「アクアマリンには去年7月の開館10周年で訪れたばかりだったんです」。アクアマリンふくしまとは2000年の開館当初から親交があるという。「館長の阿部義孝さんが長年の友人で、彼が定年退職して故郷福島に水族館を作るということで、開館当初から付き合いがあるんです」。

今回、地震の一報を聞き、すぐに連絡をした。同館の従業員などは全員無事だったこと、水族館の建物自体はそれほど大きな被害を受けていないことが分かったが、魚や動物はほとんどが死亡したことも知らされた。


「美しい曲線を描いたガラス張りの見事な建物で、かなり頑丈にできていると聞いていました。実際、建物の2階中腹あたりまで襲ってきた津波にも、ガラスが割れたり、建物が壊れたりしなかったと聞いています。しかし、地震や津波の影響で、電気系統や給水ポンプなどが壊れ、そのため酸素を供給できずに多くの生き物が死んだようです」と説明してくれた。


日本の報道によれば、同館で飼育していた約750種計約20万点の生き物のうち9割以上が犠牲になったという。「そんな中でも、従業員はアザラシやラッコ、アシカ、鳥など少しでも多くの動物たちが生き残れるように必死で他の水族館への移動作業を進めたと聞いています」とナイチンゲール博士。「ただ、彼らも被災しているわけですから、彼らに少しでも支援をと、我々も入場料から1ドルを寄付するという方法で、日本円にして約160万円が集まりました」。


バンクーバー水族館は3月18日から25日までの期間で、入場者一人につき入場料から1ドルを義援金に充てた。集まった金額は18,295ドル。これらは、アクアマリンのスタッフが復興するための支援金になる。「政府や建物再建のためではなく、スタッフの復興を手助けする目的で直接彼らの手に送ります」。


従業員も被災している中での水族館の復興作業である。少しでもその従業員たちの手助けになればとの思いが強い。


「10年前、福島に水族館が建てられた時、あの土地に水族館が必要と思ったのと同じように、今回もまた必要とされ、必ず再建する時が来ると思います」と博士。福島原子力発電所の事故のこともあり、「いつになるのかは想像できませんが、必ず再建するでしょう。それまで私たちにできることは、少しの援助と願うことだけです」と語った。


日本には世界中のどこよりも多く水族館があるという。それぞれに個性があり、世界中から観光客を呼び寄せるものもあれば、バンクーバー水族館のように海洋生物の学習をコンセプトに地元に根差したものもある。アクアマリンふくしまは地元密着型で、来館者の多くが地元の人であり、子供たちだ。


アクアマリンふくしまに、また子供たちの元気な声が響くよう、今夏の再開を目指して、現在スタッフの懸命な復興作業が続いているという。
バンクーバーからできることは「少しの援助と一日でも早い復興を願うこと、そして励ましの言葉をかけること」ぐらいだ。バンクーバー水族館では、引き続き義援金の募集を続けている。詳しくは、同館ホームページに掲載されている。

 

アクアマリンふくしまの復興の様子は、スタッフのブログ「アクアマリンふくしま復興ブログ」で見ることができる。
http://blogs.yahoo.co.jp/fukushimaaqua


 

バンクーバー水族館には発見がいっぱい

バンクーバー水族館には、発見がいっぱい詰まっている。つい最近まではベルーガ(白イルカ)の赤ちゃんの話題で盛り上がっていたが、今ホットなのはトロピカルコーナー。5月上旬まで開催されていたアマゾン体験イベントは終了したが、ここに新しい仲間が増えそうなのである。
このコーナーで見られていたゲルディモンキーが繁殖期に入っているため、トロピカルコーナーの一角が閉鎖されているが、近い将来水族館に新しい仲間が期待できそうだ。


今は、ナマケモノやら、色鮮やかな鳥たちが、南国を思わせるジトッとした暑さの中で出迎えてくれる。バンクーバーでは絶対味わえない異国体験ができるコーナーだ。
もちろん、ベルーガたちや、手をつなぐしぐさに一躍有名になったラッコたち、イルカのショーなど、これまでと変わらない動物たちの元気な姿も見ることができる。


バンクーバー水族館の魅力は、何と言っても生き物たちの生態を知ることのできる教育プログラムが豊富なこと。
イルカのショーも、単なる見世物ではなく、彼らのヒレの模様が一頭ずつ違っていて、それにより個々を識別できること、また、この水族館は動物たちのリハビリセンターも兼ねているため、世界中から傷ついた動物が集まり、その中には日本から来たイルカもいることなどが紹介される。
楽しいだけではない、動物たちを学べるバンクーバー水族館は、この夏ぜひ訪れたいホットスポットだ。


 

 

Vancouver Aquarium
開館:9:30am~5:00pm(入場締め切り4:45pm)※現在は冬季スケジュールで開館中
休館日:年中無休
入場料やイベント情報などは、ホームページを参照 www.visitvanaqua.org

*先月、バンクーバー水族館のクリント・ライト氏がアクアマリンふくしまを訪問した様子が、www.visitvanaqua.org/news/aqua-marine-fukushima-aquariumに掲載されている。

(取材 三島直美)

読者の皆様へ

これまでバンクーバー新報をご愛読いただき、誠にありがとうございました。新聞発行は2020年4月をもちまして終了致しました。