2019年3月14日 第11号

3月8日ダウンタウンのクライスト・チャーチ・カテドラルでアーリー・ミュージック・バンクーバー(EMV)主催によるドイツ宗教音楽の演奏会『メンブラ・イェーズ・ノストリ(我らがイエスの御体)』が開かれた(メディアスポンサー:バンクーバー新報)。

この演奏会出演のためにバンクーバーを訪れた慶應義塾大学アカデミー声楽アンサンブル『コレギウム・ムジクム』(音楽監督:佐藤望)。当地の音楽家との合同練習やホームステイを通して、音楽と文化交流を果たした。

 

ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)音楽学部のバロック・オーケストラやプロの歌手たち、アーリー・ミュージック・バンクーバーのメンバーと共演した慶應義塾大学アカデミー声楽アンサンブル『コレギウム・ムジクム』(撮影:Jan Gates)

 

聖歌隊として礼拝に出席

 バンクーバー到着の翌日、クライスト・チャーチ・カテドラルの日曜礼拝で聖歌隊を務めた慶大生たち。賛美歌『我がもとにとどまれ』では“ハレルヤ、ハレルヤ”とハーモニーを奏でて、場内を盛り上げた。

 後奏曲では佐藤望教授が編曲した『ふるさと』を合唱。この曲は東日本大震災のあと、『コレギウム・ムジクム』の有志が岩手県大槌町を訪れたときにリクエストされて歌ったもの。このときのメンバーのひとりで博士課程(政治学専攻)の田中雄一朗さんが「被災者の皆さんの気持ちが伝わってきて、音楽を通した人と人との結びつきを感じました」と当時の様子を語った。

 

3年越しのプロジェクト

 慶應義塾大学同窓会『バンクーバー三田会』(会長:松本明子さん)主催の歓迎会には同会会員、学生25人と佐藤教授、ならびにバンクーバー側の出演者や音楽関係者、ホストファミリーなど約70人が出席。この席で佐藤教授が「ヨーロッパでは、なぜ日本人がバッハを弾くのかと聞かれましたが、カナダではそんなことは聞かれませんでした。この寛容さを学生たちに見せてあげたいと思い、音楽と文化交流を企画しました」と述べた。またブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)のバロック・オーケストラ・メンターシップ・プログラム (BOMP)を指導する17世紀ドイツ音楽研究者のアレクサンダー・フィッシャーさんも、佐藤教授と3年前にドイツのニュルンベルクでランチをしているときに、この提案があったと経緯を語った。

 

ホームステイも経験

 男性合唱団『コール・リオーネ』の団員で、日系3世のバリー・ホンダさんは3人の女子学生を受け入れた。その中のひとりがたまたま同じ苗字だったことから「私は日本語を話しませんが、結びつきを感じます」と笑った。妻のバレリーさんとともにサイプレス・マウンテンやつり橋などに3人を案内したという。

 EMV主催の演奏会でホームステイの募集を知ったメアリー・ダウンさんは、浅古晃祐(あさここうすけ)さんをホストした。一生懸命英語で会話してくれた浅古さんとランチに出かけて、まるで息子ができた気分だと話してくれた。

 

珍しい古楽器やソロと共演

 演奏会当日はEMVファンに加え、たくさんの日本人が足を運び、約400人が会場を埋め尽くした。

 ドイツの受難音楽のなかでも不朽の名作といわれるブクステフーデの受難カンタータ『メンブラ・イェーズ・ノストリ(我らがイエスの御体)』。開演前のプレトークで、一部日本語での解説を入れた佐藤教授。日本語で配られた対訳は、佐藤教授がブクステフーデの時代に近い17世紀の文語体の日本語を使って翻訳したと説明した。このほかアンドレアス・ハンマーシュミット、ハインリッヒ・シュッツ作17世紀の声楽コンチェルトが演目に加わった。

 古楽器の演奏はUBCのBOMPにいる現役生徒や卒業生たち。羊の腸から作ったガット弦を用いた管楽器の柔らかな音色に、温かに奏でるオルガン、銀の鈴のような音色のハープシコード。トロンボーンの前身の楽器サクバットが珍しい。

 

日加の学生たちが描いた17世紀の音楽

 慶大生たちは滞在中にパシフィック・バロック・オーケストラ (PBO) の指揮者アレクサンダー・ヴァイマンさんからUBCの学生と一緒に指導を受け、演奏会では指揮者が送るサインをしっかりと受け止め、プロの歌手のソロに合わせてのびやかに歌った。

 「バロック音楽の醍醐味は、楽譜に明記されなくても、言葉と音のジェスチャーに内在するニュアンスを見出して表現していくことです。ヴァイマン氏の情熱的な音楽作りに感化され、日に日に学生の声が変わっていくのを見るのはすばらしい体験でした」と終演後に語った佐藤教授。日本とカナダの学生たちが合同で描いた17世紀の音楽が教会堂に響き、大きな拍手とともに演奏会は成功裏に終わった。

 なお、この演奏会は元EMV理事で、日加の文化交流とこの企画を支援した故モーリス・コピソン氏(2月14日に死去)に捧げられた。

(取材 ルイーズ阿久沢)

 

慶應義塾大学アカデミー声楽アンサンブル『コレギウム・ムジクム』と音楽監督の佐藤望教授。クライスト・チャーチ・カテドラルの日曜礼拝で聖歌隊を務めた(写真提供:松本明子さん)

 

(左から)バンクーバー三田会会長の松本明子さん、佐藤望慶應義塾大学教授、この演奏会のスポンサーで、慶大からUBCへの最初の交換留学生であったコピソン珠子さん。佐藤教授は2016年3月から1年間、UBCの訪問教授として研究活動を行った

 

歓迎会で佐藤望教授が編曲した『ふるさと』を合唱

 

(左から)バリー・ホンダさん、本田瑞季さん、荒木理紗さん、中山真季さん、バリーさんの妻のバレリー・ウィークスさん。3人の学生は「みぞれが降った日もあって寒かったけど、楽しかった」と感想を述べた

 

メアリー・ダウンさんと浅古晃祐さん

 

演奏会前のプレトークにて(左から)ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)のバロック・オーケストラ・メンターシップ・プログラム (BOMP)を指導する17世紀ドイツ音楽研究者のアレクサンダー・フィッシャーさん、EMV事務局長・音楽監督マシュー・ホワイトさん、パシフィック・バロック・オーケストラ (PBO) の指揮者アレクサンダー・ヴァイマンさん、佐藤望教授(撮影:Jan Gates)

 

約400人が会場を埋め尽くした珍しい古楽器と声楽アンサンブルの演奏会。右側がトロンボーンの前身の楽器サクバット(撮影:Jan Gates)

 

指揮者が送るサインをしっかりと受け止め、プロの歌手のソロに合わせてのびやかに歌った『コレギウム・ムジクム』のメンバー(撮影:Jan Gates)

 

 

 

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