BC州とアジアのビジネス・貿易、その展望と戦略

 

1月30日、バンクーバー、ダウンタウンのコースト・コールハーバー・ホテルで、日本・カナダ商工会議所主催の講演会が催された。ゲスト・スピーカーは、ブリティッシュ・コロンビア州国際貿易大臣兼アジア太平洋戦略および多文化主義担当大臣のテレッサ・ワット氏。 「BC州の経済発展には、日本をはじめとするアジアの国々とのビジネス・貿易が極めて重要」ワット大臣がこのように語ると、会場の240人はじっと聞き入った。

 

 

講演中のテレッサ・ワット大臣

  

■クラーク首相、日加商工会議所の役割に期待

 正午から始まった講演昼食会の前半、この日の司会を務めた日本航空バンクーバー支店空港所長で日加商工会議所理事のケーシー若林氏は、BC州首相クリスティー・クラーク氏からのメッセージを読み上げた。その中でクラーク首相は、

 「この講演昼食会は、BC州と日本との長年の強い絆を反映している。2013年に貿易使節団を率いて日本を訪問したが、その際、BC州と日本は文化面、商業面、教育面でのパートナーとして今後もさらなる発展が望めると確信した。そのためにも、日加商工会議所の役割はこれからも大切だ」と同会議所の働きに期待を寄せた。

 引き続き若林氏より、テレッサ・ワット大臣、在バンクーバー日本国総領事岡田誠司氏をはじめとする13人の来賓の紹介があった。

 その後、パシフィック・ウエスタン・ブルーイング社社長で日加商工会議所会長の小松和子氏から、講演会開始にあたっての挨拶と、同会議所が開設されて以来、最大数となったスポンサーやボランティアへの謝辞があった。

 

 

講演開始の挨拶・謝辞を述べる 日加商工会議所会長小松和子氏

 

 

■BC州ビジネス・貿易のゆるぎない進展のための戦略

 なごやかな雰囲気で進んだ昼食の後、この催しのタイトル・スポンサーである三井物産株式会社カナダ社長で日加商工会議所名誉副会長の小室徹夫氏がワット大臣を紹介。同大臣が登壇し、講演を始めた。

 

1.BC州の経済発展のために

 ワット大臣は冒頭、「現在、BC州にとって日本は第3位の輸出先国で、今後も重要な貿易相手国である。そのような意味でも、この講演でBC州政府が進めている日本をはじめとする環太平洋諸国とのビジネス・貿易について語れることは喜びである」と述べた。

 「BC州のビジネス・貿易のパートナーとして日本との歴史的、文化的な強いつながりは、まさにこの会場の出席者のように、BC州を生活と仕事の場として選んだ人々によって培われてきた。」ワット大臣自身、海外から来た一人であると。そして、自らを、BC州の国際貿易に関してアジア諸国に焦点をあて働きかける最初の州政府大臣であると説明した。

 同大臣と担当省の役割は、国際間でのさまざまな機会を捉えてBC州の経済を繁栄させること。その実現に向けて、高度で広範なサービス・ネットワークの利用、海外からのBC州への投資の援助およびビジネスを難しくしている厳しい規則の簡素化、州内企業の海外進出への支援、そして何よりも、BC州を魅力ある投資先として海外に宣伝し投資を誘致することだ。この戦略は、ひいては州内の雇用促進につながると同大臣は明言する。

 

 

2.貿易使節団派遣の意義

 2011年3月、クラーク首相就任。同年4月からこれまでに、州政府国際貿易省ではカナダ国内外に向けて400以上もの貿易使節団の派遣を行ってきた。その中には、アジア市場を狙った六つの重要な使節団も含まれている。そしてこれらの使節団を通して得られた合意や協定は、18億ドル以上の新ビジネスの創出につながっている。

 クラーク政府は当初より、貿易相手国として環太平洋諸国を最重点としてきた。以来、アジア諸国の中産階級を狙ってのビジネス・貿易の拡大と進展に力を注いでいる。その過程で、貿易使節団の派遣は極めて重要だ。

 使節団の役割は、BC州の競争力ある産業を海外に宣伝し、まずは交流を始めること。一方、州内の企業にとって使節団に加わることは、自社のサービスを海外へ直接かつ効率的に紹介する機会となる。また、首相や大臣らにとっては政府間での話し合いを通し、BC州のビジネス拡大を図るチャンスだ。

 

3.日本への使節団派遣

 昨年11月、ワット大臣は貿易使節団を率い、中国・日本・韓国をまわった。BC州の輸出先として、2位、3位、4位の国である。目的は、これら3国と既存の関係を一層強化するとともに、新しいビジネスを模索するためだ。  出発前の10月、在バンクーバー日本国総領事公邸で、岡田総領事、領事館スタッフ、日本の企業関連者とともに、日本視察にあたっての意見交換を行った。また、BC州のLNGについての情報もさらに充実させておいた。

 日本滞在中は、日本の大手企業経営陣や、日本政府の関連組織の代表者らと面談した。そこでは、天然資源、農産品、テクノロジー、教育、観光などを中心に、BC州と日本との貿易、投資、経済協力などが話し合われた。

