのほか、トロント大学やアルバータ大学をはじめとする研究機関にも原子炉はある。また、ブルース原発を持つブルースパワーが、エドモントンの北東、アルバータ州カーディナルレイク地域に新しい原発を建設すべく動いている。

 

カナダ独自の設計の原子炉
カナダの原子炉は全てカナダ政府と民間企業の合弁企業AECLが設計したCANDU(Canadian Deuterium Uranium)炉だ。CANDUは減速材に重水を用いるもので、燃料として、カナダに豊富にある上、安価とされている天然ウランを使用することができる重水炉だ。一方、日本において商用で稼動している原子力発電所は、すべて軽水炉という。

 

トロントの近郊にあるため事故が心配
カナダにある7つの原子力発電所は全て、東部の比較的地震活動の少ない地域にある。ただし、これまでに被害を起こすような地震がなかったわけではない。『Natural Resources Canada, Eastern Canada』によると、10年間に平均でマグニチュード5を越える地震が3回起きているという。

福島原発の事故を受けて、カナダ原子力安全委員会は今年の3月、全ての原子力発電所の運営者に対して、安全計画の確認と、改善の可能性について報告書を提出するよう命じている。また、それに先立って、カナダにある全ての原子力発電所は、耐震基準を満たすよう、設計、建設、補修されていると発表している。

これまでにカナダで最も大きな事故を原子力発電所はピッカリング発電所だ。74年と83年に、燃料棒を収めている圧力管が破裂した。また52年には発電所ではなく、研究施設になるが、オンタリオ州のNRXで制御ミスにより原子炉が暴走して、燃料棒が溶融するという事態も起きている。

さらに、原発事故で世界の目が福島に集まっていた、今年3月14日に、Ontario Power Generationが、ピッカリング原発から 7万3000リットルの脱塩水がオンタリオ湖に流出したと報告している。

特にピッカリング原子力発電所はトロントから30キロ以内と、カナダ最大の都市のすぐそばにあることで脅威は大きい。

 

カナダの原発議論
カナダには活発に反原発活動を行う、グリーンピースやシエラクラブなどのグループがある。特にグリーンピースは、70年代に平和運動、反核運動を行う団体として、バンクーバーで生まれたものだ。

ただし、原発の是非についての議論が高まっていた今年5月に、CBCが行った調査では、「カナダは今後も引き続き原子力発電所を建設していくべきか」という質問に対して、YESと答えたのが64%(6368票)、NOが34.55%(3438票)だった。

 

電力内訳(Statistics Canadaより)

 

カナダの電力源の内訳 (TWh/年 2008年度)

順位はOECD加盟国中。再生可能エネルギーの利用が盛んだ。全体的に見ると、水力の依存が大きい。

 

7月に行われたリッチモンド国際フィルム&メディア芸術祭では、原発をテーマにした鎌仲ひとみ監督の『ミツバチの羽音と地球の回転』も上映された。この映画の音楽を担当した、現在、米国在住のShing02さんがカナダを訪れた。

Shing02さんが、日本の原発問題で指摘したのが、健全なパブリック・ディスカッションの欠如だ。あらゆるものには良い点、悪い点があって、白黒を簡単につけられるものはない。雇用、利権の問題もある。カナダなどでは先住民の問題も絡んでくるかもしれない。しかし、何物もタブー視することなく、自由に語ることが重要と訴えた。

 

(西川桂子)

 

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