2016年8月11日 第33号

バンクーバー市ダウンタウンのコンベンションセンターで、7月27日から30日の4日間、第17回世界ハンドベルシンポジウム大会が開催された。2年に1度開催されるこの大会は今回第17回目を迎え、世界各国から総勢700名が参加し、日本からは6グループ・99名の参加があった。

開会式、最終日の発表会に向けてのリハーサル、各グループの演奏会や様々なワークショップが開催され、盛り沢山の内容であった。ハンドベルというとクリスマスに教会で厳かに演奏されているイメージだが、現在ではポピュラー音楽から讃美歌まで様々なジャンルが演奏されている。元々、イギリスの教会の鐘の試作用として製作されたハンドベルだったが、アメリカに渡り、現在では「天使の音色」として世界中から愛されている。20以上もの鐘の音が息を合わせて演奏される様子は、緊張感の中に奏者同士の強い絆が感じられ、繊細でまさに心が洗われるようだった。

 

 

最終日 全体演奏本番前、総勢700名での演奏を控えた奏者

 

 日本からの参加者で大会参加最長記録を持つ『神戸YMCAベルクワイアー』は今回15回目の参加である。指揮の阿部望氏は、「長年の参加で大会のたびに旧友に会えることが何よりうれしい、ハンドベルを通じて世界がつながっていると大会のたびに実感する」と語った。

 チームメンバーは、今回の大会は演奏曲やワークショップなどでもカナダの原住民文化を取り入れるなど、カナダの特徴が色濃く表れていたため、普段の大会とは違った雰囲気だと語る。50周年となる神戸YMCAとシアトルYMCAの姉妹都市の交流によって、大会終了後にシアトルで開催されるコンサートの予定もあり、今回の滞在に胸を躍らせているようであった。ワークショップでは日本音楽をテーマにした公演の講師も務めた阿部氏。日本の民謡という親しみ深い曲をハンドベルを用いて海外に向け発信することの大切さを語る表情は、とても穏やかで親しみにあふれていた。

 

 素敵な衣装で参加した『白鵬大学ハンドベル部』代表の山田なつみさんは、今回2回目の参加となった。「海外の方との英語での交流や新しい出会いが楽しい。普段は日本で学校や施設での依頼演奏やコンサートの開催など様々な活動をしているが、日本でのハンドベル認知度はまだ低い。しかし演奏を聴いた周囲の友人からの反応がとても良いため、ハンドベルが日本でもっと広まればうれしい」と語った。ハンドベルとは思えないほどの重厚感のある音から繊細な響きまで、大学生の演奏とは信じがたいほどの圧巻な演奏に拍手が続いた。大会に13回目の参加となる部活動顧問の荒井弘高先生が、総勢700名の大演奏『春の海』で指揮を務めた。新井先生は「日本の曲を世界中の人と一緒に演奏する機会に恵まれてうれしい。今回、日本グループを代表して全体演奏で指揮を担当するにあたって、大会用に自身の編曲にさらにアレンジを加えた。点と点を線で結ぶ西洋音楽に比べ、タメや揺れのある日本の曲は難しく、大人数をまとめる指揮は大変である」と語った。リズム良く全体を取りまとめる先生の指揮は多くの喝采を浴び、日本の誇りや伝統、繊細さが感じられる素晴らしい演奏となった。聴衆が息をのむような音の流れは、一瞬、ここがカナダの地であることを忘れさせるほどの圧倒的な美しさで、会場は静寂に満ちた。

 

 『頌栄女子学院高等学校ハンドベル部』の部長を務める2年生の鍋島彩葉さんは、今回が初めての世界大会参加。「通常20人以内の規模で行われる演奏が700人の合奏となり、こんな機会は初めてで、とても新鮮だ。今大会ではリハーサルや出会いが非常に貴重なので、この経験を大切にしていきたい。初めての海外で、バンクーバーは食べ物がおいしく、他のチームの演奏も鑑賞することができ、大会期間中は非常に有意義な時間を過ごせた」と語った。制服姿に身を包んだ高校生チームは非常にかわいらしく、これまで世界大会に参加してきた先輩の思いを引き継いでいるという強い意思が感じられる。日本での活動も真摯に取り組んでいる様子で、若々しくフレッシュな彼女たちの将来に期待したい。

 

 『HRJチーム』は、人数が他より少ないながらも、非常に丁寧で心に響く演奏を披露した。代表の武者智子さんは、「近年アジアでハンドベルが広がっていく中、自分たちが昔から守ってきたベルの基本的な打ち方とベルの音の美しさをこれまでどおり大切に守っていきたい」と語った。普段は東京で活動している仲良しの個人グループだが、通常の15名が9名で演奏。少ない人数ながらも工夫を凝らし、音の響きの美しさを感じさせる非常に素晴らしい演奏であった。

 日本からは、このほかにも『ハンドベルサークル、メリー・リー』、『HRJチームスA&B』が参加した。

 あまりにも美しいハンドベル演奏に魅了されるが、その音色の影に隠れたチームの日々の努力や音へのこだわりなどを考えると、奏者に尊敬の念を感じずにはいられない。ワークショップで初心者ながらベルを握った時に感じた、他の奏者と心がつながる感覚、そして相手も同じように反応してくれた時のうれしさは、一度演奏してみないと感じることは難しいだろう。チームの思いやりが周囲に通じ、素晴らしい音色の輪が世界に通じているという絶対的な確信は今回の参加者の誰もが感じていることであろう。天使の音色の連鎖がもっと多くつながるよう願うばかりだ。

(取材 金谷 紗穂里)

 

『頌栄女子学院高等学校ハンドベル部』 最終日の演奏を前に最終リハーサルの様子

 

 

『HRJチーム』 演奏前の緊張の一瞬

 

 

『白鵬大学ハンドベル部』の演奏の様子。指揮者の荒井先生は全体演奏でも指揮を担当

 

 

『神戸YMCAベルクワイアー』リハーサル練習で。後列中央は指揮を担当した阿部氏

 

 

奏者の技術向上のため参加型のワークショップ

 

 

参加型のワークショップ。初心者にも分かりやすい、幼児教育におけるハンドベルの取り組みを説明中

 

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