 「関西国際空港、京都大学で進められている研究、新幹線など印象的だった。しかし、BC州にも多くの強みがある」とワット大臣。デジタル・メディア、インフォメーションならびにコミュニケーション・テクノロジー、生命科学などである。「これらの強みを使って日本とBC州が協力・推進していくべきだ」と思った。同時に、BC州が日本にとってLNGをはじめとする将来のエネルギー需要と天然資源の供給源になりうるとの宣伝も忘れなかった。

 

4.日本での市場拡大をめざすBC州の林産業

 ワット大臣は東京滞在中、『ジャパンホームショー』を見学した。日本で最大規模の住宅建材・部材・設備・サービスの展示会で、国内のみならず海外からの出展もある。

 BCウッド(BC Wood)は、90年代始めからカナダ連邦政府とBC州政府からの援助を得て、この展示会でカナダ館を組織し参加している。今では、州内の関連産業にとってここでの出展は、日本での市場拡大のためには欠かせないものとなっている。

 遡って2011年11月、同年3月の東日本大震災の被害に対しカナダ連邦政府とBC州政府は『カナダ―東北プロジェクト』を発表。それぞれ200万ドルを拠出した。それらの資金を基に、BC州の木材を使って、東北各県で学校・図書館・高齢者向け施設の建設が進められている。これは単にBC州の高品質の木材の使用ということばかりではなく、カナダ林産業と日本との間の長年にわたる連携の証とも言える。

 先ごろ日本政府は、東京に9000㎡、5階建ての高齢者向け養護施設の建設を発表した。木造建築としては日本国内で最大のものになるという。建設は、UBCで開発を進めているFPイノベーションが行うことになっている。この参画には、BC州の林産業委員会とBCウッド日本事務所による働きかけがあった。

 ワット大臣は、「これからもBC州が日本にとって軟材製品の最高の供給元であり続けることを願っている」と語った。

 

5.BC州への投資の促進

 海外からの投資は、州の経済発展にとって大切な柱となる。そのため、BC州への投資の有利性を、日本をはじめとするアジアの主要国に向けて、使節の派遣やビジネス会議、トレードショーなど、さまざまな方法で紹介している。

 その成果の例として、日系ゲーム開発会社のBC州内での設立が挙げられる。バーナビー市のグミカナダと、バンクーバー市のバンダイナムコスタジオだ。両社は、北米を視野に入れた製品の開発と展開を使命としている。

 ワット大臣は、「これら日系企業の存在は、州が重要産業としているデジタル・メディアへの多大な貢献。州が世界に誇れる産業だ」と述べた。

 

 

テーブルに着席し歓談する出席者

 

 

6.小企業も大切

 小企業の安定した経営も、州経済の繁栄と維持にとってはなくてはならないものである。BC州内のビジネスは、実に98パーセントが小規模経営だからだ。そこで州政府は、煩雑な「お役所主義」を見直し、小企業の経営者にとって時間と資金を効率的に生かせるよう努力している。

 その例として、モバイルビジネス・ライセンスプログラム(Mobile Business License Program)がある。このライセンスを取得すれば、モバイルビジネスの経営者は州内であれば営業許可が取りやすくなる。

 BC州政府が目指すのは、小企業にとってカナダ国内で最も経営しやすい環境を作っていくことだ。  

 

7.共に栄えていくために

 カナダ全体の貿易で、BC州は重要な位置を占めている。特に、中国、日本、韓国などアジアの国々との貿易の伸びは目覚しい。

 「2015年は、これらの国々へ向けてBC州との貿易、投資への興味を引き続き強化・促進していく。日系コミュニティからの協力も欠かせない。協働していこう」とワット大臣は会場に呼びかけ講演を締めくくった。

 日加商工会議所の小松会長は講演昼食会を無事に終え、次のような感想を述べた。

「”アジア太平洋のビジネスはBC州から出発“という標語を掲げてきたクラーク首相の心意気を受け抜擢されたワット大臣は、それを実現するための政策を着々と実行されています。

 日加商工会議所の設立から11年となる今年、日本の大手企業、BC州政府、カナダ企業、またビジネスに密接に関連する政府機関のスポンサーの援助を得て、また当会議所の理事の奉仕もあり、この講演会を成功裡に収められたことを感謝しています」。

 

テレッサ・ワット大臣プロフィール

1989年、BC州に移住。メインストリーム・ブロードキャスティング社(中国語ラジオ放送CHMB AM1320)の社長兼CEOを務めた。BC州で初めての、広東語・北京語・パンジャブ語のテレビニュース番組の立ち上げにも尽力。

2013年、社会貢献が認められエリザベス2世在位60周年記念メダルを受賞。同年5月、BC州議会議員に当選。クリスティー・クラーク州首相からも絶大な信頼を得て、現在、国際貿易兼アジア太平洋戦略および多文化主義担当大臣として精力的に活動している。

    

(取材 高橋百合)

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